1639話 カース合流
ぼーっと待ってたらいきなりカムイの魔声が聴こえてきてびっくりしちゃったよ。おそらくボスを倒した合図だろうと思って飛んでいったら、カムイのやつ元気なさそうにとぼとぼと歩いてるじゃん。さては結構無理して魔声を使いやがったな?
話を聞いてみると、心に入り込んで体を乗っ取る厄介な魔物を自分の中に呼び込んでから飲み殺したってんだから大したもんだ。
つーか飲み殺すって何だよ……
そこから考えるとこの通路の罠はパーティー内で一番強い者をはじくのではなく、ある一定以上の魔力を持つ者を排除する目的ではないだろうか?
その手の魔物ならばなるべく強い者の体を乗っ取りたいはずだ。だが、その相手があまりにも強い魔力を持っていたなら容易にはいかないから。母上だって似たような禁術を使えるそうだが制御が難しいって言ってたもんな。
効率がいいのか悪いのか、よく分からん罠だなぁ……
さて、みんなの様子はどうかな?
おっ、アレクとクロミが何かしているな。ドロガーは寝てるのか? いい気なもんだ。
「お待たせ。ボスは強かった?」
「カース!」
「ニンちゃん!」
アレクは私に飛びついてきたがクロミはその場から動かない。よく見たら右手がドロガーの腹に入ってるし。治癒中かな?
「ドロガーはどうしたの?」
「そ、それがね……」
アレクにしては言いにくそうだ。
「んー……ウチが刺しちゃった。あのナイフで。」
クロミが指差す先に落ちているナイフ。見覚えがないな。
それよりもなぜ……? あ、そうか。クロミも乗り移られてたんだっけな。それでまんまとやられたってわけか。つまりクロミとドロガーの落ち度は半々ぐらいだな。もしアレクを刺してたらクロミは死刑だったかも知れないが、まあそれは言うまい。
「ちょうどいいからニンちゃんさー。ヨッちゃんに解毒をお願ーい。ウチのあれってヤバぁーい毒が塗ってあんだよねー。」
「分かった。」
クロミのナイフだったのか。そりゃ見覚えがないわな。
『解毒』
「ありがとー。あーよかった。これでしっかり治せるしー。」
『臓腑修癒』
「はぁー……しんどぉー……金ちゃんたら酷いよぉー。もっと優しく起こして欲しかったしー。あー……頭痛ぁーい……」
「悪かったわね。命がかかってて余裕がなかったのよ。」
「分かってるしー。ウチがレブナントに一撃くらったせいだしー。」
「そうね。もっとも、立ち位置の関係で先にクロミに当たっただけの話。私が避けられたのは半分運ね。」
カムイの話と合わせて、だいたい状況が見えてきた。ボスはレブナントだったのか。
アンデッドはアンデッドだけどゾンビとは知力も体力も大違い。しかも強い者から強い者へ体の乗っ取りを続けることもあるとか。はたまた英雄と言われるほどの強者が死して放置された場合に成ることもある……らしい。そんなこともあるからローランド王国では火葬が一般的なんだよなぁ。ただのアンデッドなら楽勝なんだがレブナントなはぁ……いや、よく勝ったよな。カムイの大金星か。普通わざわざ乗り移らせてから始末しようなんて考えないよな。本人の体ごと焼き捨てるしかない。
つまりカムイはクロミを助けようとして体を張ったわけだな。偉いやつだ。後で手洗いフルコースだな。
『
「うっ……あっおぉ……」
「ヨッちゃんおーはよ。元気ぃー?」
おっ、起きたか。今のクロミの魔法は知らないやつだな。アレクの『覚醒』よりだいぶ優しく感じたが。まあ、アレクのは無理矢理叩き起こすやつだもんな。
「はっ!? く、クロミ!? お、お前ホントにクロミかぁ!?」
「ドロガー、クロミの目を見てご覧なさい。」
「目……あ、きれー……クロミかぁ!」
「そうだしー。あ、ちょっと! そんなとこ触ったら殺す……今だけ勘弁するし……」
「うおおおーー! クロミ! クロミぃぃーー!」
あらら。ドロガーったら抱きついてクロミの胸に顔を埋めちゃってるよ。役得か? さすがのクロミもこれは許すしかないよな。自分が殺しかけた相手だもんな。
「それから、あいつはどうするの?」
赤兜だ。部屋の隅で気を失っているようだ。無敵の鎧を装備してても中身は普通だよなぁ。相当強く吹っ飛ばされたってとこか。
「ああ忘れてたわ。私あいつの剣を借りてたの。危うくこれでカムイを斬るところだったわ。カムイったら危ないことをするんだから。」
「ガウガウ」
へぇ……
「勝算はあったらしいよ。所詮はアンデッドだから、だって。」
「そう……私もカムイの言葉が分かれば安心して任せることもできたのに。やっぱりカースがいないと大変だわ……」
「まあまあ。それはもう済んだことだしね。カムイもなるべく伝える努力をしろよ?」
「ガウガウ」
そっちが理解する努力しろ? うーん一理あるな。そこら辺はお互い様だな。そもそもこっちの言うことを理解してくれるだけでかなりのことだもんな。カムイもコーちゃんも偉い偉い。
よし、赤兜も起きたことだし、いよいよ五十階に突入するかな。この階は安全地帯以降が直線だったが、次はどうかな。そんなことよりさっさと安全地帯に行きたいものだ。私は平気だがみんなは相当疲れてるからな。このままじゃあとても五十階の攻略なんて無理だもんな。
そこまではいつものように私が運ぶとしよう。
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