1970話 解体
収納を終え、急いでアレクの所へ戻ってみると……
「カース! 来るわよ!」
「え!? 何が!?」
「
え? 匂い……全然しないけど……あっ! そうだったぁぁーー! 私の鼻は今イカれてるんだったぁぁーー!
別に問題ないけどね。つーかあいつって女王なんだ。
「オッケー。じゃあ迎え撃つとしようか。アレクは北側ね。」
「もう、カースったら……一撃で仕留め損なった私の責任なのに。」
「あはは、まあまあ。ほら来た!」
下に向けて攻撃ができる北側を頼んだことを甘い措置だと思われてしまったな。その通りだよ! だってどれだけ来るか読めないんだもん!
私の方、南側は上りになっているが、ここを下ってくるとは思えない。だってあっちは頂上だもん。来るとしてもだいぶ後と見た。よって両サイド、東西を警戒しておけばいい。ここは尾根道、どちらも急斜面だからそうそう登ってくるとも思えないが……
来るのね。雄の大群が……あ、そうか。東側の方が匂いが強いもんな。
それにしても……女王のくせに一目散に逃げるような知恵があるかと思えば、雄どもの知恵のないことよ。
『風斬』
巨大な角をこちらに向けて急斜面を駆け上がってくるが……先頭の数匹の首を斬っただけで、ほぉーら。後ろを巻き込むように転げ落ちていく。
『風斬』
それでも巻き込まれずに回り込んだ雄鹿もいたが同じことだ。下から来る以上、私の対応は変わらない。
よし、ひと段落ついたな。それにしても……匂いが判別できないのって意外と不便なんだな。フェルナンド先生は目隠しと耳栓をしても近寄る虫を斬ることができるってのに。まさか嗅覚!? もしかして心眼ってそこまで含めての話!? さすがに分からないな。
それはともかく、アレクの方は……
『氷弾』
へえぇ……やるなぁ。トドメを刺さずに足だけ狙ってるんだ。素材狙いなのね。さすがアレク。
正面から突進してくる鹿の群れの足だけを狙うって尋常な腕じゃないよね。女王の時は焦ってたのか外してしまったようだけど、落ち着いて撃てば問題なしだね。
ならば私がトドメと回収を担当しようではないか。
『浮身』
倒れた
『風斬』
首をスパッと斬って頭部を下に向ける。後は血が抜けるのを待って収納すればいい。なお、首は飛ばさず半分繋がったままにしておく私の魔力制御もなかなかのものだ。首周りの肉もそれなりに旨いらしいからね。捨てるには惜しい。
それから私が先ほど仕留めた鹿も回収しておかないとね。
『浮身』
あ、今のって……
「アレクも聴こえたよね?」
「ええ。カムイの遠吠えね。ちょうどいいわね。」
「それがそうでもないんだよね。ここらにはまだ
「ええ、もちろんそうだけど?」
思い出したんだよね。
「じゃあここで待ってたら大物が来るかも知れないよね?」
「ああ、それはそうね。お目当ての
「だよね。むしろとっくに逃げてそうだよね。」
この匂いがすれば狂乱した
よって、それでも集まる魔物ってことは本能に逆らえない雑魚か、そいつらを丸ごと餌にできる大物ってことになる。
目当ての魔物はもうカムイが仕留めたんだろうから、ここは一つ大物が来るのを待とうではないか。
斜面の下に転がった女王。こいつからは一体どんな匂いがしてるんだろうね? 今のところ鼻の利かない私には分からないな。香水の原料になるとも聞いたことがあるけど、いつも甘い匂いがするアレクには無用だよね。
「カース、そろそろ女王を収納してもいい? この分だと収納してもしばらく匂いは続くと思うから。」
「あ、そうだね。いいよいいよ。任せる。」
それはそうだ。強烈な匂いなら周囲に染みついてるだろうし、いつまでも収納せずにいるとどんどん肉などの素材が劣化してしまう。ましてや女王は血抜きをしてないんだから。
おお、さすがアレク。私は面倒だから風斬で一気に首を斬っただけなのに……アレクったらきっちりナイフで腹を開いて内臓を取り出している。
『落穴』
内臓の処理も完璧。きちんと穴を掘って埋めている。偉いなぁ。コーちゃんがいたら喜んで食べるんだろうけどね。
最後に水の魔法で手とナイフを洗ってお終い。手際がいいね。さすがアレク。
「お待たせ。見ててくれてありがとう。」
「見事なお手並みだったよ。周囲の警戒なんて全然必要なかったぐらいだよ。」
「ふふ、ありがとう。」
さあて、後は大物が来るのを待つばかりだ。何が来るかなー。
鹿の魔物を常食してる魔物と言えば……
『榴弾』
キモい巨人が走り寄ってきたから迎え撃った。体高四メイル超えのくせに太っとい両腕は地面すれすれまで伸びてやがる。キモっ……
まあ、もう終わったけどさ。こんなのより大物が来ないかなぁー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます