1587話 近衛騎士スザク
「お前たちか。早かったな」
こいつら……二十三階のボス部屋前にいた、隙のない赤兜どもじゃないか。
「邪魔するぜ。赤兜の旦那がたよぅ。まさかこんな所で出っくわすとはな。あっちの隅を使わせてもらうぜ?」
「好きにしろ。我らに近寄らないなら構わん」
ちっ、相変わらず隙のない奴らだ。輪になって何やら飲んでるようだが。
私たちも少し離れて休憩だ。アレクがお茶の用意をしようとするが。
「ちょっと待った。今度は僕が用意するよ。アレクはそのまま座ってて。」
いつもアレクばかり働いてもらうのは悪いからね。
さて、魔力庫から取り出したのは様々な果実。豊穣祭の賞品でたくさん貰ったもんなぁ。これを『重圧』ぐしゃっと潰して……『水操』でほどよくブレンドしてシェイク。
それから『氷球』で器を用意して……できた。
「はいお待たせ。まずはアレクから飲んでみて。」
「うん、ありがとうカース。」
「飲んだら聞かせてね。ボスのこと。情報共有は大事だからね。」
本当は情報共有なんかどうでもいい。ただアレクが心配なだけだ。
「ええ。カースのおかげで命拾いしたわ。それでね……」
ほうほう。なるほど。やはり現れたボスはデュラハンだったのね。それをクロミもやったように骸骨馬の足を凍らせて、馬車を焼き、容易くデュラハンを一人にさせたと。
ふむふむ。それからも距離を保ちつつ、じわじわと燃やしていったのね。堅実でいい戦いっぷりじゃないか。魔力吸引にも、飛んでくる頭にもきっちり対処したと。
思ったより伸びた鞭も飛んできた大剣も全て躱して、いよいよトドメの火柱を唱えようとした時……デュラハンが爆発しただと!?
とっさに『氷壁』で身を守ろうとしたが少し遅かったのか……そりゃあ爆発だもんな。
それでも用心のために魔力庫から取り出してポケットに入れておいた『携帯魔導結界・
「せっかくカースに買ってもらったのに。ごめんなさいね。」
「いやいや、アレクを守ったんだから問題ないよ。あんなのはまた買えばいいだけだし。」
「ええ、ありがとう。そんなわけで後には大剣だけが残されてたってわけ。最後のは自爆かしらね。」
「そうみたいだね。アンデッドのくせに自爆するって生意気だね。じゃあ次からは自爆すらさせないほど速攻で決めればいいね。」
「魔王よぉ……それができりゃあ苦労しねぇってんだ……」
「金ちゃん頑張ったねー! やるじゃん!」
オワダで魔道具を買っておいてよかったよなぁ。もしなかったら死なないにしてもかなり傷だらけになってただろうからな。なんせ一発で壊れるほどの威力だったんだからさ。
「ほう、お前たち。あのデュラハンを自爆させるまでに追い込んだか。しかも聞いていればその女が一人で戦ったのか。やるではないか」
おやおや。私たちに無関心かと思えば、赤兜のやつが口を挟んできやがった。
「自爆すんのはあそこのデュラハンだけなんかぁ?」
「どこもするぞ。追い込んでから時間をかけると自爆すると言われているな。もっとも、我ら赤兜騎士団には関係のないことだがな」
そりゃそうだろうよ。ムラサキメタリックを纏ってりゃあそうそうダメージなんかくらわないだろうさ。今だって私たちを警戒しているのか、全員ともムラサキメタリックに換装してやがる。これじゃあ解呪なんか使えやしない。まったく……
「どうやらお前たちはそれなりに優秀な冒険者なようだな。この先困ったことがあれば言ってくるがいい。力になってやらんこともないぞ?」
「へっ、そいつぁありがてぇこった。俺ぁ五等星ドロガー。人呼んで傷裂ドロガーだ。」
「ほほう。お前があの傷裂か。ここまで来るだけあるな。私は近衛騎士団三番隊隊長カンナバラ・スザクだ。では先に行く。せいぜい追いついてくるといい」
「おうよ。うかうかしてっと追い抜くぜ?」
近衛がなぜ迷宮なんかに潜ってんだよ……
そもそも赤兜が近衛みたいなもんじゃなかったのか? わけ分からん。
やっぱジュダって頭おかしいだろ。何考えてんだかねー。こいつらを解呪してやったら面白いことになりそうだが、今は無理か。機会を待とう。
赤兜どもは去った。私たちも飲み終えたので出発だ。さて、私たちが行くルートは当然ボス部屋までの最短距離なんだが、果たしてその先に赤兜どもはいるのだろうか。
関係ないね。
ガンガン進むのみだ。
到着。途中に赤兜はおらず、ボス部屋前にもいない。おおかたあいつらって途中の宝箱とかも狙ってんだろうな。天王のためにあれこれ集めるのが任務って話だし。
「ガウガウ」
今度こそカムイの出番だな。任せたぞ。
「カムイがやるって言ってるから。任せていいよな?」
「いいぜ。」
「狼殿がんばー!」
幸いボス部屋も空いていることだし。さくさく終わらせようではないか。
まあカムイなら瞬殺だよな。
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