2409話 マゴグワロの男達
散歩を続ける気にならなかったので宿に戻ってみると……大勢の村人が待ち構えてやがった。やはり男しかいない。手に手に農具っぽいものを持ってやがる。
「何か用か?」
会話なんてする気分じゃないけど、相手は平民だしな。いきなり攻撃するわけにもいかないか。
「無知な旅人に……説教をせねばと思うてな……」
人垣が割れて、小柄なジジイが歩み出てきた。もったいつけてんじゃねぇぞ?
「無知だと? この村のくそみたいなしきたりを理解しろとでも言うのか?」
くそでも何でもよそ者が土地の決まりに口を出すこと自体が筋違いなんだけどな。そのぐらい分かってやってんだよ……
「理解? 無知な旅人には無理な話であろう……」
「じゃあ何の用だ? さっさと休みたいんだがな。」
「旅人よ、お前たちが手を出した結果……何が起こると思う?」
「知らんな。後先考えて子供の命が救えるかよ。」
もし私が普段と違ってイライラしてなければ見逃した可能性はあるけどね。その土地の者でないと分からないことってあるからさ。だが、それはそれだ。
「お前たちが手を出したために子供だけでなく
あまって何だ? もしかして母親のことか?
「何だそりゃ? あの子ならまた縛られてるが?」
「一度解放したことが問題なのだ……誰の仕業だろうがな……その罪は子供だけで贖えるものではない……」
過去に助けた奴でもいたのか? 助けた本人より助けられた側の罪を重くすることで再発を防ぐため、とか?
「あま、が何のことかは知らんが好きにしろよ。で、俺に用はあるのか? 説教以外でな。」
「ワシは、ない。が、こやつらはあるそうでの……」
「街の仲間に手え出しておいてそのままで済むと思ってんのかよ!」
「ちっと腕が立つぐれえで勘違いしてんじゃねえぞ!」
「しっかり教えてやるからなあ!」
何なのこいつら? 子供を解放したことじゃなくて兵士やその連れを叩きのめしたことを怒ってんのか?
そもそも魔法を使ってない私に兵士でも相手になってないのに……こいつら村人が十数人集まったぐらいで勝てると思ってんのか? 殺さないよう手加減してるってことすら気付いてないんだろうし……
いや、そりゃあまあ身体強化は使ったけどさ。そのぐらいいいだろ? 相手は大勢だったんだしドラゴンウエストコートにも少しは攻撃くらったんだし。ノーダメージだけど……
「やるってんなら来い。相手してやるよ。」
不動を取り出し、構える。っぐへっ……何だ?
「私がやるわ。少し考えがあるの。」
アレクか、後ろから襟首を引っ張ったのは。
「分かった。任せるね。」
アレクったら街道を歩く時はずっとドラゴントラウザーズを履いていたせいか、村に着いてからはドラゴンミニスカートなんだよね。眩しすぎるぜ……
「来なさい。カースと戦いたければ私に勝つといいわ。」
杖を構えるアレク。後ろ姿すら凛々しいぜ。
「ふざけんな!
「情けねえにも程があるぞ! それでも男か!」
「下等な
『
さっきから理解できないことだらけで頭が追いつかない……こいつら何考えてんの?
アレクがわざわざ構えて待ってくれてるのにぐだぐだ言ってさ……せっかくアレクが杖で相手してくれるはずだったのに。充分勝ち目はあったのにさ……マジで信じられない奴らだわ。
「うっぐ、おが……」
「痛えなくそがあ……」
「何しやがった……」
生きてるね。だいぶ威力を落としてるもんね。小石を大量にぶつけられた程度かな。致命傷にはほど遠いよね。
「言っておくけど私も彼もその気になったらすぐ殺せるわよ? それを敢えて手加減してあげてるのが分からないのかしら? そもそも戦いの場において男だ女だなんて意味がないのに。その程度のことも分からないなんて救いようがないわね?」
詳しくは分からないが、どうもこいつら的には女ってのはかなり身分が下ってことなんだろうか? それこそ奴隷階級みたいにさ。だから外出の自由もないとか? 正気とは思えんな。
「
「調子にのんなあ……」
「ぜってえ許さねえ……」
立ち上がれないくせに口だけは一丁前か? アレクの言葉も全然届いてないし。宮廷魔導士やバルバロッサの領主が蛮族すぎて会話にならないって言ってたのはこのことだろうか? でもあれはヤリマダ半島の中央から東部にかけてであってこの辺りのことではないはずだよな? 似たようなものなんだろうか……文化が違い過ぎるぜ……
ならば……一つアイデアが浮かんだぞ。言うだけ言ってみてやろう。それでだめなら殺すか逃げるかすればいい。
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