1881話 ジュダの自白
ジュダを宿に連れて帰ろうかとも思ったが、こんな奴を私達の部屋に入れたくなかったので、孤児院の適当な部屋を使うことにした。なお国王は帰ったが治癒魔導士の一人ジェリズンさんが残っている。
適当な椅子に座らせて、背もたれに縛り付ける。足も椅子の脚にがっちりと縛る。
「よしアレク、こいつを起こしてくれる?」
「ええ。」
『覚醒』
殺しはしない。約束だからな。母上にだって目の治癒は頼んでやるさ。ただし母上に会ったらの話だからいつになるか分かったもんじゃないけどな。それにいくら母上だって無いものは治せないだろうさ。
「はああっ!? な、何が……」
「ようジュダ。色々あったけど終わったらノーサイドだよな。お喋りしようぜ。正直になぁ?」
「な、何を……ここはっ!?」
それにしてもこいつ……拘束隷属の首輪をしてるのにまともに喋ってやがる。さすがに国王に成り上がる程度の魔力はあるってことだな。生意気な……くそ、もう殺してやりたい……でもまあこいつの未来は絶望しか残ってないけどね。
私は殺さない。生きたまま国王に引き渡してやろう。すると、あのエルフのように人格を抹消されて、ただ国王に忠誠を尽くすだけの生き人形になるんだろうな。ざまあみやがれ。お前みたいな外道にはそんな末路が相応しい。
さて、何から聞くか……
「アーニャには改変魔法をかけたんだよな? どんな命令をした?」
「かけた……魔王君に抱きついて隙をつくれ、どうにか視界を塞げと……あそこまで上手くいくとはね……」
「アーニャごと殺す気だったよな? あいつを大事にしてやる気はなかったのかよ。」
「君を相手にそんな余裕あるわけない……本当は頭を撃ちたかったが、僕にそんな腕はないし非力な体だし……」
だから的の大きい胴体を狙ったってわけか。あー、そんな体なもんで一発撃っただけで脱臼したってわけね。
「その体は誰のものだ?」
「ち、長男の、スザク……」
やはりか……
「お前も偽勇者みたいに死んでも生き返れるのか? あいつは七回生まれ変わるとか言ってたけど。」
「い、いや、一回だけ……」
一回でも生き返れるなら最高だろ……
「どういうことだ? もう少し詳しく話せ。」
「あいつの個人魔法を一回分献上させた……」
はあぁ!?
「そんなことができるってのか!?」
「実験をしたわけじゃないから……確証はなかった……だがその時に備えてスザクの体を使えるように準備だけはしておいた。魔力庫も使えるようにして……あれこれ詰め込んで……もっとも死ぬ気はこれっぽっちもなかったが……」
あの時、タイショーの神は偽勇者の個人魔法使用回数を残り二回って言ってたよな……それはジュダに一回分渡した後だからってことか? 計算は合う……のか? 何回殺したんだっけな……
「息子の体を乗っ取ってるんだよな……罪悪感とかないのか?」
「あるわけがない。ガキなんていくらでも生ませればいい。まあ僕が使うんだから最低でもスザクぐらいは魔力がないとね……」
やっぱこいつ外道か……聞けば聞くほど胸糞悪くなりそうだ。
「短筒はメリケインからの舶来品って聞いたがライフルはどうした?」
「職人に作らせた。あんな詰まらない銃でも機工を説明するには充分だったから。後は威力を上げる工夫をすればいいだけだよ。」
そういうもんか? あ、ならついでに……
「どうやって撃ってんだ? 火薬の匂いなんかしなかったが。」
「魔石爆弾を応用してる。指先から魔力を送り込み魔石を爆発させているからムラサキメタリックの弾丸でさえ飛ばせるってわけさ。」
なんかこいつ調子に乗ってきてない?
「俺らを貫いたあれも同じか?」
「ああ、あれはアンチマテリアルライフルだよ。バレットM82を参考に仕上げたんだ。すごい威力だったろう?」
『落雷』
「あばばばばぁぁぎゃぎぎぎぎぃ!」
「聞かれたことだけ答えてりゃいいんだよ。約束は守るが拷問しないとは言ってないからな?」
つい使ってしまった。魔力が空っぽなんだなら大した威力じゃない上に頭がめっちゃ痛い……
「ふぁ、ふぁい……」
だいたいアンチ何とかライフルって言われても知らねーってんだ。要は普通のライフルより高威力ってことだよな。
「魔力庫の中身……魔石爆弾を全部出せ。」
「ううっ……」
えーっと……金が少しに食糧がたっぷり、各種ポーションや薬なんかも揃ってるな。それから着替えか。それからごっつい短筒が一つに普通のライフルが二つ、そして刃物がいくつか。後は弾丸が大小合わせて百発ぐらいか?
「そういやお前が死んだら天都が壊滅するって言ってたな。クリムゾンドラゴンの魔石爆弾はどうなってる?」
「天道宮に隠してある……僕が死んだら爆発することになってるんだけど……」
あっぶね……さすがにハッタリじゃなかったのか。つーかこいつマジで他人のことを何とも思ってないのな。王どころか平民として生きる資格すらないだろ。
「タイショー獄寒洞で死んだ時はなぜ爆発しなかった?」
「誤算だった……おそらくあそこで死んだ瞬間、この体に乗り移ったからだと思う……」
はー、そんなもんか。次は何を聞くべきか……はぁ、頭が痛いぜ……
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