1877話 真打登場
書き終わったぞ! 魔力庫の中身が怪しいけどたぶん間違ってない。
「どうぞ。お通りください」
よし!
赤兜がえらくまともになってて気味が悪いな。近衞騎士はどんな教育をしたんだ? どうでもいいけど。
「ピュイピュイ」
そっちだね!
『浮身』
『風操』
ぶっ飛ぶよコーちゃん!
さあどこだ!?
アレクは、カムイはどこにいる?
眼下を見れば冒険者もあちこち動いているし赤兜までいるではないか。たぶん生き残った奴らだろうな。契約魔法でもかけられて反逆できないようにされてると見た。
「ピュイピュイ」
あの建物? 見覚えがあるな。何だっけ?
そうだ! 孤児院だ! 西の孤児院。でもなぜあんな所に? 今さら何が……
「ピュイピュイ」
分かった。あの辺だね!
『水球』
屋根をぶち壊していきなり突入。
あれ? ここって院長室だっけ。
「ピュイピュイ」
あっちの瓦礫をどかすのね。
『浮身』
「ピュイッ」
あっ、コーちゃん! 先に行ったら危な……
え!? 下に隠し通路だと!? エチゴヤの奴らどんだけ作れば気が済むんだよ……
『風操』
『光源』
私も降りよう。
「ガウガウァァー!」
カムイ!? お前天井で何を……ん?
「誰? いい服着てるね。あ、もしかしてジュダの長男スザクか?」
「ふふ、間の抜けたことを言うね。これだから縄文人は。」
あぁ!?
「ピュイピュイ」
嘘だろ……そうなのコーちゃん!?
「てめぇ……ジュダか……」
「そうだよ。いやーせっかく拾った命だから夜までここで身を潜めてようと思ったんだけどね。野良犬ごときに嗅ぎつけられちゃったよ。まっ、おかげでいい拾い物しちゃったけどね。」
よく見れば……アレクが倒れている!? アーニャも一緒に!
「どけガキ! ぶち殺すぞ!」
「君らしくもない。勝手に通ればいいじゃないか。通れるものならね?」
ん? 足が……床に貼り付いてしまってる? カムイが天井に貼り付いてるのはこれか。ちっ、小賢しいんだよ!
『
私は靴越しに足裏から魔法を放つことだってできる。この程度の粘着なんか無駄なんだよ。
「死ねや!」
ここは狭いしアレク達もいるからな。迂闊に魔法が使えないんだよな。不動で殴り殺すのがベストだろう。
「痛いなぁ。子供に何てことするんだい?」
「お前はジュダだろうが! おらぁ!」
この野郎……いい服着てやがると思えば、その下にムラサキメタリックを装備してやがる。私がシャツの下にエルダーエボニーエントの籠手を装備しているようなものか。しかも厚めの盾まで持ってやがる。
だが、構うかよ。盾を持つ手が痺れるまでぶっ叩きまくってやるよ。子供の力としょぼい魔力で防げるもんなら防いでみやがれ。
「そもそもさ、今ごろ来たってもう遅いよ。ほぅら野良犬、お前の名前は今からシロだ。こいつを噛み殺せ。」
『粘水解除』
うおっと……いきなり粘着がなくなったもんだから、たたらを踏んでしまった。
それよりこいつ今何て……
「ガウゥゥ……」
おいカムイ……何やってんだよ……なぜ私をそんな目で睨む……?
「ほぉらシロ。やれよ。噛み殺せ。」
「ガウァアー!」
あぶなっ!?
「カムイ! お前何やってんだよ!」
もし今とっさに身をかがめなかったら……私の首はスッパリと……
くそ……魔力刃を伸ばしやがって……
『解呪』
どうだ!?
「ははは! 無駄無駄! その犬っころに使ったのは洗脳魔法じゃない。改変魔法さ。もう誰にも元に戻すことなんかできないね!」
改変……魔法だと!? ふざけんな!
「てめぇ……よくもカムイを……ぜってぇぶち殺っおわっ!」
くそ! カムイの動きが鋭すぎる! こんなのどうしろってんだよ! ごふっ! 腹に頭突きかよ……痛くはないけど衝撃は凄いな……
カムイのバカ野郎!
『
くそが! ジュダがチクチクと魔法を撃ってきやがる……カムイを巻き込もうが知ったことかって勢いで。
カムイ! いい加減目を覚ませ! お前があんな奴にいいように操られるわけないだろうが!
『風球』
「おっと、さすがにやるね。ワンちゃんが避けたら僕に当たる軌道だね。でもそんなそよ風が効くわけないじゃん。」
うるせぇんだよ。私だってカムイに魔法が当たるなんて思ってねぇよ!
だが……やはり確信したぞ。カムイは完全には改変されてない。ここまで私が隙をさらしているのに、どうにか防げているのはおかしい。本来のカムイなら私の目が追いつかない超スピードで首を噛み切ってもおかしくないのに……
「ピュイピュイ」
え? どうにかしてカムイの動きを止めろ?
無茶言うよなぁコーちゃんは……
『収納』
私の隠れトレードマークでもある拘束隷属の首輪を収納する。つまり、首が完全に無防備となった。そして両手を広げて正面からカムイを待つ。まるでアレクを抱擁する直前のように。
「ガウゥ!」
来た、痛ったぁぁー! くっそ……痛い……が、牙は深くは刺さらない。表皮から数センチ浮かして自動防御を張ることもできる私だ。今回は皮下一センチぐらいのところに張った。致命傷はどうにか免れるとしてもかなり痛い……
こんな痛い思いをしてまでカムイに首を噛ませた理由は……
『拘禁束縛』
私の首を通してカムイの口内に直接魔法をぶち込むためだ。こんな手は普段のカムイが相手なら効かないんだろうけどね。
「ピュイピュイ」
後は任せろって? 頼んだよコーちゃん!
コーちゃんがこう言うならもう大丈夫だ。では私はジュダに集中して……ん?
アーニャ、目覚めたのか? なぜムラサキメタリックを装備している……
「かずまぁ……そこにいたのぉぉ……」
あ、アーニャ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます