2537話 ギヤ・バシロの逞しいホール係
ちょうど昼ってとこかな。腹はいっぱいだし酒は入ってるし、もうあんまり歩く気分じゃなくなってきたなぁ。むしろ眠い。もう宿行っちゃおっかな?
「シュガーバ、宿を探してこい……と言いたいところだけどお前歩くのも危なくないか?」
これぞまさしく千鳥足じゃないだろうか。ふらふらじゃん。さっきはよく私達の後ろで直立不動できたもんだな。
「けけっ! そんなことねえぜえ! 宿かあ!? まーた高っけえ宿に泊まるんだろお!? 真っ昼間からお楽しみかあ!? 探してきてやってもいいけどよお? あの酒場はよお、二階も泊まれるんだとよお? 内装はしょぼいみてえだけど広くてキレーなんだとよお?」
ちゃっかり情報収集はしてるわけね。やるじゃん。
「で、本音は? 実はお前がそこに泊まりたいんだろ?」
「おうよ! そしたらまたあそこで飲めるじゃねーか! 食いもんも酒も旨え! ありゃ大当たりの酒場だぜ!?」
あらまぁ。シュガーバがここまで虜になるとは。それならまあ別にいいか。わざわざ宿を探す手間も省けるし、ここからそう遠くもないし。
「アレクはどう? あの店でいい?」
「ええ、いいわよ。実は私ももう少し飲みたいと思ってたの。」
え……もしかして今から? まだ飲むの? アレクにしては珍しい……
「ピュイピュイ」
えっ、コーちゃんも!? 途中で邪魔されたから飲み足りないの!? あれだけ飲んでたのに……まあ、コーちゃんの酒量はほぼ無限だけどさぁ……
「まさかシュガーバ、お前も今から飲むつもりか?」
「げあはははあ! あったりまえだろおがよお! こおんな気分がいい日に飲まねえでどうするってんだあ! 魔王も飲むよなあ!? まさかオレやお嬢様が飲んでんのに寝たりしねえよなあ!? おお?」
シュガーバって酔うとこんなにタチ悪いんだなぁ……肉体的に絡んでこないだけマシかな?
よし。先ほどの酒場に着いた。店内は……へぇ、三割は埋まってんだ。もしかしてファンヤーサってそこまで権力があるわけでもないのか?
「おおう! 帰ってきたぜえ! さっきの席あ空いてっかあ!?」
「あっ、ええええええ!? か、帰ってこれたの!?
ホールの姉ちゃんがえらく驚いてるじゃないか。
「そんぐれえ楽勝に決まってんだろお!? オレあ
「えっ!? キャフィティン様だったんですか!? すっごぉーーい! 惚れ惚れしちゃいます! どこのキャフィティン様なんですか!?」
「おお、別に大したこたぁねえぜえ? ただのボーイェのキャフィティンだからよお? どこの領かは言えねえなあ?」
「
おやまぁ。姉ちゃんの態度が一気に冷たくなったじゃないの。憲兵隊も嫌われてるって聞いたけど、ボーイェも似たようなものか? シュガーバも酔ってつい口が滑ったのかねぇ。 ボーイェの名前を出すなんて初めてじゃない?
「で、ボーイェが
「酒場に用なんざ酒しかねぇだろうが? 邪魔が入ったから飲み直しだあ! さっさと案内しろやあ! そんで酒え持ってこいやあ!」
「先ほどのお勘定をまだいただいておりませんが?」
あーあ。あいつら払わずに逃げやがったな? まあシュガーバが有り金全部抜いたせいもあるんだろうけどさぁ。この店も付け馬つけて取り立てるぐらいの根性見せろよな。まあ無理だろうけどさ。
「おらよお。これで足りんだろお?」
おっ、シュガーバの野郎酔って気が大きくなってんな? 宝貨を出しやがった。私の芸術品じゃない方を。
「ほぇー、お金持ちならそう言ってくださいよぉー。ボーイェってケチでセコい奴らしかいないってのが世間の常識なんですからぁ。はーい! ご案内いたしまーす!」
一気に態度が変わりやがった。面白いなぁ。そしてお釣りは返さない気か? 別にいいけど。宿代に当ててもらおう。
「おうよ。あと今夜一泊するからよお。二部屋用意しとけやあ」
「あらぁ! お泊まりまでしていただけるんですかぁ!? ありがとうございますぅ! 言っておきますねぇ!」
それにしてもシュガーバの野郎マジでまだ飲む気かよ……私はもう入らないぞ。アレクもすごいなぁ。
げっふぅーい……結局付き合って私も飲んでしまった。三杯だけ……この場合は何て言うんだろ? 逆駆けつけ三杯? 何か違う気がするなぁ。
さすがにもう限界だ。酔いはそれほどでもないけど腹いっぱいなせいか眠気がね……
「アレク、眠くなったから部屋に行こうよ。」
「そうね。私も少し眠いわ。」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
コーちゃんはまだ飲みたいと言い、カムイは眠いと言う。ならば……
「オレあまだ飲むぜえーー! いいよなあ魔王よお!?」
「ピュイピュイ」
コーちゃんが一緒に飲むと言っている。問題ないね。
「おう。好きに飲みな。そんで困ったらコーちゃんに助けてもらうといい。」
どうなるかは分からないけどね。
「じゃあ姉さん。部屋に案内してもらえるかい? 一番いい部屋ね。あいつは適当な部屋でいいから。」
「いいんですかぁ? あの人キャフィティン様なんでしょお? お金持ちみたいだし……」
「あれは俺の金だよ。面倒だからあいつに持たせてるだけ。」
「あっ! そうなんですね! お客様はどのようなお方なんですかぁ!?」
いきなり目が輝いたね。
「こちらのお嬢様の筆頭護衛さ。お忍びの旅だから詳しくは内緒だよ? 分かったら案内してね。あ、これ取っておいて。」
銅貨を一枚握らせる。
「まぁ! ありがとうございますっ! ご案内しますね!」
この手のタイプは内緒だって言うと喜んで喋るんだろうなぁ。まあこちらとしては一番いい部屋に案内してくれればそれでいいしね。
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