2663話 誘い水

裏切り者ってのは拷問されて苦しんだあげく、どうせ殺されるのが定番なんだからさ。苦しまないように死なせてやるのも情けだろう。


「どうする? 別に放置して帰ってもいいが。」


「……まだ死ぬわけにはいかん……お前という脅威を伝えるまでは……」


なんとまあ……


「ちなみに話は聞いてもらえるのか? さっきの感じだと誰も耳を貸してくれないだろ。」


「……それでも、言い続けるだけだ……お前は危険すぎる……」


「お前って死にたがりなんだな。よく今まで生きてこれたな。」


「……ボーイェになった時から命など捨『風斬』てっ……きさま……」


死にたがってるみたいだから死なせてやった。助けてやりたかったけどね。本人にその気がないんじゃ仕方ない。

でも、裏切り者と呼ばれても最後まで自分を貫きやがった。敵ながら天晴れといったところか。


「じゃあな。」


奥に進もう。連行される途中だったみたいだし、この奥が本命だろ。

おっと、うっかりしてた。


『風斬』


全員殺しておこう。死体は放置でいいだろ。収納するのも後で捨てるのも面倒だ。なんかもうどうでもいいって気分になってきたなぁ。とことん行ってみるか。さっさと帰るつもりだったんだけどなぁ……

魔力ポーション飲も……ふぅ、まずい……


さて、ハシゴを発見したぞ。ここから登るわけね。どこに出るのやら。ちっ、天井が開かない。また鍵かよ。


『水鋸』


「誰だ!」

「何事だ!?」

「下からだ!」


声が聞こえる。五、六人いそうだな。さっきの奴らも三人いたし、こいつらはボーイェとは別物なんだろうか? 同僚めっちゃいるじゃん。


「よう。お邪魔するぜ。ところでここはどこだい?」


見た感じ民家って感じ? でも住人は明らかに民間人じゃないよね。私が登る前にもう攻撃してきたし。もちろん効いてないけどさ。


「な、何者だ……」


「うーん、十等吟遊詩人かな。お前らはボーイェには見えないな。下っ端か?」


「吟遊詩人ごときが大口叩いてんじゃねえ!」

「誰が下っ端だあ!?」

「もう殺そうぜ!? どうせ大した情報持ってやがんねえって!」


こいつら下働きって感じかな? その割に態度がでかいな。ボーイェの威を借る何とやらってか。頭も悪そうだし。


「ここの地下からこの建物に辿り着いた俺がただの吟遊詩人に見えるのか?」


「何い!? てめえどこのモンだあ!?」

「はっ!? まさか他領のボーイェか!」

「だったらたっぷり歌ってもらわねえとなあ? 吟遊詩人だけによお?」


何こいつ上手いこと言ってんだ……


「お前らはボーイェ、なわけないよな。上のモンを呼んできな。質問に答えてやるからさ。」


「なめんなぁ、ぁがぶっ!」

「質問すんのはこっちだぁぴょっ!?」

「やっちまっぼえっれげろろぼ……」


襲いかかってきたから撃退した。二人は殴って一人は蹴った。一人だけダメージが段違いだろうね。可哀想に。


「ほれ、さっさと上のモンを呼んでこい。裏切り者のボーイェは俺が始末したって付け加えてな。」


「くっ……」

「ぜってえ……」


さて、特に何も考えてないわけだが。上の者は出てくるかな?

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