2306話 船酔い対策魔法
「というわけだったの。さすがは宮廷魔導士ね。その場で結界魔法陣を使ってみせるだなんて。」
アレクったらきっちり取材してきてくれたのね。わざわざありがたいね。見てきてくれるだけでよかったんだけど、見えなかったんじゃあ仕方ないよね。
「ありがとね。やっぱ宮廷魔導士ってやるもんだね。」
結界魔法陣か……私なら破れるだろうか。無理やり破れそうな気もするし『解呪』が効きそうな気もする。でもその辺りは使う方も重々承知だろうしね。あれだけ大きい魔物が身動き取れなくなるわけだし。魔力対策も済んでると見た。
「ええ、軽薄なところもあるけどそれだって自信の現れかしらね。」
「そうだね。魔石なしで結界魔法陣をさらっと使うぐらいだし。」
おまけにアレクをさらっとお茶に誘うとは、手慣れてやがるな。アレクにはばればれだったみたいだけど亡き妻とか言って同情を誘う手口か。過去にそうやって成功した体験があるんだろうなぁ。
「あとはそうね……お茶を淹れ慣れてたわね。茶器の趣味は少しばかり若作りって気もしたけど、悪い気はしなかったわ。」
「さすがだね。よく見てるね。」
茶器なんて見ても分からないもんなぁ。アレクが普段使ってるのは年代物って感じで渋くていいんだよね。
「それから……美しさの秘密は? って聞かれたんだけど……何て答えたと思う?」
ほぉ、ナンパ野郎め……
「えー、難しいなぁ。だってアレクって存在そのものが美しいじゃん。太陽が明るい秘密は? って聞かれるようなもんだよね。で、何て答えたの?」
もちろん水素の核融合とかって話じゃないけどさ。
「も、もう、カースったら……それより私の答えだけど……
「え? ごめん、ちょっとよく聴こえなかったよ。もう一回言ってくれる?」
だいたいの予想はつくけど聴こえなかったのは本当だ。顔を赤くしちゃって、かわいいなぁもう。
「だ、だから、カースに……
やはりよく聴こえない。でも全然構わないよね。アレクのこんな可愛らしい顔を間近で見れたんだから。船酔いも吹き飛ぶってもんだ。
「風呂入ろっか。アレクは潮風を浴びてるもんね。しっかり洗ってあげる。」
「うん……お願い……」
もちろん洗うだけでは終わらないぜ。今夜もサティスファクションするぜ。
朝、いやもう昼だろうな。よく寝たなぁ……
湯船もそうだったけど、このベッドもあまり揺れなくていいよな。さすが国王の部屋だわ。どんな構造してんだろうね。
あら? アレクがいない。風呂かトイレか……
「ピュイピュイ」
コーちゃんおはよ。そうだったのね。カムイが腹を空かせてアレクを起こしちゃったのね。まったくもう。で、アレクと一緒に食堂に行ったわけか。そうなるとアレクは宮廷魔導士にもてもて、カムイはあの少年にもてもてになっちゃうね。
「ピュイピュイ」
おおー、コーちゃんもお腹は空いたけど私が起きるのを待っててくれたんだね。ありがとね。それなら行こうか。
実はアレクが帰ってくるまでだらだらしてようかとも思ってたけど……くっ、ベッドから降りると、やはり揺れるな……
食堂に到着。ふふ、アレクが宮廷魔導士に囲まれてる。料理も豪華に見えるな。昼から食うには少々ハードな気もするが。
「おお魔王殿。こちらにどうぞ」
すすっとアレクの隣を空けてくれた。スマートだね。
「お邪魔しますね。」
「ごめんなさいねカース。カムイに起こされちゃって。どうもお腹が空いたらしくて服を引っ張られちゃったの。」
「うん。コーちゃんから聞いたよ。わざわざありがとね。」
カムイは私の召喚獣なんだからさ。カムイって時々アレクに甘えたがるよな。
「ちなみにカムイはあそこにいるわよ。」
目をやってみると……五十センチ四方はありそうな肉の塊を黙々と食べてやがる。表面は焼けてそうだけど中はレアかな? で、そんなカムイに恍惚の表情で抱きついている少年の姿が……やばい顔してんな。例えるならBLの妄想が止まらず鼻息の荒さを隠し切れない腐った令嬢的な?
「ピュイピュイ」
はは、ごめんごめん。コーちゃんもお腹すいてるんだったね。何か食べようね。あー、コーちゃんは酒もだね。分かってるって。
ふぅ。揺れる船内だとやはり食べにくいな。少しは慣れたけど、酔いを克服したわけじゃないもんなぁ……
帆船って蒸気船よりかなり酔いにくいとは聞くけど、それでもこの様だもんなぁ。船旅は辛いね……
「なんだ、魔王殿が船に酔いやすいというのは本当だったのか。それなら耳の周辺だけに身体強化をかけてみてはどうだ?」
「おお、それがいい。いささか魔力の無駄遣いな気もするが、魔王殿であれば誤差のようなものであろう」
「夜番の者が魔王殿を酔いから回復させたと言っていたが、本当だったのだな」
なんと……そんな方法があったのか……?
やってみよう。
『身体強化』
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