1803話 治療院のカース

治療院に到着。


「邪魔するぞ。」


「あーもー何ぃ!? 次から次へとさぁー!」


普段だとこんな時間まで開いてないんだろうしね。受付さんも大変だね。


「いや、俺のことは気にしなくていい。」


「カース! お帰りなさい! 無事でよかったわ!」


いきなりアレクのお出迎えだ。待たせてしまったね。抱きついてくれた。暖かいなぁ。


「クロミは大丈夫?」


「ええ。クロミったらある程度治ったら残りは自分でどうにかしちゃったわ。さすがね。今は眠ってるわ。」


「そっか。よかったよ。あ、そうだ。さっきコーちゃんが来なかった?」


「ピュイピュイ」


おおコーちゃん。よかった。知らせてくれた?


「ピュイピュイ」


うんうん。がんばってアレクに伝えたんだね。ありがとね。


「コーちゃんから警告がいったと思うんだけど、この近くに危険な奴がいるみたいなんだよ。それが赤兜なのか誰なのかさっぱり分からないんだよね。奴隷かも知れないし。」


「え、ええ。コーちゃんが何か危ないことがあるから身も守れ、みたいなことを伝えてくれたわ。」


コーちゃんやるなぁ。大抵の質問にはイエス・ノーで答えることができるコーちゃんだもんな。


「さっき西の方で大爆発が起きたのは知ってるよね。あれってジュダの魔石爆弾なんだよ。それが、この近くで起きそうなんだ。何とかしないと……」


「さっきのあれが!? 私てっきりカースの仕業かと思ったのに。ついにジュダにトドメを刺したのかなって。それなのに全然帰ってこないから少し心配してたんだから。」


「いやーごめんごめん。で、その魔石爆弾って誰かの魔力庫に入ってるみたいなんだ。魔力庫から出して一秒後に大爆発って感じかな。なもんだからよっぽど警戒してないと即死なんだよね。」


「なんてこと……そんなの一体どうすれば……」


「とりあえずジュダが指令しなければ大丈夫みたいなんだよ。そこでジュダ対策なんだけど、全員でギルドに行こうか。せっかくだから天都の者にも事情を教えてやろうと思うんだよね。」


この国のことはこの国の者が守れって話だしね。

えーっとカムイ、いるよな?


「ガウガウ」


おっ、いたいた。お前はクロミを頼むよ。見ててやってくれ。


「ガウガウ」


これでよし。あとは……


「ドロガーもいる?」


「ええ。クロミのそばにいるわ。」


そうなると残る問題は……


「カース……私は?」


「アーニャはねぇ……」


どうしよう……

ムラサキメタリックを纏ったアーニャなら魔石爆弾の大爆発でも生き残れそうだ。でも、さすがにそろそろ鎧を脱がせてやらないと体だって限界だろうし……くそ重い鎧を着たままずっと座ってるのって相当きついよな……よし。


「いったん鎧を脱ごうか。で、クロミが目覚めるまでカムイと一緒に見ててよ。クロミが起きたら再び鎧を纏ってもらうってのはどうかな?」


「それでお願い……もう体中が痛くて死にそうなんだよね……」


「オッケー。」


このタイミングで脱ぐのは危ない気もするが、アーニャの体が限界なのも本当だもんな。




ふぅ。フルプレートって着脱が本当に大変なんだよな……換装の魔法一発で解決できないってのは厄介だわ。


『浄化』


「はあぁぁぁ……スッキリしたぁぁぁ……ごめんねカース。大変な時なのに。あぁーっ、ががっ腰が痛いよぉ……」


「気にしなくていいさ。じゃあカムイと一緒にクロミを頼むよ。あ、ついでにドロガー呼んで。」


「うん。カースも無事でね?」


そう言ってアーニャとカムイは奥へと向かった。ギルドに行くならドロガーの威光が必要だからな。




「おう、やっと来たかよ。あれからどうなった?」


「待たせたか。それを話そうと思ってな。ギルドに行くぜ。お前らの国の危機だからさ。」


「はぁ? ヒイズルの危機? なんだそりゃ? まさか魔王……おめぇヒイズルを焼き尽くす気かぁ!?」


「バカ言うな。俺がそんなことするわけないだろ。いいから行くぜ。ジュダはやべぇ奴だったわ。」


「魔王がやべぇって言うほどかよ……」


カムイとアーニャ、そしてクロミを除く全員でギルドに行く。ちなみにテンポもしれっと合流してきた。元気になってよかったじゃないか。


さて、冒険者どもやギルドは動くだろうか……

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