1820話 ビジュアルショックなコート
あー疲れた。魔法を併用しながらどうにか全滅させたぞ。マジで疲れた。こいつら烈士隊って言ったか。めちゃくちゃまともな騎士団じゃん。腕も立つし。全滅するまで立ち向かってくるし連携もよかった。こんな無駄にまともな奴らが残ってたとは……
魔力はまあまあ節約できたけど、かなり体力を使ってしまったな。また酷い筋肉痛が来そうだなぁ……だいぶ体も強くなったと思うんだけどなぁ。
さて、では当初の予定通りジュダの自室を探すとしようか。あーあ。丞相からあれこれ情報を得たかったなぁ……
「ガウガウ」
おおカムイ、その部屋が怪しいのな。
昨日も来た王族の私邸エリア。そこをあれこれ探しているとカムイが教えてくれた。結局一番奥まで来てしまったよ。
鍵は……かかってない。普通に開いた。ふーん、ここがジュダの部屋か。うわぁ……壁一面にびっしりと絵が飾ってある。統一感ないなぁ。高い絵を片っ端から並べたって感じ? うっわ、天井は鏡張りかよ。趣味悪っ。
それ以外は普通かな。普通に高そうな机、座り心地の悪そうな椅子。良さそうな木材使ってんじゃん。没収……する気にはならないな。ジュダのだもんな。
それより服を探さないとな。クローゼットはどこかな。おっ、あれかな。どれどれ……
ふーん。いい生地使ってんじゃん。ジュダのくせに生意気な。結構たくさんあるなぁ。コートだけで何着あるんだよ。魔物革やケイダスコットンだけではなく、私の知らない絹系まであるじゃないか。
「カース、このコート、
「えっ!? そうなの!? なら貰っておこうかな。」
まさか魔導絹布とはな。小さい頃に母上から聞かされた覚えはあるんだよな。原料を育てる段階から魔法を使っているって。詳しい製法なんか知らないけどさ。その値段が青天井ってことぐらいは覚えてるぞ。
ジュダのコートだと思うとキモいけど……おっ、サイズ自動調整が付いてるじゃん。防汚もだろうな。無臭だ。ふーん、悪くないじゃん。ちょっと色がサイケデリックでド派手なのがなぁ……おしゃれな私としてはちょっとなぁ……
あ、でも着心地いいなぁ。それに裏地が黒と緑の市松模様ってのはおしゃれでいいなぁ。
「見たところ……火の魔石を餌にして育つと言われる『
そんな逸品をジュダの野郎は魔力庫にも入れずクローゼットに置いておくとは。
あ、なるほどね。ジュダの魔力では収納したくてもできなかったのか。このコートって一切の魔法を弾くように出来てやがる。刃物を相手にした時はどうか知らないが、私が収納しようとしてもビクともしないでやんの。これは高性能な方のムラサキメタリックより魔力耐性が高いようだな。もしかしてドラゴンブレスも防げたりする?
何にしてもコートのない私にとってはちょうどいい拾い物だったな。
「うーん……これほどの品だからカースに相応しいのは間違いないとは思うんだけど……」
「ん? アレクどうかした?」
珍しく難しい顔をして唸っている。
「カースに似合うかと言われると微妙だわ。というよりこのコートが似合う人なんているのかしら?」
「あはは、そりゃそうだね。無駄にケバケバしいしド派手だもんね。案外父上なら似合うかもね。」
「うふふ、それもそうかもね。お土産にでもする?」
「それもいいね。とりあえずしばらく着ておくよ。気に入ったらこのまま僕の物にするし。」
「カースが気に入ったのならそれでいいわ。」
それにしてもこのデザインはどう表現したらいいんだ? 極彩色? サイケデリックでバイオレンスな色使い。こりゃあビジュアルショックだな。
さて、そろそろいいかな。
コーちゃん、カムイ。ジュダの匂いや気配は分かりそう? 服に匂いはなくとも部屋自体に少しは付いてるだろうからね。
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
ほうほう。コーちゃんは何となくいそうな気がする方向が分かった? カムイは近くに行けばきっと分かると。てことは二人揃えば完璧ってことじゃん。
「アレク。どうやらジュダを追い詰めることができそうだよ。」
「本当!? やったわね。これで忌々しいイカルガともおさらばかしら。」
「そうだね。あまりのんびりと街歩きなんかできなかったしね。せっかく物見遊山に来たのにね。」
「じゃあ今夜のところは帰る? カースは魔力があまり残ってないんでしょう?」
「うん。それがいいね。キサダーニに預けた第四番頭も気になるしね。」
「カースはあれこれ気にしすぎよ。邪魔になる前にさっさと殺した方がいいわね。古い言葉で断捨離って言うそうじゃない?」
断捨離ってそんな意味だっけ?
「はは、そうだね。第四番頭はもう少し使い道があるしね。それに陛下に生きたまま引き渡す予定だし。あいつたぶん死ぬより酷い目に遭うよ。」
「カースがそれでいいならいいけど。色々抱え込んでるのが心配なの。イカルガを丸ごと更地にしたっていいからカースらしくいてね?」
いかんな。アレクに色々と心配をさせてしまったか。なんせここ最近って全然解決してないもんな。こつこつ動いて少しずつ追い詰めているのにさ。いい加減ジュダをぶち殺して終わりにしたい。楽しい物見遊山を再開したいんだよな。
ふーむ。私らしくか……やっぱ魔力のごり押しだろうな。魔力にものを言わせて無理矢理解決。それこそが私らしさだ。風斬の魔法に関しては母上の領域に一歩近付けた気もするが、先は長い。こつこつ行こうではないか。
あ、宿に帰る前にポーションを買いに行こう。さすがに在庫ゼロは危険だからな。
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