1962話 追跡アンデッド
いや、そもそも私が気にする必要ないじゃん。どうせアンデッドと中の始祖エルフって関係あるんだろ。
「どう見てもアンデッドどもは始祖エルフを狙ってるんじゃないの? 中にはまだ遺体があるんだよね?」
むしろミイラか?
「むっ、即神体と呼べ。単なる遺体などではない。」
「あーごめんよ。で、どう思う?」
「そうだな。即神体が狙いなのだろうな。お前から奴らの動きを聞いてある程度の確信は持てた。今度は奴らがどこから来ているかだな。分かるか?」
「いやー無理。あいつら元々魔物じゃないみたいだし。全然魔力感じないもん。コーちゃんやカムイなら匂いで追跡できるかもね。臭いから嫌って言われそうだけど。まあそれは明日ってことでいいよね。」
「まあいいだろう。精霊様や狼殿が動いてくださるなら安心だ。おっと、帰る前にきれいにしておけ。」
『
『乾燥』
そのぐらいアーさんがやれよな。まあ、これぐらい楽勝だからいいけどさ。
「つーかアーさん達エルフならこんな時の追跡なんて簡単じゃないの? 別に魔力や匂いに頼らなくても足跡とか折れた枝とかで追跡できないの?」
第一今なら余裕で追いつきそうな気もするけど。私は面倒だから嫌だけど。
「……できなくはないがな……」
うわー、面倒だって顔に書いてある。そりゃあ誰だってこんな臭いアンデッドの追跡なんかやりたくないよ。この霊廟だってアンデッドどころかベヒーモスが襲ってきてもびくともしないんだろうしさ。あ、そうか。目障りだって言ってたもんな。確かに実害はないもんなぁ。臭いぐらいか?
「また明日でいいよね?」
「ああ、精霊様に期待させてもらおう。」
まったく……エルフの村には世話になってるからそれなりに働くのは苦ではないが……
それでもあいつら臭いんだもん。高級ポーションの臭さとは何かタイプが違うって言うかさ。
村長宅に戻ったらコーちゃんもカムイもよく寝ていた。ならば今夜はアレクと声を殺して励むとしようではないか。
目が覚めたら昼前だった。昨夜寝たのが遅かったもんなぁ。ふぁーあ。村長の姿が見えないな。まだ閉じこもってるのかな?
「カースおはよう。何か食べる?」
「おはよ。軽く頼めるかな。」
「任せて。じゃあ待っててね。」
「うん。」
アレクったら先に目を覚ましてたのね。それなのに私が起きるのを待っててくれたとは。いつもながらありがたいね。大好き。
「ピュイピュイ」
錬魔循環しながら待ってたらコーちゃんが呼びに来てくれた。そういやさっきは姿が見えなかったね。
「ピュイピュイ」
ああ、朝からカムイと散歩してたのね。で、お腹がすいたから帰ってきたのね。タイミングいいね。さすがコーちゃん。
うーん美味しい。ヒイズル風メニューだね。ご飯に味噌汁、そして野菜炒め。ご飯なんかアレクがよく使うブイヨンで炊いてあるじゃん。うっま!
「ご馳走様。朝から美味しかったよ。」
「どういたしまして。で、昼からはアンデッドの追跡するの?」
「あんまり気は進まないけど、散歩がてらのんびりやってみようか。見つからなければ見つからないでいいし。」
「それもそうね。エルフの問題だもの。でも私には分かるわ。きっとカースは何か見つけるわね。そして見事に解決するの。」
「はは……」
コーちゃんもそうだけどアレクが言うことも絶対私より正しいよなぁ……面倒なことは嫌なんだけどなぁ。
「ガウガウ」
アンデッド捜索の話をしたら案の定、カムイは嫌な顔をしただけでなく口でも嫌だと言いやがった。いや、分かるよ。お前の嗅覚はすごいもんな。そんな鋭い嗅覚であの臭いを追跡するのは嫌だよなぁ……
よし、じゃあこうしよう。もし見つけたら村長か誰かにブラシを頼んでやるよ。エルフのみんなならきっとブラシにするのにいい素材ぐらい持ってると思うからさ。どうだ?
「ガウガウ」
仕方ないから助けてやるって? 生意気にこの野郎。ブラシと聞いて一気に気が変わったくせに。
「兄貴! お出かけですか!」
「どこ行くんすか!?」
「付いてっていいっすか!?」
自称私の舎弟三人組だ。こいつらでも連れていけば役に立つかな?
「来るか? アーさんから頼まれたアンデッド潰しだけどさ。」
「あー……あの件っすか……」
「始祖がらみはなぁ……」
「あ、俺用事思い出した」
すっと現れてさっと消えていった。何なのこいつら? 別にいいけど。そんなに臭いアンデッドは嫌か! 私も嫌だけど。思えば迷宮のアンデッドも臭かったけど、そこまでじゃなかったよなぁ。ハエも飛んでなかったし。
とりあえず霊廟まで移動して、昨夜アンデッドが引き上げた方向へ歩いてみよう。足跡もあるし木の枝だってそこそこ折れてるし。でもあいつら低いもんなぁ。人間だと屈まないといけない場所でも簡単に通れるよな。こりゃ面倒な追跡になりそうか……
「ガウガウ」
おお、やっぱカムイは分かるか。頼りになるわー。もしかして簡単に終わる?
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