1641話 五十階のボス達
なにこれ……ボスを倒しても終わりじゃないのか?
「これってさぁ、さっき見た五十階の入り口と同じだよな?」
「ええ、同じね。道幅も、天井の高さも。もちろん壁の色もね。」
アレクが言うなら間違いない。
「ガウガウ」
妙な気配が全然ないところまで同じなのね……
「みんな乗って。」
それなら行くしかないだろ。かっ飛んでやるぜ。慎重に……
それでも二十分とかからずに、またボス部屋に着いた。まさかこれ……ループ?
「どうすんだ魔王? 休憩か?」
なんだかドロガーのセリフまでさっきと同じじゃない?
「いや、行く。例によって俺がやるからみんなは端に寄っててくれ。」
私もさっきこんなことを言わなかったっけ?
「こいつぁ楽でいいや。」
さて、行くぜ。
中に入ってみると、広さはさっきと同じ。百メイル四方と見た。そして扉が閉まると、ボスが姿を見せた。
「あれ? グランオーガメイジだしー。おっきーね。」
レッドキャップゴブリンではない。つまりループではないってことか。ひと安心。
『魔弾』
本当は狙撃で倒したかったが手間を惜しんでしまったよ。オーガの頭部は普通のライフル弾ではおいそれと貫通できないからな。
落とし物は……杖か。魔法使いにとっては良さそうだが、一応拾っておくかな。
「さあ、次行こうか。」
入り口と反対側の扉が開いた。その先には、やはりと言うべきか長くまっすぐな通路が見えた。
「こりゃあどうなってんだぁ?」
「行くしかないしー。」
「私、分かったかも……次のボスがもしデュラハンロードなら……」
さすがアレク。冴えてるね。
で、デュラハンロード? 戦った覚えはあるが……
「どんな奴だったっけ?」
「ミスリルの鎧を纏っていたわ。三十階のボスよ。カースが金操で兜を剥ぎ取ってから燃やした相手ね。」
「あ!」
言われて気付いたぞ。レッドキャップゴブリンは十階のボス。グランオーガメイジは二十階のボスだ。ならば次がもしデュラハンロードなら、アレクの考えが正しいことになる。なるほどね……いわゆるボスラッシュってやつか。だがラッシュと言うにはヌルいな。間が長いせいで簡単に回復できてしまう。
やはり最終階は難易度が低い設定なのだろうか。
それから、やはり二十分とかからずボス部屋前に着いた。休憩なしでいきなり中へ。
広さはさっきと同じ。百メイル四方だろうな。
反対側の扉から現れたのはアレクの予想通り、デュラハンロードだった。
記憶は曖昧だが三十階で見たやつより一回り大きい気がする……が、関係ないね。
『金操』
ボスの左手に乗っている頭部から兜を脱がせる。と、同時に『業火球』
頭部を焼くだけにしては過剰だが、まあサービスみたいなものだ。
終わりだ。落とし物は……おっ、
それにしてもミスリルの鎧を纏ってるくせにミスリルを落とさないとは、意味が分からんな。
「ひゅーう。やっぱ瞬殺かよ。俺ぁ普通のデュラハンにもあんだけ苦労したってのによぉ。」
「まあ、相性もあるからな。さて、次行くぞ。」
「カース大丈夫? 疲れてない?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとね。じゃあ次のボスを倒したら休憩にしようか。どうやらアレクの考えが正しいみたいだしね。」
さすがアレクだ。
「てことはー? 次のボスはー、ええーっとぉー……何だっけー?」
「レッドキャップゴブリンの大群とレッドキャップゴブリンキングだぜ。お前と狼ちゃんでやったじゃねぇか。」
「ガウガウ」
あーそうだっけ。四十階のボスってカムイたち三人が倒したんだったか。
ならば次も敵ではないな。さっさと行こう。
やはり二十分足らずで到着。このままボス部屋へ。やはり広さはさっきと同じ。百メイル四方ってとこか。思えば無駄に広いよなぁ。
おっ、本当だ。レッドキャップゴブリンどもがわらわらと現れた。軽く百は超えてるな。こいつらってまともに戦ったら厄介なんだよなぁ。一匹一匹が力強い上に牙や爪も不潔で鋭いときたもんだ。
『燎原の火』
まとめて燃やすのが一番だ。こんな密室で火の魔法を使っても問題ないのは迷宮の数少ない利点かもね。
『ゲギャギャギャギャギギギィィィーーー!』
おっ、本当のボスが現れた。魔境でも滅多に出会えない最上級ゴブリン、レッドキャップゴブリンキングか。せっかくの出会いだが悪いな。
『榴弾』
『魔弾』
終わった。生意気に榴弾では表面的な傷しか付けられなかった。だから痛みで動きが止まっている間にミスリルのライフル弾を額にぶち込んだ。さすがにキングと呼ばれるだけあるな。
さてさて落とし物は……ごつごつした小石。透明できれいじゃん。私の人差し指と親指で作った輪っかサイズ。あ、そうだ。これ金剛石の原石だ。これはラッキー。母上へのお土産にちょうどいいね。いや、きっちりカットしてから渡すべきか……でも母上の好みのカットなんて知らないぞ? それに指輪にするかネックレスにするか、はたまた腕輪? うーん、分からん。原石のまま渡せばいっか。
あ、そうだ。いいことを思いついたぞ。
「ここで休憩しようか。たぶん次で最後だろうからさ。ここでしっかり休んで次に備えようと思う。」
「俺ぁ構わねぇが、いいのか? またボスが現れるぜ?」
「ああ構わん。ここのボスが金剛石を落とすってんならお前らに一人一個ほど渡してやりたくてな。」
「お、俺に金剛石だぁ!? お、俺にぁそんな趣味ねぇぞ!?」
どんな趣味だよ……
「何を勘違いしてるのか分からんが、ここまで俺の遊びに付き合ってくれたんだ。それも命懸けでな。これぐらいの礼はしてもいいだろ?」
ドロガーにはすでに一億ナラー渡したが、それとこれとは別。気持ちの問題だからな。
「そ、そうかよ……そんならありがたく貰っとくけどよぉ……」
「もちろん赤兜にもな。赤兜ってのは役立たずのクズばかりかと思えば、お前みたいに役に立つ奴もいるんだな。見直したぞ。」
「魔王……」
「ニンちゃんウチにはー?」
クロミはもう持ってるだろうが……と、言いたいところだが感謝の気持ちは別だ。
「もちろんクロミにもな。ここまでありがとな。」
「えへへぇー! うんうん!」
「カース、私の分はいいわよ。私はもうすでに最高の贈り物を貰ってるから。」
「うーん……そう? それもそうかな。」
確かにアレクにはダイヤモンドよりアレクサンドライトの方が似合うしね。
よし、それでは久々にボス部屋で稼ぐとするかね。カゲキョー迷宮で何度かやって以来だよな? ここの神には結構ムカついてるし、多少稼がせてもらっても構わんよな?
まあ、私たちが侵入してる側なのは棚に上げるけどさ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます