1966話 なぞのエルフ
服装はアーさん達普通のエルフと同じ緑系。だが少しばかり薄汚れてる感があるな。
「何か用か?」
「その亀を返してもらおうか」『
この野郎……返せと言いつつ、いきなり攻撃してきやがった……効かないけど。
『榴弾』
ミンチになれよ。
「きさっ!? くうあっ!」
この野郎……マジかよ……自在反射を使いやがった、だと? 私の榴弾が七割ほど跳ね返された……
まあ、問題ないんだけどね。
『榴弾』
「くっ……き、きさま……」
今度は半分ほど弾かれた。でも榴弾って様々な方向から相手を襲うんだよね。だから跳ね返しても私を襲うとは限らないんだぜ? 我ながらえげつない魔法だわ。
それにしても……返ってきた榴弾を自動防御で防ぐと魔力の消費が酷いんだよなぁ。我が魔法ながらえげつない……
私も魔力感誘を自在に使えるようになりたいものだ。
「まだやるか?」
とりあえず両足はズタズタになってるし、上半身もそこそこ傷付いてる。私としてはなるべくエルフは殺さないつもりだからな。あくまで、なるべくでしかないけど。
「き、きさまぁ……何者だ……」
「お前こそ誰だよ。見たところエルフ族なんだろ? どこのモンだ?」
ダークエルフでないってことぐらいは分かる。余裕かまして登場した割には大したことないよな。マリーやクロミがよく使う葉斬っぽい魔法を使ったみたいだけどさ。
「死ねえええぇ!」『
『風斬』
「なっ……があっ……」
バカが……何やら妙な魔法を使ったみたいだが私の自動防御は無敵だ。ごり押しでぶち破るぐらいしか対処法はないんだぜ? 逆に隙を晒したもんだから両腕をぶち斬ってやった。
「少しだけ待ってやる。呼べ、助けをよ?」
こいつが下っ端なのかボスなのかは分からんが、この際だから一網打尽にしたいじゃないか。
「くっ……『肉骨復げ『麻痺』……っうぐ……」
油断も隙もないな。腕を繋ごうとしやがったから麻痺を使いつつ腕を蹴り飛ばしておいた。やはり、もう麻痺が効くほどに消耗してやがる。さあ、呼べ。麻痺の魔法では体の動きは止められても、魔法の行使は止められないからな。
おっ、魔力の動きを感じるな。おおかた『
『
だが情報をきっちり伝達させるほど親切じゃないぞ? 状況は伝えられてないにしても、こいつの魔力を発信することぐらいはできただろう。後は待っていれば誰か来るって寸法だ。
待つ間に蹴り飛ばした腕を回収し風壁で覆っておいた。胴体の方の傷には特に何もしていない。敢えて殺すつもりはないが、積極的に助ける気もないからな。
来ない……
付近まで来て様子を見ている感じもない。もしそうならコーちゃんやカムイが見逃すわけないもんな。いかんな……このままだとこいつ死ぬな。いや、私としては死んでも構いはしないんだけどさ。アーさんに丸投げするには証拠は多い方がいいに決まってる。
ならば、ここまでだな。
「アレク、帰ろうか。お腹もすいたしね。」
「ええ。そうね。今日もカースは大活躍だったもの。本当に素敵よ。」
えへへー。照れるなぁ。
「ガウガウ」
活躍したのは自分だって? 分かってるって。山みたいな化け物亀を相手によく戦ったよな。さすがカムイだよ。
「ガウガウ」
デカいだけで弱かったから自慢にならないって? だったら威張るんじゃねーよ……
お前、両足は大火傷でズタズタだし、肋骨あたりも数本折れてるだろ。あんまり強がるんじゃねーよ……無茶しやがって。
さて、結局本命は現れなかったな。単に救命の伝言が届いてないのか、私にビビったのか。それとも用心しつつ今も隙を窺っているのか……
まあいいさ。この亀とエルフをアーさんに突き出せば何か分かることもあるだろう。これで私の仕事も終わりー。村長に無茶なおねだりをしてしまったから、これぐらいの労働はするけどさ。
あんまり無茶なことばかり言われてもねぇ?
「というわけで捕まえてきたよ。こいつら知ってる?」
「ほう……まさか、はぐれエルフとはな。」
……はぐれ……エルフ?
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