第4話:投資の儲けと早期退職

 2000年、バブル崩壊の兆しが見え始め、金融商品の売れ行きに、急ブレーキ

がかかりだした。上得意先に無理を承知で、お願いしても、それどころじゃない、

融資先の焦げ付きに気をつけろと、指令が出て、金融商品の販売よりも、融資先

の事業のチェックや、場合によっては、融資の早期返済をお願いして回った。


 以前、お得意さんは、金融商品で儲けさせてやったので恩義には感じていたが、

この不景気を乗り切るのに精一杯という感じが、ひしひしと伝わってくる。

 また、お客の減った商店に行き、融資の早期返済を頼むときには、どうしても

良心の呵責を感じてしまい、強く言えず、業績を上げられなくなってしまった。


 これを見ていた、支店長が、みんなの前で、木下課長、どうしたんですか、

この所、顔色も悪いが、業績も悪い、このままでは、千葉支店の業績不信で

東京支店会議でつるし上げを食うと、いらついて、当たり出すようになった。


 2000年6月に、営業会議で、再び、強いめまいで、倒れてしまった。

 この時、付き添いに来た、女房の和美さんに、もうこの仕事やめようかと

思ってると打ち明けた。彼女も、最近のあなたの様子を見て、私もその方が

良いと思っていたと言い、お金は十分に出来たので、そうしましょうと

言うことになり、実家の両親に相談すると、自分たちで決める事にどうこう

言うつもりはない。身体が第一だから、その方が良いかも知れないねと

言ってくれた。


 1978年に父に借りた300万円を1999年12月に6百万円にして

、返却し、残金が5.65億円となった。その他、銀行時代に貯めたお金を

合わせると3億円ずつ、合計6億円を越えたので、和美さんと相談して

2000年の12月に木下信夫と和美41歳で銀行を退職することにした。


その後、半年、自宅療養して病院の先生に教わった。座禅をして、心を落ち

着ける。訓練をした。仕事を辞めると、不思議に活力が戻り、長男の栄一は

、父と同じ稲毛高校を目指して勉強していた。2001年4月に稲毛高校に

合格して、五井駅まで自転車で行き、そこから電車通学した。


 長女は、2001年、近所の国分寺台中学から稲毛高校を目指して勉強して

いるようで、彼女は将来、英語を勉強したいと津田塾か上智大を目指していた。

投資に関しては、これだけの金額になったので株ではなく、もっと確実な、

ファンドか、高格付債券か、高金利通貨の定期預金などを考えていた。

女房の和美さんは、信夫が元気になってくれれば良いと言い、好きな様に

使って下さいと言った。


 実家の建て替えについては、両親が、お前が出してくれるなら構わないと

言った。そこでIFホームに電話して、実家に来てもらうと、敷地が広いから

、以前の家に住んでいてもらっても問題ありませんと言い、納屋と駐車場を

解体して、整地すれば、5LDKの家と、両親用に2階建ての3LDKを

作れると言った。建物代が7千万円で、現在住んでいる家の解体と整地費用

で1千万円、総合計8千万円で引き受けるという話になった。みんなに、

木下信夫が、新しい母屋は5LDKの大きな家にすると宣言した。早速、

3日後から、建設に取りかかってもらい、家が建つまで、90日、

解体をいれても100日程度だと言った。


 その翌週、実家の改築の話を聞いて、弟の木下次男と妹の木下春子が訪ねて

きた。大きい家だねと、言い、中を見て回ると5LDKかよ、これなら大勢で

泊まりに来れるなと笑った。2人とも、東京と横浜の小さなマンションに

住んでいるせいか、余計に大きく見えるようだ。

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