1568話 クロミの実力
私がシェルターに戻ったらアレクもアーニャも寝ていた……アーニャはともかくアレクまで……
しかもしっかり『消音』まで使っているなんて……いいんだ別に……アレクの横に潜り込むもん……
ちなみにクロミもこの中に入りたがっていたが、アレクの許可が必要だから明日以降にしてくれと断った。一瞬ふてくされたようだが、さして気にした様子もなく水の魔法に肩まで埋まりぷかぷかと漂うように眠りについた。ほぼ裸で……朝には肌がぶよぶよになってるんじゃないのか……
「…………ずま…………」
「…………とう…………」
「…………がと…………」
うーん、よく寝た。すっきりとしたいい目覚めだな。あら? アレクがいない。アーニャもだ。もう起きたのかな?
「カースおはよう。」
「カズマカズマカズマカズマぁーー!」
いつも通りの朝。なんだか安心するな。今日は目覚めもよかったし。さぁてガンガン行こうか!
「はいカース。」
「おっ、ありがとう。
朝はやっぱり味噌汁だね。アーニャも両手で器を持ち、ゆっくりと飲んでいる。
さて、アレク謹製の朝食を終えたら出発だ。ちなみにクロミはぶよぶよのしわしわになってなかった。
「ちょっと昼休憩しようか。」
腹具合的にそろそろ昼だ。実際はどうなんだか分かったもんじゃないが。
現在は十五階。ちょうど安全地帯を見つけたもんだから昼休みにするのだ。この階ではちょくちょく赤兜を見かけたからな。隠形は使ってたけど違和感ぐらい感じる奴もいたはずだ。幸い安全地帯には誰もいないが、そのうちやって来てもおかしくないな。別にいいけど。
昼のメニューはアレクにお任せ。私がやると肉を焼くだけになってしまうからな。幸い食材はいくらでもある。豊穣祭で優勝してよかったなぁ。
はあぁ……おいしかったなぁ。野菜たっぷり味噌煮込み雑炊って感じかなぁ。味噌が入っているのにローランド風のフォンが効いた味付けとは。アレクすごい。
「よし、それじゃあさっさと行くぞ。余計な奴らが来ないうちにな。」
「カースなら誰が来ても関係ないじゃない。」
それはそうなんだけどね。
「バカの相手も面倒だからね。ささ、乗って乗って。」
「そりゃあいいけどよ。ここのボスはまあまあ強えから気をつけようぜ。」
「へー、ドロガーが強いって言うぐらいかよ。お前なら一人で勝てるか?」
「どうにかな。俺の攻撃ぁ当たれば勝ちだからよ。」
そりゃそうだ。こいつもエゲツない攻撃手段を持ってるもんだなぁ。
さて、ボス部屋に到着。迷宮なのにカムイのおかげで全然迷わない。
「ニンちゃーん。次ってウチの番じゃん?」
「そうだったか。いいよ。任せる。」
ボスとの対戦は今のところ一対一で戦ってる。一応順番ではあるが、相手によってはドロガーが戦わせろと割り込んでくることもあり、今では順番がよく分からなくなっている。クロミがやりたいならそれでいいだろう。
「おいクロミ、ここのボスぁグランオーガメイジって言ってよぉ。でけぇくせに俊敏だぜ。おまけに魔法もガンガン撃ってくるからよ。一発でも食らったら終わりだぜ? 気をつけろよ?」
「ふーん、そー? 分かった。気をつけるねー!」
そして扉を開けて中に立ち入る。私達は総勢七人なので、ボスの強さは普段の二倍ってことになる。
おっ、出た。魔法も使える巨大オーガか。でもクロミにかかれば……
『豪水牢』
『魔裂破』
『葉斬』
「終わったよー。あ、何か落ちてるー。へー、杖じゃん? ニンちゃんいる?」
「いや、いらん。村へのお土産にいいんじゃないか?」
「そーだねー。そうしよっかな。ねぇねぇニンちゃんどうだった? ウチの魔法!」
「最後の葉斬は余計だったな。『まれっぱ』って言ったか。あれでオーガの体は破裂寸前だったよな?」
「そーだよー。無駄な反抗されると
「悪くはない。お疲れ。」
悪くないどころか上出来だ。このグランオーガメイジってキヨバルのペットである紅蓮獅子が苦戦したってやつだろ? それをそこらの雑魚と同じように仕留めるとは……やっぱダークエルフってすごいもんだ……何やら水の魔法で動きを止めて、その後オーガの体が徐々に膨れていって……まるで破裂しそうだった。
ムカつくことにクロミは魔力も戦闘力もアレクの数段上を行ってやがる……今のアレクでは相手にもならないな……ちっ……
「ク、クロミ……凄かったな……」
ドロガーの奴、絶句気味だな。クロミの強さを感じてはいたが、今の戦いぶりまでは想像してなかったか? さっきまでのボス戦では葉斬しか使ってなかったもんな。
そろそろ正体がバレる頃じゃないだろうか。
関係ないけど宮廷魔導士もエルフとは戦いたくないって言ってたなぁ。そもそも出会ったこともないだろうけどさ。
「へへーん! どうヨッちゃん? ニンちゃんほどじゃないけどウチも中々やるっしょ?」
「あ、ああ……クロミにならヨッちゃんと呼ばれても文句ぁねぇ……」
弱虫だからヨッちゃんって……大の男にあんまりだよな。でもまあ弱者には居場所がないのはどこの国でも同じだけどさ……
「どうでもいいけど、さっさと次行くぞ。」
ちょっとカムイが暴れたそうなんだよな。もう一回ここのボスとやらせろ、なんて言われたら面倒だからな。
「ガウガウ」
次の奴まで我慢してやるって? はは、ありがとよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます