1801話 炸裂
フランソワーズ・ド・バルテレモン……
クタナツ初等学校の同級生だ。私の中ではバルテレモンちゃんって呼んでたんだよな。そして、いつの間にかいなくなってた。そのあたりのことは思い出せないが……確か上級貴族だったな。親戚が多いって父上は言ってたような。
フランティア出身で私と同年代、金髪の女の子……言われてみれば確かにその通りだ……
なぜ気付かなかったんだ。いや、そりゃあすっかり忘れてたからだけどさ。
「なぜあいつほどの上級貴族がクソみたいな教団にいる……」
「そんなの知らないよ。あの子って教団の中では比較的まともだったから利用しただけだしね。ああそうだ。インテリが拗らせて宗教にハマるってよくあることなんじゃないの? 彼女の場合も案外そのパターンかもね? とてもインテリとは思えないけどさ?」
「バルテレモンは教団の黒幕や狙いを知ってて利用してたのか……」
「だから知らないって。黒幕? 何も考えてないけど魔力が超ヤバいのがいるとか言ってたかな。でも逆らわなければ安全とかってさ。君は知ってるの? その黒幕とやらをさ。」
なるほど。エルフだと気付いてないのか。黒幕エルフもバルテレモンを含む幹部も……どっちもどっちか。
「知ってる。俺が殺したからな。だがそんなことはどうでもいい。あの教団にお前が、ヒイズルが関わってたことが……たった今確定した。一応聞いておくが、ローランドまで頭を下げに来る気はあるか?」
「あはっ、なぜだい? なぜ僕がそんな面倒なことを? それに君らしくないことを言うね。自分が殺すとか言えばいいのに。もしかしてびびってんの?」
こいつってやたら挑発が多いよなぁ。そんなのが私に効くとでも思ってんだろうか。私らしくない? 知るかよそんなの。
「いや、別にどうでもいい。聞いただけだからな。さて、そろそろいいだろう。時間稼ぎも終わりにしようぜ。これだけ沖に来ればどんだけ大爆発が起きても関係ないだろうぜ。最後のタイマンといこうか?」
感覚ではイカルガから東に百キロルってとこか。どっさり上空に登った後はひたすら東に動いてやったからな。ジュダの野郎が暗視を使った気配はなかった。横の動きに気付いてたんだかなかったんだか。おまけに、私が使った他の魔法にも……
「これだけ離れたら大丈夫だと思うかい? それにしてもタイマンって……ぷぷっ、君いつの人間だい? まあいいや。一対一なら勝てると思ってるみたいだし。相手してあげるよ。いつでもかかっ『浮身解除』『暗視』『榴弾』
死ね。他に聞いてないことがたくさんありそうな気もするが、もうどうでもいい。死ね。
ちっ、とっさにムラサキメタリックの鎧に換装しやがったか。それならそれで海に落ちるだけだ。溺れて死……なんだと!?
「あはははははっ! 不思議かい! 不思議だろうねぇ! 魔力とめちゃくちゃ相性の悪いムラサキメタリックなのにさ! どうして僕が浮いていられると思う!? 分からないだろ? 分からないよねぇ! あはははは! というわけで死ぬのは君さ! さようなら魔王くん!」
あれは!
『鉄壁』
『水壁』
『自動防御魔力全開』
とにかく、離れ……眩しっ……
「ふふふ……ふふ……あははははははははは! 殺った! やったぞ! ふはははは! ローランドの魔王を! 僕が仕留めたんだ! なーにが魔王だ! ざまぁないね! 魔力が高いだけのガキが! 調子に乗るからそうなるんだ! ぎゃははははははぁ!」
真冬の夜空が一瞬にして真夏になる以上の灼熱の光。それほどの熱量を浴びてもジュダは微動だにしていない。悠然と上空に浮いていた。
一方カースの姿は見えない。ジュダがぽいっと放った魔石爆弾を見て、とっさに防御を固めたのだが……その防御ごと吹き飛ばされたらしい。いや、下手をすれば防御を貫かれ焼き尽くされている可能性もある。至近距離で核並みの爆発を受けたのだから。
だが……核ほどの威力がある魔石爆弾が至近距離で爆発しても……平然としているジュダ。
『はは、僕が死ぬわけないじゃん』と放言していたのはこの状況を想定していたからだろうか。
「はは! はははは! ははっおごっ……ごげえぇぇぇ……はあっ……げほっ……うえっ……ぐううっくぅぅっっ……」
兜をとったジュダは激しく嘔吐していた。その吐瀉物には血すら混じっている。
「ぐふっ、くそ……小賢しいガキが……よくもぉ、この僕にこんなことを……ぷはっ!」
ジュダは魔力庫より何かを取り出して一気に飲み込んだ。ポーションか何かなのだろう。
「がふっ……おごぉぉ……くそっ……どうなってんだ……ぐぼっおおお……」
どうやらジュダは吐き気が止まらないらしい。先ほどまではカースと正対していたことで張り詰めていた神経が……一気に解放された所為もあるのだろうか。
「ぐふっ……くそが……ここはどこなんだよ……星の位置からすると……はあぁ!? イカルガから東に百五十キロだと!? ふざけんな! あのガキぃぃ……ただでは死なんつもりかよ……上等だ……やってやるよ……この程度の距離……帰り着いてやるよ……」
それからジュダは換装を使いムラサキメタリックの代わりに厚手のコートを身に付けた。そしてふわりふわりと空に浮いたまま、天都イカルガを目指して西へと向かう。
時折り星空を眺めては方位の確認をしつつ、魔力ポーションを飲みつつ。どうやら羅針盤を持っていないらしい。
「くそが……くそガキが……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます