1585話 ボス部屋前あるある

私が先頭を歩くと、罠の発見も何も関係ないんだよな。氷の円柱をごろごろ転がすから罠は全て発動しまくり。そして円柱が壊れれば再び同じ魔法を使うだけのことだ。気楽でいいねぇ。でもたまに氷柱に反応したくせに私の足元に穴が空いたりするんだよな。見た感じトゲトゲって感じだったけど私の装備なら落ちても無事かな。靴裏はドラゴンゾンビの牙仕立てだからな。ムラサキメタリックの剣すら防ぐぜ。でも、油断せずにいこう。物理的な防御では防げない罠もあるかも知れないもんな。


ちなみにこの階に現れる魔物は骸骨騎士って感じかな。倒したら魔石を落とすので意外と儲かる相手なのではないだろうか。


それにしても、狙っているのか偶然なのか……タイミングよく氷柱が通り過ぎた後に現れることが増えてきたな……

何やら人為的、いや神為かむい的な作為を感じるが……


『重圧』


縦にぐしゃっとプレスしてやればいいだけだ。骸骨のくせにカルシウムが足りないんじゃないのか?


はたまた私を無視していきなりアレクの目の前に現れることもある。まったく迷宮ってのは反則だよな。防御を固めても意味がないじゃないか。もっともなぜかクロミは骸骨騎士が出現する一瞬先に気付いて魔法を構築し終わっている。現れた瞬間にやられるわけだ。まさに瞬殺。




そんなこんなで迷宮をごろごろと進むこと三時間。ようやくボス部屋が見えてきた。ちっ、やはり赤兜が数組待ってやがる。


「んー? お前らもしかして冒険者かー? うっわ冒険者がよくここまで来れたな」

「見たことねー奴ばっかだな。いや……あいつって……もしかしてドロガーか?」

「おっ、ドロガーっつーたら傷裂きずさきかぁ?」

「へぇー! こいつぁツイてるぜ。ドロガーっつーたらパーティーメンバーの女ぁやり放題って聞いてんぜ?」

「そうだよなぁ! お前傷裂ドロガーだろ? てことは連れてる女ぁやりまくってんだよな?」

「言えよ? 俺らぁケチなことぁ言わねぇ。お前の言う金額を払ってやんぜ?」


ドロガーの評判はどうなってんだ?


「いかにも俺ぁ五等星ドロガーだ。だがお前らはいくつか勘違いしてんな。まず俺が昔いたパーティー、ブラッディロワイヤルだがリーダーはハルナだ。あいつはいい女だったが、あいつは俺の女じゃねぇ。俺たちがあいつの慰み者だったんだ。」


よく分からんがドロガーはそのリーダーのことを仇をとるほどに愛してたんじゃないのか?


「俺たちがハルナをやりまくってたんじゃねぇ。ハルナが俺たちで遊んでたんだ。大したリーダーだぜ。」


「んーだ? つまりお前らのパーティーの野郎は奴隷みてぇなもんってことかぁ?」

「ぎゃははぁ! なっさけねぇー! 揃いも揃って女の尻に敷かれてやがんのぁ!? ぎゃっはははぁー!」


「強い者が上に立つ。当たり前だろ? 俺ら冒険者ぁよ? お前らみたいな鎧の性能に助けられてん雑魚たぁワケが違うんだよ!」


ひゅーう。ドロガーのやつかっこいいこと言ってんじゃん。愛した女をバカにされたんじゃあ許せんよなぁ。


「んだコラ? やんのかあぁん?」

「てめぇ赤兜騎士団上等かよ!? 俺らにケンカ売ってんだよなぁ!」

「こぉんな迷宮内だからよぉ! お仲間ぁ助けちゃあくれねぇぜ! てめぇ終わったなぁ!」


同じ赤兜なのにどうしてこうも隊ごとで違うんだ……こいつらを組織した人間ってバカなのか? あ、ジュダか。洗脳して迷宮の素材を納めさせる以外は好きにさせてるんだろうなぁ。その方が少ない魔力で効率的に動かせるはずだもんな。


『クロミ………………』


伝言で指示を出した。使い古した手だが、こいつらみたいなバカには効果絶大なはずだ。


「あー、暑っつーい……」


前に出て服を脱ぎ始めるクロミ。明らかに不自然な状況だが、あいつらはバカだから引っかかるだろう。


「なんだよ。口でぁ舐めたこと言っといて本当は女ぁ差し出す気満々だったんじゃねぇか」

「それならそうと早く言えよなぁ。よかったなドロガーよぉ。命が助かったぜ?」

「ほぉーん、色が黒ぇな。南の大陸の女かぁ?」


やっぱりバカだった。クロミにまとわりついた五人をまとめて『解呪』


「あれー?どうしたのー? 早くいいことしよーよー?」


クロミもなかなか演技派だな。


「どうした! 大丈夫か!」

「てめぇ何しやがったぁ!」

「俺ぁ見てたぜ! こっちのガキっ『解呪』


いやぁ本当に都合が良すぎて笑えるレベルだわ。まさかそっちから近寄ってくれるとは。残り四人。


『風操』で、すっと音もなく近付いて『解呪』


終ーわり。こいつらこの程度の腕でよくここまで来れたな。まあムラサキメタリックの鎧があれば楽勝か。下が水の落とし穴さえ警戒しとけばいいんだもんな。


「おーいドロガーどうする? 今なら殺してもいいぞ?」


「いや、いい。あのぐれぇでそこまでする気ぁねえさ。まあ金目のモンぐれぇいただくけどよ。」


賛成。男の鎧を脱がせるのは不快だが、何も持ってなければ赤い鎧をもらっておけばいい。いつか役に立つこともあるだろうさ。

ん……これって無駄に物を溜め込む奴のセリフか?


それに、こんなバカな奴らでも殺すよりは解呪して生かしておいた方がヒイズルに混乱を生めそうだもんな。十人や二十人を解呪したぐらいでは何ほどのこともないだろうが、千人からの赤兜がいるって話だからな。こつこつと洗脳されてない奴を増やしていくことは重要だよな。うーん私って働き者だね。最優先はアーニャなのに。


さて、ボス部屋が開くまで休憩するかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る