1800話 教団の聖女フラン
質問は再び私の番となった。もう少しこの茶番に付き合うのもいいだろう。ジュダを甘く見ているわけではないが、それだけにきっちりと仕留められる準備を整えておかないとな。たぶんこいつも同じことを考えてるんだろうけどさ。
「聖女フランってのは何者だ? なぜヒイズルにまでやって来てんだ?」
「むしろなぜ君が知らないんだい? 彼女はローランド人だよ? しかも君と同じ……えーっとフランティアって言ったかな。あそこら辺で育ったそうだよ?」
「知るわけねぇだろ。フランティアだけでもヒイズルより広いんだからよ。そんなことより、なぜヒイズルに来たかって聞いてんだが? つまりお前らと教団は関係があったってことだな?」
教団、ヤコビニ派、エチゴヤ。そしてジュダか。クソどもの集まりじゃないかよ……
「聖女は逃げてきたんじゃないの? ローランドのどこにも居場所がなくなっただろうからね。教団狩りと闇ギルド狩りはそりゃあもう激しかったそうだからねー。」
「逃げてきた聖女にまだ価値なんかあんのか? 教団がなけりゃただ一人の生き残りなんかに価値なんかないだろ?」
「さあどうかな。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずって言うじゃん? 僕は優しいからね。あ、でもそんな聖女も今は北の迷宮に行ってるそうだよ。あんな寒いところによく行くよねー。」
なるほどな……
「つまり当時はまだ利用価値があったが、もうないってことか。だから適当に放逐したってとこだな。じゃあ何の利用価値があったかって話になるな? 聖女っつっても知識も魔力もたかが知れてんだろ。言えよ。どう利用した?」
どう考えても利用価値なんか……教団にはろくな知識も戦力もない。あの黒幕エルフがいなけりゃ何もできない奴らだ。
ん? 知識? 何か……何か思い出しそうだ……
そもそもあの時って……私は何がきっかけで教団を知ったんだっけ……
「せっかくだ。当ててごらんよ? 確かに聖女には使い道があったよ。それもかなりね。いやーまさかローランドの原始人にあんな事ができるなんて想像もしてなかったよ。」
こいつ……さっきからこの世界の人間を原始人だと……どんだけ見下してやがる……まあいいさ。どうせこいつは死ぬしかないんだからな。せいぜい惨たらしく殺してやる……
で、教団……知識……聖女……
教団と私のファーストコンタクトは確か……王都の学校だったか。サンドラちゃんに誘われて何かの講義を……
「
あんな腐れ宗教組織が先端理論を欲しがるなんておかしいと思ったら! エルフどもだって興味を示していない! なのに……!
「お前か! お前があれを手に入れるために! 教団を動かしてやがったのか! 聖女を傀儡にでもしてなぁ!」
「おっ、せいかーい。全員じゃないけど数人動かせば十分さ。君ってバカかと思えば意外に鋭いところもあるんだね。じゃあ僕がなぜあれを欲しがったか分かる?」
「それこそ核だろうが! あの理論を突き詰めれば原子核や中性子だって見えるようになるだろ! お前マジで核を作るつもりだったのか……」
嘘だろ……
いくら原子を見切れるようなったって……核の技術ってそんな程度じゃ無理だろ……私にはさっぱり分からないが反応のスピードとかも関係してるんだよな?
「おっ、またまたせいかーい。でもウランは見つかんないしさ。どうにもならないかなーと思ってたところに聖女フランが色んなお土産をくれたのさ。」
「土産だと?」
「魔石さ。ローランドにはヒイズルにはいないような巨大な魔物が多いからね。そりゃあ強力な魔石爆弾ができるってわけさ。もちろん僕の技術があってこその話だけどね。いやー極小粒元体理論ってすごいね。肉眼で原子を見切るって正気じゃないよ。」
まさか……
「お前が魔力庫に持ってるって言う最高品質の魔石爆弾の原料を言ってみろ。いや、当ててやろうか。」
「へぇ? 面白そうだね。じゃあ当てたら次の質問には本当のことを答えてあげるよ。外したら君が本当のことを答えるんだよ?」
「クリムゾンドラゴンだ。ドラゴンにしてはそこまで大きくないけどな。だが、ドラゴンの魔石爆弾となるとどれだけヤバい威力なのか想像もつかんな。」
ゴブリンの魔石爆弾でも五、六人は軽く吹っ飛ぶそうだからな。
「マジで? えっ、なんでなんで? なんで分かったの!? 僕はドラゴンとしか聞いてないのに。なんでクリムゾンドラゴンだなんて分かるんだい?」
「その魔石の持ち主が俺だからだ。色々あって盗まれたんだよ。それがまさか海を越えてこんな島国にまで来てるとはな。てっきりどこかの貴族が死蔵してるもんかと思ったが。」
一体どんなルートを辿ったらそうなるんだか……
「へー。そんな
どうせ洗いざらい吐かせるつもりだから関係ないと言えばないが……
気になるのは聖女フランか……
「聖女フランのフルネームを言え。そこまで手足のように使ってやがったんだ。知ってんだろ?」
「もちろん知ってるよ。聖女と君の関係もね。」
「は? 俺と聖女の関係? 何言ってんだ?」
面識すらねぇよ。
「ふふっ、本当に知らないんだね。仕方ないなぁ。教えてあげるよ。聖女フランの本名は……」
溜めんじゃねぇよ。さっさと言え。
「フランソワーズ・ド・バルテレモン。君の同級生なんだろ?」
はぁ!?
なんだと!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます