1965話 カムイ鼻高々

「ゴロァバァガガガガガアアアアアアアアァァァァァーーーーーー……」


耳をつんざくほどの大声を出したかと思えば、極炎サラマンドル邪亀サラタニアの奴はどんどん声が小さくなっていった。もしかして断末魔の叫びだったのか?


いや……


「アレク、一応僕の後ろにいてね。」


「ええ……」


自動防御の中にいるから大丈夫とは思うけど。一応……


『水壁』


防御を厚めに張っておこう。


『ゴロァバァアアアアァァァァ!』


ほら来た! 定番だもんな。分かってたとも。この亀野郎……自爆しやがった。爆風とともに甲羅の破片が飛び散ってくる。


カムイは大丈夫なんだろうか……?

あ……


「ガウ……」


落ちてきた。あーあーもう。破片の直撃くらったのか? 大丈夫か?


「ガウガウ」


平気だって? 痩せ我慢しやがって。で、なぜこうなった? お前の仕業だろ?


「ガウガウ」


甲羅を斬りまくったからだって? しかも背中の中心は必ず通ってたって? あー、縦横無尽に駆けずりまわってたように見えて、背中の中心をきっちり通ってたってこと?


「ガウガウ」


そうやって少しずつ甲羅を削って、最後に中心をぶち抜いたって? 中心に徐々にダメージを与えてたってことね? やるじゃんカムイ。結局いらん心配だったってことね。


「ガウガウ」


だから手を出すなって言っただろって? うるせぇな。私だってかわいいお前が心配なんだよ。で、もう終わりでいいのか?


「ガウガウ」


まだ終わってないって? まさかアンデッドの生き残りでもいんのか?


「ガウガウ」


いいから待ってろって? お前も忙しいなぁ。あんま無理すんなよ……


カムイは未だ噴煙収まらぬ場所に飛び込んでいった。まだ何かいるのか? 確かに微々たる魔力は感じるけどさ。


「ピュイピュイ」


極炎サラマンドル邪亀サラタニアの幼体がいるって? 幼体? なんで?


「ピュイピュイ」


コーちゃんも分からないの? もしかしたらカムイが食うかもって?

全く分からん……


そもそもアンデッドを動かしてたのは誰なのか?

極炎邪亀にアンデッドを操るような能力があるなんて聞いたことがないぞ? いや、そんなもん単に私が知らないだけとは思うけどさ。


あ、カムイが帰ってきた。


口に咥えた小さな亀をポイッと落とした。食わなかったのね。


「ガウガウ」


それにしても……こいつが極炎邪亀の幼体? 小っさ。私の手の平より少し大きいだけじゃん。こんな魔物が魔力次第で山並みに大きくなるのか……魔物の不思議だな。全く理解できない。そりゃあ知識としては知ってるけどさ。

それよりカムイ、魔石を探してきてくれよ。どこかに落ちてるはずだからさ。


「ガウガウ」


よし。カムイにしては素直に言うこと聞いてくれた。あいつって私の召喚獣のはずなんだけどなぁー……


「コロァッ」


何やら小さい声で鳴いてる。殺すには少しばかり可愛いような……


『風壁』


とりあえず保留。閉じ込めておこう。後はアーさんに任せればいいや。そのぐらいやってくれるだろ。私にばかり働かせやがってさ。


「ガウアウ」


おっ、魔石あったのね。ありがとよ。カムイったら口を限界まで開けて咥えてる。かわいいやつめ。おっ、こいつはラッキー。火の魔石じゃん。村長使うかな? ぜひ私の装備作りに役立てて欲しいね。


さあ帰ろ、ん? この魔力は……


「それを持っていかれると困るな」


見知らぬエルフが姿を見せた。

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