2533話 母と娘
席に戻って再び注文。今後は違う酒を飲んでみようかな。ちなみに料理は残ってた。辛いやつだけ。
「ご迷惑をおかけしました」
酒を運んだばあちゃんが謝ってきた。無愛想だけど意外な面もあるのね。
「そういえばあんたと仲良くすると大変な目に遭うって聞いたな。どういうことだい?」
想像はつくけど。
「ファンヤーサ様に手討ちにされた踊り子のダナは私の娘でした。だからでしょう」
あれ? 想像と違う。孫かと思ってたのに。
「娘? あんた何歳なんだい?」
「四十五です」
ええええ!? マジで……? 白髪だし顔だってしわしわだし背中は曲がってるし、どう見てもばあちゃんなんだけど……ま、まあいいや。
「それで、ファンヤーサ達に嫌がらせされてるって感じかい? この店が静かなのもそれが理由かな。」
「そうです」
ふーん。まあ予想通りだね。
「よおババア? この際だから全部言っちまえやあ? てめえの娘がどうやって金持ち男に取り入ったかをよお? この店の手伝いもせずに踊り子なんざになっちまった娘の手管をよお?」
シュガーバの奴えらく煽るなぁ。言い方ってもんがあるだろうに。
「知りません。分かるのはこの店が今もあるのはダナが身売りしてまで金を得てくれたからということだけです」
踊り子って身売りしてなるもんなの? 素人にできる職業じゃないと思うが……いや、一晩オークションの話か?
「はあーん? そんで金持ちの男に気に入られて色々ザクザクだと思ってたらやりすぎたってわけかあ?」
「ですから知りません。分かるのは買われた女に選択肢などないということぐらいです」
「ほおーん? まあ分からんでもねえなあ? 男の方が気に入りすぎて暴走しちまったって感じかあ? 話い聞くだけでファンヤーサってのはきっつい女みてえだしもっと自分に従順で可愛らしい女が欲しくなんのも無理ねえんかもよお?」
その辺りはシュガーバにも覚えがあるんだろうねぇ? 違いは奥さんに狙われてもシュガーバなら勝てるところか。
「そうかも知れません。ただファンヤーサ様の悋気に触れた以上、いずれこうなる定めだったのでしょう」
客を選べない踊り子ってのも辛いねぇ。売れっ子にならないと拒否できないんだっけ? むしろその男しか買ってくれないからしぶしぶ応じてたとか?
そもそもだけど傾いた店を身売りした金で立て直そうとしたのが間違いの始まりだったりしてな。正しい経営努力をしなかったのも悪いんじゃないのかねぇ。まあ、そんな無茶する女に目を付けられた今となっては八方塞がりなんだろうけどさぁ。
「まあいいさあ。今日んとこはとことん飲んでやるからよお。ちったあ元気出せやあ?」
「ありがとうございます」
全然ありがたそうな声じゃないなぁ……
このばあちゃんの愛想のなさが経営難を呼んだって面はないのか? 酒も料理も美味いのにさぁ。
まあいいや。私が心配することじゃない。私達は楽しく飲み食いするだけさ。
「なあ魔王よお? 今日はとことん飲むんだろお?」
「そうだな。たまにはいいな。」
しょっちゅう飲んでる気もするけど。シュガーバもえらく飲む気になってるじゃないか。さてはビールが気に入ったと見えるな。分かるよ、分かるとも。
さて、ファンヤーサはどう出ることかねぇ?
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