2666話 訪問

持ち主の名前はショウザというらしい。何やら商売をしているらしいが……ここかな。おー、大きい建物じゃん。何屋なんだろ?

うーん、さすがに閉まってるよなぁ。もう日が暮れてるんだから。出直すのは面倒だなぁ。というか今日会えなかったらもう面倒になって放置しそう。一応やるだけやってみるかな。


扉を強めにノックしてもしもし。


「こんばんはー。ショウザさんいませんかー?」


反応なし。もう一回。


「こんばんはー。どなたかいませんかー!」


「もう閉店だよ! 明日出直してきな!」


いるんじゃん。


「ショウザさんいるー?」


「閉店だって! 明日にしろって!」


「いいの? 明日になったらもうこれ手に入らないよ?」


やはり宝貨をちらり。まずは見るだけ見てみなよ?


「ふん? 贋金は一族郎党まとめて火炙りだぞ? 見なかったことにしてやるから帰れ」


あらま。そう来たか。ちなみにこれは本物の宝貨。私が作ったミスリルコインではない。だって相手は商売人なんだからさ。


「いいのか? ほれ、よぉーく見てみろ。これって贋金か?」


扉の前にかざしてみる。よぉく見てみな?


「なっ!? ……何の用だ……」


「大した用じゃないさ。さっき火事があったよな? あれってショウザさんの建物なんだろ? その件で忠告というか質問って感じだな。」


「ま、待っておれ!」


おや、予想以上に効果があったのかな?




「入れ!」


扉が開いた。あらら、声の感じからてっきり中堅のお局様かと思ったら。まだ 成人もしてないお子様だったとはね。目利きもすごいのに。やるねぇ。


「ショウザ様に何用か?」


「さっき言ったと思うけど。面倒な話になりそうだから直接言うよ。それとも君はショウザさんの全権代理かな?」


「くっ……違うが……」


むしろびっくりだよ。その歳で全権代理の意味や重さをきちんと理解してるだなんてさ。十歳ぐらいだよな?


「じゃあ呼んでもらえるかな? 無理なら無理でいいけどね。」


そしたら帰るだけだし。


「ま、待っておれ!」


おおー、奥へ走っていったね。

それよりここは何屋なんだ? 室内がこざっぱりしてるせいかよく分からんな。どうせ真っ当な商売じゃないんだろ。建物をボーイェが使ってるぐらいだし。


「こ、こちらへどうぞ」


お子様が戻ってきた。さあ、どこへ案内してくれるのかな?


応接室かと思えばえらく狭いな。四畳半もないんじゃない?


「こちらでお待ちください」


椅子もテーブルもないのに? 窓もないし。灯りはろうそくかよ……まあいい。待てと言うなら五分は待とう。




軽く錬魔循環しながら待ってたんだが、十分は経ったんじゃない? やれやれ、会う気がないならそう言えってんだ。かーえろ。

ん? 扉が開かない? ここの奴は何考えてんだ?

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