1593話 三十一階攻略開始
途中でクロミの魔法が解けたドロガーと二回戦を始めた私。
「ふぅーアラキの新酒かぁ……悪くねぇよなぁ。」
「ああ、旨いな。」
荒々しいとでも言えばいいのか。そこまで熟成されてないんだろうな。悪くはないけど。ハイボールで飲むにはいいかも。あ、ハイボールと言えば。
「そうだドロガー。これ搾ってみるか?」
「ん? おおリモンか。いいもん持ってんじゃねぇか。」
どこかの村で貰ったレモン、ではなくリモン。これでハイボールとはいかなくても爽やかな味を楽しむことができる。
いつの間にか寝てしまった私たち。起きてみれば……うーん少し頭が痛いな。
「カズマ!」
アーニャだけか。他はみんな寝てしまっている。
「カズマカズマ!」
いつものように私の左腕へとしがみついてくる。なんだかすっかり慣れてしまった気がするな。そこはアレクの場所だったはずだが。
「カズマカズマカズマ!」
ん? これを飲めってことか? 酌をしてくれたのか。さすがに樽で置いておいた酒はなくならないよな。
ふう。二日酔いになる前に迎え酒か。私はまだセブンティーンなんだけどな。
「カズマカズマ!」
待て待て。そんなに飲む気はないぞ。いつまでもここには居れないんだから。
さあ、お前も寝ようぜ。ひと眠りして、目が覚めたら再び攻略開始だからな。
『浄化』
『快眠』
いい夢見ろよ。せめて夢の中だけでも……
それにしても私って全然夢を見ないんだよな。これって魔力の高い者あるあるだったりするのかな?
まあいい私もまた寝よう。ドロガーとクロミは放置でいい。アレクは自力でシェルターに戻ってるし。アーニャは自力でシェルターに出入りできないから連れかないとな。
あらら、よく見たらコーちゃんたら酒樽の中にぷかぷか浮かんだまま寝てるじゃないか。浴びるように飲むって言葉はあるけど、泳ぐように飲んだわけね。コーちゃんらしいや。
ふふ、おやすみ。
爽やかな目覚め。今日からまた攻略をがんばるぞ。
シェルター内にアレクもアーニャもいない。先に起きてるようだ。私も出るとするかな。魔力の回復度は……六割ちょいってとこか。
「おはよ。あら、何やってんの?」
「おはようカース。ちょっとクロミと稽古をしてるの。」
「ニンちゃんおっはよー。金ちゃんてなかなかセンスいいよぉー!」
アレクなら当然だ。
で、魔法を撃ち合っているわけではないようだが?
「はい金ちゃん次はこれ!」
「こ、このぐらいかしら?」
「いいねー。ニンちゃんいいよー。もう二厘下げてみようよ!」
「こ、こう?」
「いい感じ! じゃあ次はこれ!」
なるほど。クロミが込めた魔力に合わせてアレクも手の平の上に魔法を作り出しているのか。なんて繊細な制御だ。どれどれ私も……
『火球』
「ニンちゃんもだいぶできるようになったじゃーん。でも、もう二分下げてよ。」
くっ、アレクは『厘』単位なのに私は『分』かよ。難しいなぁ。
さて、頭の痛そうな顔をしてるドロガーが起きたことだし朝食の時間だ。今朝はクロミが作ると言い出したので任せてある。ダークエルフ料理か……村長だったばあちゃんの料理を思い出すな……ばあちゃん……
「できたよー! 食べて食べてー!」
「うまそうじゃねぇか! いただくぜ!」
頭が痛そうにしてたドロガーだが、急に元気になったな。
「ん? こいつぁ何だぁ?
味噌を肉に塗って焼いたような料理だな。見た目は美味しそうだ。どれどれ……あ、これはあれか。フェアウェル村で食べた覚えがある。名前が思い出せないけど。
「それはねー。マイティベイジって言ってエルフの村で好まれてるやつだよ。まあ食べてよー。ウチそれがかなり気に入ってるんだよねー。」
そうそう。マイティベイジだったか。
「ほおぉん。不思議な味じゃねぇか。味噌とはまた違った奥深さを感じるぜ?」
「どうヨッちゃん気に入ったー?」
「おう。これぁうまいぜ。クロミは料理も上手いんだな。」
「えへへ、まあねー。」
おっ、クロミの奴満更でもないって顔してやがるな。
さて、朝食が済んだらいよいよ本格的に攻略開始だ。気を引き締めていかないとな。
「クロミ、カムイと二人で先頭を頼む。とにかくボス部屋へ向かって欲しい。」
「いいよー。」
「ガウガウ」
「ドロガーはいつも通り最後尾な。」
「おう、任せろ。」
「アレクもいつも通り真ん中でアーニャを頼むね。コーちゃんも。」
「ええ、大丈夫よ。」
「ピュイピュイ」
私は遊撃だ。魔力探査を広めに張ってその都度場所を移動しては指示を出すことになるだろう。
「よし、それじゃあみんな! 気合入れていくぞ! でも慎重にな!」
『おう!』
しっかり休んだからみんな元気いっぱいだ。さっそく現れた小さめのデュラハンもカムイが一瞬にして頭部を踏み潰している。頼れる仲間って最高だね。カムイがいれば迷うこともないし。
さあて、ガンガン行くぜ!
もう着いた!?
ここのボスは何だろうね。
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