1804話 扇動するカース
こんな時間……もうすぐ朝になるかって時間なのにギルドは混雑していた。いや、これは混雑ってより混乱というべきか。
「おお魔王、来たのか。一体何が起こってんだよ……」
キサダーニはすでにギルドに来ていたようだ。
「それを今から話そうと思ってな。ドロガーと一緒に俺の左右を固めておいてくれ。」
助さん格さんのように。そうなるとアレクのポジションは? まあいいや。
『おう野郎ども! 聞けぇ!』
毎度お馴染みの拡声。騒めきを鎮めるにはそれ以上の騒めきがあればいい。
よし。全員がこちらを向いた。
『さっきの大爆発はジュダの仕業だ。お前らだってエチゴヤが魔石爆弾を使うことぐらい知ってんだろ。それの何万倍もヤバいやつだと思えばいい。つまりジュダはエチゴヤと繋がってやがったんだ。天王のくせにな。しかもジュダはイカルガはおろかヒイズルのことを何とも思っちゃいない。飽きたら壊せる玩具程度としかな。お前らそれでいいのか?』
あれ? 返事がないな。驚きすぎて反応ができない感じかな?
「お、おい魔王……それマジなんかよ? 天王陛下はそんなやべぇ魔石爆弾を持ってんのかよ……」
ドロガーがびびってどうするんだよ。
『いいのかって聞いてんだよ! ジュダの機嫌次第で簡単にイカルガは滅びるんだぞ? あいつは天都の民はカスみてぇなゴミ野郎しかいないって言ってたぞ! いいのかよお前ら!」
「なっ、マジでか? あの天王陛下がそんなことを……」
キサダーニも意外と信じやすいタイプなのか? もちろんジュダはそんなこと言ってない。言ってないが、天都の西で魔石爆弾を使ったってことは天都の民のことなんぞ何とも思ってないってことだ。私は間違ったことは言ってない。
『ギルドだっていつでも爆破できるみたいなことを言ってたからな! お前らなんていつでも殺せるんだとよ! 迷宮に潜らせる気もないし治安だって赤兜がいればいい。もう冒険者なんて必要な時代じゃないんだってよ! いいのかお前ら! ここまで言われてよ!』
もちろん言ってないけどね。
「なんだと!? クソが……流れ者の成り上がり者のくせに……調子に乗りやがって! おうお前ら! このままにしておいていいんかよ! 俺ら冒険者が舐められたままでよぉ!」
ドロガーの単純さは好感が持てるね。
「そうだそうだ! ドロガーさんの言う通りだ!」
「くっそぉ! いけ好かない天王だと思ってたけど! まさかそんな男だったとは!」
「こうなったら! ……どうすんだ?」
いいねいいね。私の想定通りに話が転がってきた。
『今が好機だ! 天道宮はボロボロに荒れ果てて! 赤兜や親衛騎士団は壊滅状態! そして当のジュダ本人は東の海上で行方不明だ! 今から天道宮に殴り込んで王妃や王子の身柄を押さえちまえ! 天道魔道士だっていないから気にすることはない! 冒険者を舐めやがった赤兜やジュダに目にもの見せてやれ!』
「おお! やってやる! 俺らの力を見せてやる!」
「くそがあ! 冒険者舐めんじゃねえぞ!」
「天道宮か! 腕がなるぜ!」
「おい魔王……こいつら天道宮に行かせていいんかぁ?」
ドロガーが心配するのも当然だ。
『いいかお前ら! 天道宮に殴り込むのは半分だけだ! メンバーはドロガーが選ぶ! そしてもう半分は海岸に行け! そしてジュダが東からのこのこ帰ってきたらぶち殺してやれや! こっちはキサダーニが仕切る! お前らの男ぉ見せてやれや!』
本当に戻ってくるかどうかは怪しいけどな。あれだけの距離をどうやって戻ってくることやら。普通だと真夜中の海を一人で百キロル近くも移動するって……絶望的な遠さだからな。
「てめぇさっきから何偉そうに仕切ってんだ? おぉ?」
「ドロガーさんを呼び捨てにしてんじゃねぇぞオラぁ!」
「キサダーニさんも呼び捨てにしやがったよなぁコラがきぃ!」
えー……勘弁してくれよ……今そんなこと言ってる場合じゃないだろ。私のこと知らないっての? うっそぉ……
「おいコラァ! 魔王がこう言ってんだぁ! 文句があんなら俺に言えやぁ!」
おおドロガー。頼もしいじゃん。
「やめとけお前ら。こいつは天王よりヤバい。ヤバいが悪い奴じゃねぇ。それより行くぜ。この際だからよ。天王が東から来るってんなら俺らがふん捕まえてやろうじゃねえか。」
おおキサダーニ。いい奴だな。
「一応言っておくが文句があるなら相手してもいいが、明日にしろ。今はそんなことしてる場合じゃない。ちなみに俺もジュダを狙うつもりだからな。」
どうもジュダってしぶとそうな気がするんだよな。私も待ち構える方が無難と見た。
「ちっ、ドロガーさんに感謝しろよ!」
「キサダーニさんにもなあ! ったくなんでこんな奴が……」
「おう行くぜ!」
ふっ。だからドロガーとキサダーニを横に置いて話したんだけどな。ここまで私の想定通り。ふふふ、さて着々とジュダ包囲網ができてるぜ。もうお前に帰ってくる場所はない。
のこのこと帰ってきたところをぶち殺してやるぜ。
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