1642話 真打登場
都合三度、レッドキャップゴブリンキングを倒したのだが……その度に金剛石の原石は小さくなっていった。
三度目なんか私の小指の先程度ときたもんだ。セコい神だわ。悪いがこれはクロミ行き。順番的にね。
「さて、行こうか。しっかり休憩できたよな?」
「おう。つーか魔王はいいのかよ? こんな階層であんだけ魔法使いまくってよ? 魔力は大丈夫なんか?」
「ああ、問題ない。」
無茶な魔法さえ使わなければさほど消費するものでもないからな。紫弾とか暗黒大穴とか。
「カースだもの!」
おっ、ドヤ顔アレクだ。かーわいい。
「さて、今度こそ最後と思うからより一層慎重に行くぞ。カムイ、クロミ、頼むぞ?」
「ガウガウ」
「分かってるしー。」
さっきよりゆっくり飛ぶ。私が走るのと同じ程度のスピードで。
「ボス部屋だけど、今度は魔法が使えないことも考えられるから、その時は頼むぞ?」
「ガウガウ」
「任せとけや。」
「ああ……」
「アーニャの面倒は任せて。」
「ウチもー! それにポーションしっかり用意しとくし!」
これでよし。
パターン的にはアンデッドの大物が出てきそうなんだが、それならばこっちも魔法が使えるから問題はない。
そうでないパターン……ブラッディオーガロードなんかが現れて、なおかつ魔法が使えない場合が危ないんだよなぁ……たぶんアーニャは私が危うく見えると助けようとして妙な動きをするんだろうな。ここまでは何の動きもなく大人しくしてたし。
結局ボス部屋では縛っておくべきかの問題をここまで後回しにしてしまったが、私の結論は縛らない、だ。何が起こるか分からないボス部屋なんだから、やはり自分の足で動ける可能性を奪うのは危険と見た。
私の判断だから当てにはならないが、これはアーニャの身の安全についてだからな。私の責任で判断するべきだろう。
結局、普通にボス部屋まで着いてしまった。
「じゃあ行くぞ。魔法が使えなかった時の備えを頼むぞ。」
「おうよ。任せとけや。」
「当たり前だしー。」
「ガウガウ」
アレクはそっと私の背中を撫でてくれた。
アーニャは左腕にしがみ付いたままだったのでアレクに剥がされた。
そして私は扉を開き、中に入った。
当たり前のようだが中の広さは変わらない。無駄に広い。
ボスは……まだかよ。さっさと出てこいよ。かと思えば出てきたな。なんだ? 豪勢な杖を持ってやがる……魔法使いか?
「てめぇ! クルマキかぁ!?」
ん? ドロガー知ってるのか?
『腐食』
いきなり何か魔法を使ってきやがった。そんなの効くかよ。
『狙撃』
『腐敗』
は? 何だそれ!? 何が起きたかは分からんが、何かがキモい……
なっ!? 私のライフル弾が防がれた!?
「クルマキぃ! てめぇ何してんだぁ! ハルナぁ泣かせてんじゃねぇぞ!」
「ド、ロガ、アアー……」
『腐敗』
「バカ! 引っ込んでろドロガー!」
『水壁』
何をやったのかはよく分からんが、どうにか防ぎきれた。代わりに私の水壁がグズグズに腐ってる……くっさ! 何だそれ!?
『水壁解除』
『火球』
意味が分からんから燃えてしまえ。
『腐肉壁』
なんだそりゃ!? クソきもい肉の壁で私の火を防ぎやがった!? 舐めんなよ!
『魔弾』
ふん。額をぶち抜いた。
「ド、ロ、ロガァァ……」
ちっ、まだ生きてやがる。やっぱアンデッドか。
「クルマキぃ! お、お前お前……」
何を人情ドラマやってんだよ。そいつが何者かは知らんが、どうせボスなんだからな? 気にせずやろう。サクッとね。
『魔弾』
はぁ!? 嘘だろ!?
なんだそりゃ? ミスリル弾まで腐っただと!? ふざけんな! そんなことできるもんか!?
だったら……!
『徹甲魔弾』
頭をぶち抜いてから……
『業火球』
ふぅ。終わった。さすがにこのサイズまでは腐らなかったか。
それにしても何だったんだ今の奴は?
「ドロガー、今の奴を知ってんのか?」
「ああ……昔のパーティーでな……一番魔力が高かった奴だ……」
……と言われても意味が分からん。ドロガーの昔のパーティー? つまり『ブラッディロワイヤル』の元メンバーってことか?
なぜ元メンバーがボスになってんだ? さっぱり分からん……
そういや四十九階のボスも体はブラッディロワイヤルのリーダーだと言ってたな。つまりこの迷宮で死んだ強い奴はボスにされてしまうのか? えげつない迷宮だなぁ……
「さっきのはあいつの魔法か? 鉄まで腐らされたが。」
「いや、確かにあいつは腐敗の魔法を使えたけどよぉ……だからって魔王の魔法まで腐らせるほどの効力はなかったはずだぜ……」
「半分はレブナントの力ね。宿主の体だけでなく能力まで利用できるみたいね。それも威力を上げて。」
なるほどね。それはそうと……
「まだ終わってないかな。下がっててね。」
「ええ、しっかりね。」
まだ落とし物が現れてないんだもんな。
むっ……来たか……上から魔力を感じる。なんとも禍々しい魔力だな。
ほーぉ。いかにも魔法使いって格好してやがる。黒いローブに鍔広の三角帽子。だがその顔はドクロ……
もしや、リッチー……か?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます