1552話 アレクサンドリーネとアーニャ
アレクは……いたいた。先ほどから少し場所を移動して村の広場で楽しそうにお喋りをしている。ガールズトークしてんのかねぇ。
「アレクお待たせ。できたよ。受け取ってくれる?」
「カース……嬉しい……」
「ひゅー! 金ちゃんいいなー!」
「クライフトの仕事? へー見たい見たい!」
「ダークエルフも人間の依頼を受ける時代なんねー」
そこにはクロミだけでなくエルフたちもいた。
「ほら、これだよ。」
「うわぁ……素敵。なんて複雑なカットなの……アルテミスの首飾りもそうだけど、ダークエルフの技術ってとんでもないわよね。カース、ありがとう!」
「アレクの耳を飾るんだからこれぐらいでないとね。じゃあ説明するね。」
「耳?」
ふふふ、見た感じでは分かるまい。これは耳飾りなのだ。
『付着』『離脱』の説明をしつつ、アレクの耳たぶを飾ってみる。左右一対、おまけに裏側にも一対。見えないところのお洒落も大事なのだ。
「あー! それ知ってるー!
おっ、クロミにしてはいいこと言うじゃん。つーかダークエルフも
おっ、アレクったら手鏡を出してじっくり見てるな。おっ、あの表情は!
「カース! すごいわこれ! すごく嬉しい! こんなに小粒な宝石なのに! 信じられないぐらい輝いてる! 本当に素敵よ! カースありがとう!」
感極まったアレクは迷わず私に抱きついてきた。ぬふふ。私は魔力を提供した程度だが。これだけ喜んでもらえると贈ってよかったと心から思えるね。
「へー、こっちは
たまたま手に入っただけだけど。それがアレクに似合う宝石だったのは運命だろうな。
そんなアレクの耳元を凝視している、あいつ……
アーニャ、お前は本当にあいつなのか……
「カズマカズマカズマ!」
私が近付くと、はっとした顔で名を呼んでくる……
私が取り出したのは、先ほど作ったばかりの首飾り。アイリックフェルム製の真っ白なチェーン。真っ赤に輝くルビー。
あいつの好きだったルビー……
「ひゅー! ニンちゃんたら! それ
「カース……」
「アレク、これに深い意味はないよ。だから気にしないで。」
そう……深い意味なんかない。ただの私の自己満足だ……
何の魔法効果もない、ただ美しいだけのルビーの首飾り。
「カズマ!」
何も知らない無邪気な顔をして私の左腕にしがみついてくる。さすがにそれだけで少しでも正気を取り戻してくれるかも、なんて虫が良すぎだよな……
「ニンちゃんてさー、金ちゃんが本妻なんだよねー?」
本妻って言うな。私はアレク一筋だってんだ!
「それがどうした?」
「黒ちゃんってまともじゃないけどー、どう見てもニンちゃんにベタ惚れじゃん? どうすんのかなーと思って。第二夫人にすんならウチだってさー?」
黒ちゃん? あぁ、あいつの髪の毛が黒いからか。平民ってだいたい髪が黒かったり黒に近かったりするんだよな。貴族でも黒いのはいるけどさ。
「お前は諦めろ。どうせ人間とダークエルフじゃ子供ができないんだろ?」
「そうだけどー……別に裏技がないわけじゃないしー……」
裏技ね。知ってるよ。
だが、理解できないね。
せっかく長命な種族に生まれたのに。それなのにわざわざ短命な人間になるなんて。
つまりマリーはそれだけオディ兄に惚れ込んだってこと……ならばクロミもそれだけ私に?
うーん……
「カース、アーニャが喜んでるわ。そしてよく似合ってる。その紅玉石はカゲキョー迷宮でサザール・ナミクサに貰ったものね。まさかこんな素敵に輝くなんてね。」
サザール・ナミクサ……赤兜の隊長だったかな。もう誰が誰だったか覚えてないけどね。
「アレクの首飾りほどじゃないよ。これはほんの気まぐれ。心が壊れてるこいつに……ちょっと同情しただけだよ……」
「カース……」
いかんな……アレクに心配をかけている。せっかくさっきまでハッピーな雰囲気だったのに……
「クロミ、今夜も宴会しようぜ! 酒ならたっぷりあるからさ!」
「ひゅー! ニンちゃんやるぅー! よーし飲もう飲もう!」
村ごと巻き込んで大宴会だ。どうせもうすぐ夕方だし。楽園には日帰りしたかったが、別に明日帰っても全然問題はない。
こんな時は飲んで騒いで歌って踊るのが一番だからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます