1869話 アーニャの乙女心
ここ、どこだろう……
適当に歩いてたらどんどん寂しい場所に来ちゃったよ……これでも首都なんだよね。天都イカルガって。人気もないし……和真ぁ……早く私を見つけてよ……
どんどん不安になってきちゃった……
バンダルゴウなんかだとこんな場所に近付いたらロクなことがないんだよね……戻らなきゃ……
「やあ、お姉さん。そんな鎧を着て何やってるの?」
え……何この子どこから……
「さ、散歩! 散歩してるだけだから!」
「ふーん。散歩なんだ。どこから来たの?」
「ど、どこって……」
あれ? この子なんで私のことをお姉さんって……今私って全身ムラサキメタリックの鎧なのに……寒いから。
声? いや、でも喋る前からお姉さんって呼んだよね?
「当ててみせようか。ローランドでしょ?」
「え……ど、どうして……」
「分かってるよ。名前はアーニャ・カームラ。歳は二十一歳……のはずだけど今の君はえらく若いね。なにがあったのかな?」
え……何……何なのこの子……私たぶん今は十四歳のはずだけど……
「だ、だれ……?」
『武装解除』
「えっ!? よ、鎧が……」
この鎧って持ち主以外の魔法は効かないはずじゃ……こんなにも簡単に……
「これは返してもらうよ。今となっては貴重だからね?」
「だ、誰なの!?」
「くくく、まだ分からないのかい? あんなにたっぷり愛してやったのにさ。体の隅々までじっくりとな。」
「し、知らない知らない! 私はそんな覚えないから!」
私は処女だよ! 和真以外に身体を許すわけない!
「忘れたのなら思い出させてあげるだけさ。さあ、僕の目を見てごらん?」
「だ、誰が! あんたみたいな子どもなんか……に……に……に……に……」
なに……これ……気が遠く……
「くくく、少しは魔力が高くなっているようだね。だが所詮は誤差だな。さあ、アーニャ。僕の名を呼んでみろ。」
「分からない……だれ……」
「何だ? 本当に忘れてるのか。いや、体が若返っていることと関係あるのか……アーニャ、なぜ若返っている?」
「迷宮の神様がやってくれたって聞いた……」
「なるほどな。そういえば魔王君はシューホーを踏破したんだったな。その祝福をお前に使ったってことか。僕のことを覚えてないとすると単に若返っただけじゃなく体の時間が戻ったのか? まあいいや。これを上に着てもらおうか。」
「はい……」
私は……何を……頭が重い……何も考えられない……
「こっちだ。来い。」
「はい……」
…………どこ………………たす…………
かず…………
くっそ……アーニャが見つからない。一体どこに行ったんだよ。道行く人に聞こうにも、さっきからあまり見当たらなくなってきたし。天都がこんな状況だからみんな家に閉じこもっているんだろうな。
これはヤバいな……もしかして何かしらの犯罪に巻き込まれたか? 何人か近衞騎士が歩いているのを見たから治安の面では問題ないんだろうけど……だがそれも表通りに限っての話だ。
こうなったらギルドに行ってみるか。人海戦術で見つけてやる。
到着。誰もいないじゃん……ドロガーやクロミはもう帰ったのか? てっきりそこらで酔い潰れて寝てるもんだと思ったが。
あ、愛想の悪い受付嬢発見。
「ドロガー達が来なかった?」
「冒険者の情報については他言できません」
愛想ないなぁ……
「では仕事の依頼。人探しだ。ハンダビラなら得意だろ?」
「ここはギルドです。そのような闇ギルドとは関係ありません」
建前はいいんだよ。
「方法は任せる。夕方までに見つけてくれたらいい。報酬は相場の五倍出す。捜索に参加した者にも別途報酬を出す。」
「詳しくお聞かせください」
ふう。アーニャの人相に服装、失踪した時刻にスタート地点。伝えられるのはこの程度か。後ろを追いかけて見失ったわけじゃないからな。くっそ……マジでどこまで行ってんだよ。たぶん天都イカルガはバンダルゴウより広いんだぞ……
「頼むぞ。緊急だからな。」
「承知しております」
他にできることは……
宿に帰って援軍を頼むことだな。コーちゃんとカムイに。今思えば始めからカムイを連れて行けばよかったんだよなぁ……すぐに追いつけると思ったけど……
よし、合流した。これで仕切り直しといこう。
私はコーちゃんと、アレクはカムイとペアになって捜索開始だ。若草雲荘を中心にして私は東、アレクは西を。
アレクは自分のせいだと……すっかり気落ちしてしまっている。何としてでも見つけてやらないと……あいつだって子供じゃないんだ。今ごろはきっと頭だって冷えてるはずだし……
よし。まずは景気付けに一発かましておくか。
『アーニャ! どこだ! 返事をしろ!』
建物がビリビリと震えるほどの拡声。天都中に響かせるつもりで声を出したからな。
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