2662話 カースのサービス

地下は意外と広く、下水道のように臭くてたまらないということもなかった。これなら縛られた人間を連れてても歩きやすいよな。意外に明るいし。


さて、あの野郎はまだ無事なのかねぇ。どうでもいいけどさ。

地下道は一本道。どことなくヒイズルを思い出すね。ジュダを仕留めたのも天都イカルガの地下をさ。


この手の一本道って罠がわらわらありそうなんだけど、全然ないなぁ。おっ、扉だ。罠はここからか? 構わず開け、ちっ、鍵がかかってやがる。


『消音』

『水鋸』


鍵の部分だけ斬った。すんなりと開く。

おや、今度は暗いじゃないか。燃料代か何かをケチってるのか?


『暗視』


見た感じ特に変化はない。道幅も罠の有無も。

かと思ったら……何だこれ? くくり罠か? 頑丈なロープが足首を締め付けて、私を宙吊りにしやがった。罠があるのかよ……全然見えなかったぞ……


「ピュイピュイ」


さすがのコーちゃんもこんな原始的な罠はよく分からないのね。魔力が通っているわけじゃないもんなぁ。


『風斬』


足首を縛られたなら、足首から魔法を撃てばいいだけなんだよね。ほら斬れた。


『燎原の火』


他にも見えない罠があったら嫌だからね。もう全部焼いてしまおう。一つでも罠にかかった以上はもうバレてるだろうしさ。

地下のような閉塞空間で火の魔法を使うなんてどう見ても正気じゃないと思われるな。仲間を捕らえられて激怒してるように見えるだろ? では進もう。


また扉かよ。やはり鍵がかかっている。


『風斬』


扉の方を壊した。うおっ!? いてて。少し吹っ飛ばされてしまったじゃないか。結構大きな爆発だったな。扉を開けたら爆発する仕掛けか……いや違う。バックドラフトってやつかな? こっちの通路は火の海だったもんなぁ。てことはあっち側の方が被害は大きいんだろうなぁ。行こう。


あらまぁ。二人ほど黒焦げになってるじゃん。このどっちかがあいつだったりしないよな? とてもじゃないが判別なんかできないぞ。まあいいや、気にせず行こう。火も消えたし。


また扉かよ。地下だからって好き放題やってんなぁ……おっ、鍵はかかってないじゃん。

どわっ、一斉に刃物が飛んできた。危ないなぁもう。


「お前らボーイェか? よくも俺の仲間を拉致してくれたな。」


ふふふ、縛られて転がされてるあいつを発見。だから大嘘こいてやった。


「ち、ちがう……オレは裏切ってなど……」


くくく、それを誰が信じてくれるだろうねぇ?


「キサマ、やはりか」

「無傷で帰された理由はそれか」

「このような曲者を引き入れたのが何よりの証拠。この裏切り者め」


「ち、違う……オレはただ、こいつの危険さを、報告したく……」


それにしてもこいつら、私を目の前にしてお喋りかよ。余裕こいてんのか? たった今数十本のナイフを防いだばかりだってのに。


『風球』


とりあえず全員吹っ飛べ。

で、手近な奴から……


『麻痺』

『麻痺』

『麻痺』

『消音』


よしオッケー。


「よう。さっきぶりだな。商都から出るんじゃなかったのか?」


「……商王様を裏切る気はないと……言ったはずだ……」


「じゃあこのまま放っておいていいのか? 助けに来たつもりなんだけどな。」


半分は本当だぜ?


「……構わん……捨ておけ……」


マジかよこいつ……今から拷問くらって殺されるのが目に見えてるってのに。しかも私が助けに来たから完全に裏切り者と思われてるのに。すごいな。すごいからサービスしてやろう。


「なあお前さ、今から拷問されると思うんだけど、苦しまないようにとどめ刺してやろうか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る