2405話 止まらない怒り

あー……イライラする。ストレスが溜まってるんだろうか。毎晩アレクとハッスルしてるのに……


「起きろって言ってんだろぉが! 殺すぞてめぇ!」


「ぐぼおっごほっごほっああぉ……」


つい腹を踏んでしまった。


「聞こえねぇのかてめぇ! 自分の子が死にそうだったのが分かんねぇのかよ! 起きねえってんならもう殺してやるよ! そのまま死ねや!」


魔力庫から不動を取り出した。こんな奴を殴るにはもったいないほどの木材だぞ? 神木だぞ?


「ひっ! ひいいいっ!」


「起きろっつってんだろがぁ! もういい死ね!」


頭を叩き割ってやるよ! スイカみたいになぁ!


「待て! よそ者が何をしておるか!」


あ? 誰だ?


「こいつを殺すんだよ。文句あんのか?」


色黒のごっついおっさん。村の顔役ってか?


「あるに決まってるだろうが! そいつは罰の執行中だ! 手出しは無用だ!」


「罰だと? こいつに? どんな?」


「日が暮れるまでここで晒し者になることだ! もっとも息子が代わりに受けたようだがな!」


意味が分からん……このオヤジの罰を息子が受けて、死にかけたってことか!? しかも夕方まで晒し者になるだけって……そんなのオヤジが受けてりゃ死にはしないだろ! ふざけんなよこいつ……やっぱ殺そう……


「見たところお前が縄を切ったのか! 大人しく日暮れまで縄を受けるというなら勘弁してやる! それとも叩っ殺してやるかあ!」


「やってみろや! 文句があんならかかって来いや!」


ふざけんなよ……この子は死にかけてたんだぞ? まだぐったりと横たわってんのに……誰もこの子の心配しないのかよ!


「殺せえええええ!」

「おおおおお!」

「おらあああ!」

「ガキがああ!」


『身体強化』


「あがっ!?」

「いぎっ!?」

「うぐぁあ!」


突きを三回。腹を貫くつもりで突いたが貫通には至ってない。こいつらの踏み込みが甘いせいか。それに速く突くことを意識しすぎてしまったか。


「まだやんのか? 邪魔するなら叩き殺すぞ?」


「死んだぞお前え! 村のもんに手え出したんだ! もう許さんぞ! 生きて村から出さんからな!」


と言いつつ逃げていきやがった……ごっつい体してるくせに。仲間は置き去りかよ。


「さて、待たせたな。頭をぐちゃっと潰されるのと腹に穴が空くのだとどっちがいい?」


「そ、そんっな……や、やめっ、やめ……」


「頭を潰す方が苦しまずに死ねる。たぶん一瞬でな。腹に穴が空くと死ぬまでずっと苦しむことになる。たぶん数時間な。」


「やっ、やだやだやだ! たすっ、け……」


いい歳こいたオヤジが何言ってんだか。


「だいたいお前は何をやった? なぜお前の罪を子供がかぶってんだよ!」


「そ、それは、その……」


イラっ……


「これを見ろ。欲しくないか?」


銅貨をひと握り。まあまあ大金だろ?


「あ、ああ! ああ!」


ちっ、急に目の色が変わりやがった。子供が死にかけても何も気にしなかったくせに……


「じゃあ約束だ。俺の質問に正直に答えろ。そしたらこいつをくれてやる。」


「あ、ああっがばばぁぁがぁぁーーぐぉ!」


かかったか。


「じゃあ質問。お前は何をやった?」


「クロブの実に水を染み込ませて重さをごまかした……えっ? はあっ!?」


何だそれ? たぶん香辛料だよな? それに水を? バカだろ……どうせすぐバレる上にせっかくの香辛料が腐っちまうだろ? しかもこいつ……


「それをやるのは何回目だ?」


「ご、五回目……えっ、ええぇ!?」


隠したいのに正直にペラペラ喋ってしまうのがそんなに不思議か?


「今までバレなかったのか?」


「あ、ああ……」


たぶん納品に際しての話だよな? 受け取る側もバカなのかよ……


「で、なぜ子供が縛られてるんだよ。」


「身代わりに行かせたから……」


「この村はそれで許されるのか?」


「あ、ああ……」


滅びた方がいいんじゃないのこの村……頭おかしいだろ……

シュガーバの奴は家族が何より大事みたいなとこを言ってたが……この村は違うのか? 同じカバラ領じゃないのかよ……


とりあえずこいつは後回しだ。子供にポーションを……


『水操』


だいたい半分に薄めて飲ませた。脱水症状ならこれで充分だろう。

さて、こいつをどうしてくれようか……


「あいつです! お願いします!」


さっきのごっつい男が戻ってきた。ふぅん、兵士を連れてきたのか。ぞろぞろと来やがって……つーかこの村って兵士いたんだな。どこかで見た覚えのある服装、カンドゥーラとかって言うんだっけ? ああ、カラバで見たのか。あの街の衛兵も似たような服装をしてたな。

とことんやってやろうか……

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