1588話 突入! 地下三十一階

デュラハンが現れたと思ったらもう終わっていた。

何なの? デュラハンの本体ってやっぱ頭部なの? カムイの姿が一瞬ぶれたと思ったら、足元でデュラハンの頭部を踏み潰していた。

頭部ってしっかり左手に抱えられていたはずなのに? いつ奪っていつ踏み潰した?

カムイ凄すぎだろ……


「ガウガウ」


当然だって? うるせーよ。

ちなみに落としたのは鈍い銀色の兜だ。こんなの誰がかぶるってんだ。絶対呪われてんだろ。


「ドロガー要るか?」


「いいんかよ。高く売れんぜ?」


「あー、やる。とっときな。」


「そんじゃ遠慮なくいただくぜ。」


ほう。やはり器用なもんだな。ロープで兜に触らないようぐるっと縛ったら、ロープごと収納しやがった。触るだけでもやばそうだもんな。瞬殺したからいいアイテムを落としてくれたつもりだろうか。だったらまともなアイテムを落としてくれても良かろうに……ここの神はケチなのか?




さて、次は二十六階か。もしこの迷宮が五十階まであるとするなら、ようやく半分越えたってことか。まだまだ先は長いな。


だめだな。だるくなってきた。


「全員乗って。またぶっ飛ばすから。」


「おい魔王、大丈夫なんかぁ?」


「まあ大丈夫だろ。クロミ、全力で罠を感知してくれ。」


「えー? まーいいけどぉ……罠の魔力ってめっちゃ微妙だから大変なんだよー?」


「クロミにしかできないことだしな。頼むわ。」


「もー。ニンちゃんったらホントのことばっかりー。仕方ないからやってあげるしー。」


カムイも頼むな。方向の指示だけでなく、何か危険を感じたらすぐ知らせてくれ。コーちゃんも頼むね。


「ガウガウ」

「ピュイピュイ」


「アレクは隠形をお願い。」


「ええ、任せておいて。」


では、行こうか。二十六階、ミスリルボードでぶっ飛びだ。


『快眠』


悪いがアーニャは眠らせておいた。かなり揺れるだろうからな。




二十六階、クロミがボス撃破。




二十七階、私がボス撃破。




二十八階、カムイがボス瞬殺。




二十九階、クロミがボス撃破。




そして三十階。


『金操』

『火球』


デュラハンのくせに生意気に全身ミスリルの鎧で固めてやがった。ドロガーによるとデュラハンロードと言うらしい。だが、ミスリルの扱いなら私の得意分野だ。

金操で兜をひっぺがし、火球一発で消滅させてやった。カムイほど瞬殺とはいかなかったが、それでも五秒とかかってはいない。


そしてボスの落とし物は……


「こいつぁ珠鋼たまはがねじゃねぇか。こんなところでお目にかかるとはよ。さすが魔王、ツイてんな?」


硬さと柔らかさを併せ持つ、珍しい金属だったな。豊穣祭には珠鋼で脛当てを作ってる奴もいたっけな。私には使い道などないが、一応キープしておこう。お土産にもいいかも知れないからな。

つーか……ミスリル落とせよ……




「よし。それじゃあ三十一階の安全地帯まで行ったら宿泊しようか。さすがに疲れが溜まってきたからな。」


「そうねー。ウチも疲れたし。」


「さすがに今度はゆっくり行けよ? 一気に難易度が上がるんだからよ。」


「ああ、分かってる。慎重に進むとするさ。先頭はカムイとコーちゃんで。」


「ガウガウ」

「ピュイピュイ」


カムイの五感にコーちゃんの第六感があればきっと安全に違いない。


「ドロガーは最後尾を頼むな。」


「おうよ。」


「よし、それじゃあ気合入れていくぞ! 三十一階だ!」


『おう!』「ピュイ」「ガウ」




カムイのペースは普段の散歩程度。つまり私からすると早歩きってとこだ。




「ガウ」


ふむふむ、右から槍が出てくるのね。


「ガガウ」


ほうほう、落とし穴が開くのか。


「ガウガウ」


踏むと頭がくらくらする? なんだそりゃ? まあ踏まなければいいさ。


「ピュイ」


最後尾が通ったぐらいで天井が落ちそう? それは危ない。


「全員駆け足!」


最後尾のドロガーが駆け抜けた三秒後、広範囲に渡って天井が崩落した。プレス機のように押し潰すタイプではないのか。生き残ったとしても大量の土砂によって生き埋めにされるタイプね。時間差の罠ってエゲツないわー。ちなみに走り抜けたドロガー目掛けて横からナイフが飛んできた。


「おおっと。へぇ? 毒が塗ってあんぜ。こいつぁいただきだぜ。」


やるなぁ。ドロガーったら飛んできたナイフの柄の部分をキャッチしやがった。お見事。




ふー。安全地帯はまだかなー。


罠が減ったとなると魔物が現れるのがお約束。ボスよりは小さいデュラハンがぞろぞろと出てきやがった。しかも馬車ではなく、直に骸骨馬に乗ってやがる。


だが……『氷柱こおりばしら


通路の横幅いっぱいを転がる氷の円柱だ。避ける隙間などない。たたっ切ってみるか?


『火球』


わすがな隙間から頭部がふよふよと飛んでくるが、灰になりな。いや、灰すら残るまい。私の火球は無駄に高温だからね。


「じゃあここからは、こいつを転がしていくから。何かあったらすぐ知らせてくれよ?」


「ガウガウ」

「ピュイピュイ」

「最初からそうしてた方が早くなーい?」


うるさいな。安全第一なんだよ。


ちなみにこの階に来てから赤兜を全然見てない。いつの間にやら最深記録を更新してしまったかな?

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