1626話 ブラッディオーガロード第二形態

「あーーっ!」


うお、びっくりした! いきなりクロミが大声を出すから。


「何だよ。」


「ニンちゃん! 魔力! 魔法が使えるし!」


なぬ!?


あ!


本当じゃん! それなら!


『業火球』


よし終わり。全て焼き尽くした。うーんスッキリしたなぁ。


「何だぁ? いきなり使えるようになったんか?」


「そうみたいだな。思うにブラッディオーガって一度殺すとすぐにアンデッドとして蘇るっぽいな。ところがアンデッドって魔力がないとどうにもならないんじゃん? だからこの部屋はそんな仕組みになってるんだろうな。」


意地が悪いわー。肉弾戦メインで戦わせておいて、勝ったと思ったところに即アンデッド化かよ。どうせそのアンデッドもえげつない魔法を使ってくるんだろ? 思えばこのブラッディオーガって最後は首だけになっても襲ってくるよな。灰にしてやったから関係ないけど。いや、灰も残ってないけどさ。


「カース、落ちてたわ。やっぱり火の魔石ね。それもかなり大きいわ。」


「おおー、これはいいね。」


アンデッドでも魔石を落とす時は落とすんだよなぁ。まったく意味が分からんことだらけだわ。


「やれやれだぜなぁ。まあ俺らにしてみれば助かったぜ。おう赤兜ぉ、お前もやるじゃねぇか。」


「ああ……」


一回戦のトドメを刺したのはこいつだもんな。


「よし。さっさと次行くぞ。次の安全地帯に着いたらしばらく休むからな。」


具体的には私の体が回復するまでだ。土木作業でかなり疲れてるのに無茶な動きをさせやがって。


で、その前に全員に『浄化』

はぁスッキリ。臭かったんだよなぁ。




さて、地下四十六階か。今のところ魔力は問題なく廻せるな。先ほどと同じようにカムイは先頭を行ってもらおう。私たちはミスリルボードに乗って後ろからゆっくりと追随する。安全第一だからな。


結局何の問題もなく安全地帯まで到着した。不安がないのが不安な気もするが、まあ気にすまい。あー疲れた……

まずは風呂だ風呂。功労者のカムイをせっせと手洗いしてやらないとな。うん無理。水流もみ洗いで勘弁してくれ。


「ガウガウ」


それにしてもカムイ。さっきは大活躍だったな。刀を口に咥えて戦うなんてさ。かっこよかったぜ。


「ガウガウ」


もっと褒めろって? マジで助かったぞ。あのおかげでオーガの頭が下がったんだからな。結果として赤兜でも手が届く高さまでな。あいつに最も血を流させたのは間違いなくカムイさ。よくやったな。


「ガウガウ」


よし。きれいになった。さあ、のんびり浸かろうぜ。私も疲れたよ。


「カース、大変だったわね。」


アレクがしなだれかかってきた。


「アレクにも心配かけたね。」


「ううん、いいの。カースが無事だったから……」


アレクのおかげでもあるよな。さっきの連携は良かったもんなぁ。弾き飛ばされてもアレクがさっとポーションを飲ませてくれて。たぶん本来の冒険者たちってあのようにして戦ってるんだろうな。口移し……はともかく、盾役とか回復役とか役割分担しながらさ。

装備を交換する時間を稼いだり、ポーションを飲む時間を稼いだり。はたまた治癒魔法を使うために身を盾にしたりさ。冒険者は楽じゃないよね。

だからこそ休める時にはしっかり休んでおかないとな。




およそ二日の休息を経て、私たちは再び動き始めた。ここの魔物はオーガゾンビだ。身の丈五メイルはあるが魔法が使える今、私たちの敵ではない。

クロミによると何やら『呪い』を感じるそうだが私が『解呪』するのだから全く脅威ではない。このメンバーだと呪いに弱いのはアーニャぐらいだしね。


結局三時間程度でボス部屋に到着した。


「じゃあ、四十五階と同じ要領な。」


「おう。任せとけ。赤兜ぉ、てめぇにも期待してんぜ?」


「ああ……」


アレクとクロミに武器やポーションを分配して、と。




そこから先はほとんど同じ。違うのはブラッディオーガロードの大きさぐらいだろうか。一、二メイルは大きくなってやがる。

少しだけ厄介だったのが部屋の狭さだ。前回は百メイル四方の部屋が半分に。つまり百×五十メイルだったわけだが。今回はさらにその半分。五十×五十メイルだった。

これはまだ問題ないのだが、このまま行くと次の階では半分、また半分となりそうな……

しかもボスが大きくなっていけば……


厄介でしかない……


つくづく趣味の悪い神だわ。




「おう魔王。大丈夫かよ?」


「まあな。」


あー疲れた。つーか危なかった。一回戦で危うくオーガに握り潰されるところだったんだから。

どうにか山裂やまざきでオーガの指を断ち切ったからよかったものの。もう一秒遅れてたら刀も振れずにぐちゃっと潰されてたかもな。やっぱデカいってのは反則だよなぁ。ヒヤリハット。ご安全にいきたいもんだけどなぁ。


ちなみに今回もカムイが大活躍だった。オーガの背中を駆け登り、そのまま天井にまでジャンプ。そして天井を蹴った勢いで落下しつつオーガの延髄あたりに頭突きしやがった。よくあんなピンポイントで狙えたもんだ。そして崩れ落ちたオーガの首を赤兜がバッサリ、といった寸法だ。


二回戦はもちろん私が燃やした。落とし物はまたもや火の魔石。代わり映えしないね。


さあて、次は四十七階か。もうすぐ、もう少しだ……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る