1805話 、自然破壊するカース

いやー予想以上に上手くいったな。これっておそらく私の話術がよかったんじゃなくて、元々ジュダの野郎が嫌われてたからだろうな。赤兜しか迷宮に潜れないようにしたりとかさ。すでに反乱だって三回起きてるって話だし、今回ので事実上四回目の反乱かな。きっちりとどめを刺してやるぜ。


さて、私達は天都の東にある海岸にやってきた。東の彼方、海の向こうはほんのりと明るくなってきている。日の出までもう一、二時間てとこか。これはいい時に来たもんだ。のこのこと飛んできたら目立つことこの上ない。


ここに来るまでにキサダーニにはあったことを説明しておいた。だからジュダが東から現れる可能性が高いことを含めて。


「ところでここから東側って島とかあるのか?」


「そりゃあるんじゃないか? よくは知らんが。」


私が帰ってくる時には見当たらなかったが、島なんていくらあってもおかしくない。そっちも警戒しておかないとまずいな……


「じゃあここは任せた。海から現れるって場合もあるだろうから、しっかり見張ってくれよ?」


「当たり前だ。天王をぶっ殺せる日が来るとはな……こんな機会もうないだろう。ずっとぶち殺してやりたいと思ってたが……お前には感謝してるぞ?」


「ははっ、なんだそりゃ。まあいいや。俺は島を確認に行くから。」


「ああ。頼んだぞ。」


『浮身』

『風操』


アレクとコーちゃんも一緒だ。鉄ボードに乗ってゴーゴー。


さて、私が帰ってきたのは北からだったから……南を中心に探してみるか。空中にいるところを発見できれば最高なんだが……いや、次に至近距離であの爆発をくらったら終わりだな。近寄るとまずいか。

つーかあの野郎……あれほどの爆発の中で本当に生きてるのか?

うーん、そりゃあ生きてるよなぁ……話した感じあいつの性格だと楽勝で生き残れるからやったって気がする。何と言うか自分以外の人間を原始人だと見下してたし、世の中舐めてる感があるよな。それだけに自分だけは絶対に生き残れる算段はつけてるはずなんだよなぁ……


魔石爆弾なんだからあの爆発は魔力の暴発とでもいうべきだろうか。もしそうだとするなら私の自動防御で防げたのも納得だ。魔力由来の攻撃にはほぼ無敵なんだからな。その代わり消耗も激しいけどさ。

そうなると、ジュダが平気で使ったことにも納得はいくんだよな……ムラサキメタリックで全身を固めてるんだから魔力由来の攻撃なんか少しも通さないってことになる。

でもなぁ……いくら魔力由来でも高熱は高熱だし爆発は爆発だもんなぁ。完全に無効になんてできるわけがない。だいたい魔法ってのは魔力を燃料として色んな現象を引き起こしてるだけなんだからさ。

くっそ、考えてもさっぱり分からん。ジュダは無傷で生きていると仮定しておいた方が無難だろうな。その場合、私が使った乾燥によるダメージはもう回復しているだろう。しかし微毒の方はそうはいかないはずだ。

神殺しの猛毒ですら解毒できるようになった私だ。そんな私が使う『微毒』の魔法はもう完全に名前詐欺だ。本来なら軽い吐き気とか下痢とかで済むのだが、とてもじゃないがその程度で終わるはずがない。天王ともなると高級解毒ポーションぐらい持ってるだろうが、そう簡単に抜けるもんじゃない。


「という感じのことが起こったんだよね。やっぱジュダって生き残ってると思う?」


「さっぱり分からないわね……と言うかそれだけの爆発を至近距離で受けたカースの方が心配だわ。本当にどこにも怪我してないのよね?」


「もちろんだよ。魔力はごっそり減っちゃったけどね。だから次はもうジュダを見つけた時点で殺そうね。」


「そうね。危険すぎるものね。でも殺したら魔力庫の中身が外に出るのよね? いいのかしら?」


よくはないんだけどなぁ……


「大丈夫だよ。僕に考えがあるから。」


上手くいくかどうかはタイミング次第なんだけどね。一秒ほど余裕があれば間に合うが……


「カースがそう言うなら問題ないわね。頼りにしてるわ。あっ、島があるわよ。」


アレクには『遠見』を使ってもらってるからな。


「おっ、ありがとね。よし行くよ。」




島まで近寄ったら、降りることなく……


『燎原の火』


悪いな。希少な植物とか生えてるのかも知れないが丸焼きだ。


ふむ、いないな。


『降り注ぐ氷塊』


もしかしたら鳥たちにとっても貴重な陸地なのかも知れないが潰させてもらう。直径二百メイル程度の小島だったが、海の藻屑と消えてくれ。では次を探そう。


「さすがカースね。容赦なくて素敵だわ。」


「ありがと。さすがにいちいち捜索なんかしてられないからね。」


ちなみに無関係な一般人がいたらまずいから事前に魔力探査を使ったのだが反応はなかった。遠慮なくやれると言うものだ。

もっともジュダがムラサキメタリックを纏っていれば反応がないのも当然ではあるが。その場合、島ごと丸焼きにしても生き残るだろうし。だから海に沈んでもらう必要があるのだ。


つーか燃やす必要なかったな。いきなり降り注ぐ氷塊でよかったわ。次からそうしよう。




結局三つほど島を潰したがジュダは見つからなかった。別ルートで帰ったか、それともまだ帰ってないか……あいつがどの程度の速度で飛べるのかは分からないが、のろのろ飛んだとしてもそろそろ見えてもいいはずなんだけどなぁ。

仕方ない。明るくなってきたことだし一度海岸に戻ってみるか……それにしても眠いなぁ……




むっ?

あれは赤兜!? キサダーニ達と戦闘が始まってやがる。まだあんなに残党がいたのか。こんな朝早くからご苦労なことだ。

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