1543話 クタナツ城門外の変
そもそもなぜこんな所で揉めてんだよ……
「こいつら女に興味津々みたいでよ。やたら絡んできやがってよぉー」
あらら……
意識のない女に、こいつら何する気なのやら……
「お前らこいつのこと知らねーのか?」
「あぁ!? 知っかよそんなガキぃ!」
「大物たれてんじゃねーぞ!?」
「違法奴隷連れてんくせによぉ!」
「ぶっ殺してやんかコラァ!?」
うわぁ……間違いなくよそ者だ。いくらあんまりギルドに顔を出してないからって、クタナツで私の顔を知らないなんてモグリもいいとこだな。
「お前らどこの冒険者だ? 魔境は甘くないぞ?」
一応忠告はしてやるが……
「うるせんだよ! ガキのくせによぉ!」
「サヌミチアニのサザークレ舐めてんのか!?」
「いつまでもクタナツが偉ぇとでも思ってんじゃねぇぞ!?」
「さっさと女ぁ寄越せや! マジ殺すぞ!?」
また……またサヌミチアニかよ! あそこってどうなってんだ!? 同じフランティアなのに冒険者の質が酷すぎる……
しかも女を寄越せときたもんだ。いくら城壁外での出来事に騎士は関わらないからって……目をつけられることに変わりはないんだぞ?
どうしてくれよう……かと考えていたら、懐かしい顔が見えた。
「よぉ。カースじゃねえか。帰ってきたのかよ。」
「どうもお久しぶりです。アステロイドさんもお元気そうで。」
この時間に帰ってきたってことは徹夜明けか。アステロイドさん達も大変だねぇ。
「あー。で、こいつら何だ?」
「さあ? サヌミチアニの駆け出しみたいです。なーんか絡んできたんですよ。アステロイドさん、教育してやったらどうですか?」
「嫌に決まってんだろ。俺らぁしばらく機嫌が悪ぃんだからよ!」
あー……母上が山岳地帯に行ったからか? アステロイドさんなら一緒に行くって言いそうなものなのに。
「おいおいおい! 横から口ぃ出してんじゃねぇぞオッさんよお!」
「おいぼれはさっさと帰って寝てなぁ!」
「はいはいお疲れなんだろ!?」
「じゃねぇとお前らもまとめてぶっこ、ひいっ!?」
おおー。息の合ったフォーメーションだね。アステロイドクラッシャーのメンバーがそれぞれあいつらの喉元にナイフを突きつけてる。鈍感な奴らだなぁ。
「じゃあアステロイドさん。後は任せますね。母上に何か伝言ありますか?」
「なっ!? お前も山岳地帯に行くってのか!?」
「いや、まだ分からないんです。たぶん山岳地帯のあそこに行ってるんだろうなぁーと予想はつきますが、本当にいるかどうかは分かりませんからね。」
「そうか……じゃあ魔女様に……いつまでもお待ちしております、とだけお伝えしてくれ。」
「押忍! 会えたら伝えておきますね。どうもありがとうございました。」
「ああ、こいつらはちょいと説教だな。じゃあな。」
そう言ってアステロイドさん達はサヌミチアニの奴らを城門内へと引っ張っていった。やれやれ。
「おい魔王……ここにはあんな奴らがうじゃうじゃいんのかよ?」
「いるわけないだろ。さっきのはアステロイドさんと言ってクタナツの五等星、つまりエース格だ。」
ドロガーも五等星だったよな。国が違えばギルドの評価システムも違うだろうさ。
「ふー……魔王もたいがいやべぇけどよ……あの五人もなかなかやべぇぜ……」
「へぇ、分かる?」
「当たり前だぜ……魔王と話してた奴、ありゃあリーダーだな? そして他の四人……揃いも揃って隙が全くねぇ……ガキどもに一瞬でナイフ突きつけてるくせに俺まできっちり警戒してやがった。あの手の奴らとは戦いたくないぜ……」
ほーお。やっぱドロガーってバカじゃないんだな。少し見直した。
「カース、お待たせ。つい母上と話し込んじゃったわ。ごめんなさいね。」
「いやいや、全然構わないよ。よし、それじゃあ行こうか。」
女たちは氷壁ボードに寝かせたままだから、このまま出発だ。
行くぜ
うるさくしそうなドロガーには消音をかけ、眼下にはバランタウンやソルサリエを眺めつつ、私達はヘルデザ砂漠へ差しかかった。
そういえばノヅチってどうしてるんだろうなぁ……別に会いたくないけど。コーちゃんによると、あいつは魔王が死んで寂しいって話だったっけな。
あんなヤバい魔物がペットって……
今さらながら魔王って何者だったんだろうなぁ……
そんな魔王に勝った勇者ムラサキも、凄い奴らがそこにいたんだろうなぁ……
うーむ、やはりローランド王国は広大で強い国だなぁ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます