2534話 泥酔したシュガーバ

客が少し増えてきた。昼時だからか?

ホール係も二人増えている。若い女だ。


「お待たせしましたあ! ご注文はあ?」


「酒だあ! こいつを五杯持ってこいやあ!」


シュガーバが泥酔している。面白いから放置するどころかガンガン飲ませているところだ。

ちなみに今は蒸留酒っぽいのを飲んでいる。商都で作られてる希少な酒らしい。シュガーバとコーちゃんはストレートで飲んでるが、私とアレクはロックにして飲んでいる。

ちなみにカムイは寝ている。


「はーい!」


愛想のいい女の子だね。この店がどうにか潰れてない理由はこれか?


「うおーい魔王お! 乾杯すんぞお! おら来いあやあああ!」


ぷぷぷ。シュガーバが面白すぎる。こいつ酔うとこんな感じなんだね。私達の前でここまで酔うのは初めてか? 酒なら何度も飲んできたのに。


「乾杯。」

「乾杯よ。」

「ピュンピュイ」


「ぐふぅえーーい乾杯だぜえおおおい!」


あらまぁ。シュガーバったらまた一気しやがった。よく急アルにならないよなぁ。別になってもいいけど。


「なあおいお嬢様よお! おめえなんでオレに素肌あ平気で晒すんかよお!? しかも全身触られて何とも思ってねえんかよお!? それがアレか!? 高位貴族ってやつなんかあ!? どうなってんだよお! 魔王も魔王だぜおい!? おめえも平気なんかよお!? おお!?」


面白すぎる。マジで酔いまくってやがる。こいつってこんなタイプじゃなかったはずなのにさぁ。面白いわあ。


「お待たせしましたぁ! とうもろこしマッサーラ酒でーす!」


この姉ちゃん達はばあちゃんと違ってちゃんと商品名を言ってくれるんだよね。マッサーラって聞き覚えがある。とうもろこしだよな? ジジイがいるヤシ領の名産品だよな? ここら辺でも採れるのかな。ちょっとクセがあるけど美味いよね。


「げっふぁーーい! おう魔王お! 乾杯すんぜえ! おらあ来いやあ!」


まだ飲む気かよこいつ。私も飲むけど。


「うおい! 飲んでんのかよ魔王おお!」


「飲んでるぞ。これ美味いな。」


「だろおおおお!? ギーヤもうめえがこいつもうめえよなぁあああ!」


こいつヤバいな。そろそろ眠らせてやろうか?


「お待たせしましたぁ。駱駝ラクーミヒレ肉の塩釜焼きでぇーす」


んん? このタイミングで出てくるにしては大きすぎない? こんな肉の塊なんか頼んだかぁ?


「ガウガウ」


カムイ、お前か……どうやって頼んだんだよ……


「じゃあ割りますねぇ!」


肉の塊を塩で覆って蒸し焼きにしたのかな? かなり時間もかかるし値段も高いだろ。やっぱこの店って高級店なのか?


「切り分けますねぇ!」


おほっ、めちゃくちゃいい匂いがするじゃん。駱駝の肉ってこんな匂いだっけ? 丸太みたいに太く長い肉から食欲をそそる匂いがぷんぷんしやがる……もう腹いっぱいなのに。香辛料と肉の香ばしさ。これもう食うしかないだろ……限界なんか知らないね。


「ガウガウゥゥ……」


カムイ……お前が頼んだはずなのに香辛料まみれで食えないのか……可哀想なやつ……仕方ないなぁ。


「うぉーいシュガーバ。カムイの好みなんだけどさぁ…………」


説明説明。


「んあー? そうだったんかあ? つまりオレらあとは全然違うってことだなあ!? 酒も飲まねえんかよお!」


うん、伝わったかな。カムイが酒を飲まないことはずいぶんと前に言ったと思うんだけどなぁ。


「そんなら狼ちゃんには違う肉を注文してやんねえとなあ! おう姉ちゃん来いやあ! 肉だ肉う!」


「はぁーい! 今行きますぅー!」


ホール係も大変だよなぁ。シュガーバみたいな泥酔野郎の相手するんだからさぁ。


「はぁい! ご注文をどうぞ!」


「さっきの肉だけどよお? 味付けなしで頼むわあ! 香辛料を使わずによお。この狼ちゃんは香辛料が苦手なもんでよお! 頼むぜえ?」


「はぁーい! かしこまりましたぁーー!」


それでも表面に塩味は付いてしまうかな。まあそれぐらいならいいだろ。


ん? 店内がやけに騒ついてきたな。そこそこ人数は入ってるが満席ってほどじゃないのに。


あれか……いかにも兵士って感じの奴らが大勢で。もしかして狙いは私達か?

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