1540話 アラニシのボスたち
「ガウガウ」
とある用事を頼んでいたカムイが戻ってきた。と、いうことは……
「どっちだ?」
「ガウガウ」
よし、海の方か。
「アレクごめんよ。少し出てくるね。」
「いいわよ。早く帰ってきてね?」
「うん。行ってくる。」
いちいち理由を聞かないアレク……好き。説明なんて後でいいんだから。
『暗視』
『魔力探査』
走るカムイの後ろを鉄スノボに乗って飛んでいく。ミスリルボードは肉を焼くのに使ってる最中だからな。
いた。あれだな。
よし、カムイ。もうここはいいぞ。他の地点を頼む。
「ガウガウ」
さてと……
「よう。」
と言ってもこの暗闇では私の顔なんか見えないだろうがね。
「あ!?」
「なっ!?」
「だれかぁ!」
『麻痺』
一丁あがり。
おおかた海岸沿いに歩いてアラニシを脱出しようとでもしたんだろう。エチゴヤの関係者だな。昼間に制圧した奴らで全員だなんて思ってないし、真人間になった白鎧の奴らからもまだいるって聞いてるしな。あいつらに軽く探させても見つからなかったから放置して夕食ってわけだ。そうすればこうやって夜陰に乗じて動き出すと見込んだ通りだ。
正直なところわざわざ私が来なくてもカムイに丸投げでもいいんだけどね。でもそれだとこいつらが死んでしまうからな。エチゴヤだから死んでも全然構わないけど、カドーデラ達が困るだろうからなぁ。私も苦労人だぜ。
まあ……ちょっと体を動かしたい気分でもあったしね……
結局、捕まえた人数はたった五人。こいつらは見たところ警備以外を担当しているようだな。それこそ運営の部分をな。アラキタにもアラナカにも町長がいた。そしてエチゴヤのエリアボスがいた。だが、ここではまだどちらも見つけていない。
町長のエデプト、そしてエチゴヤのリッキーをな。
話によるともう十人はいるそうなので、まだどこかに隠れているのだろう。だが、もう時間切れだ。
これ以降はカムイに丸投げ。見つけ次第殺せと指示をした。間違えて一般人を殺す可能性があるかとも思ったが、農奴は契約魔法がかかっているので脱走することはない。まともな一般人なら危険だと分かっている夜道を歩こうとするはずもない。堂々と昼に出ればいいだけだからな。よって夜にこそこそと脱出しようとするのはエチゴヤの関係者以外はありえない。
「というわけでカドーデラ。こいつらを上手く使え。これでビレイドも少しは楽ができるだろ?」
「へいっ! ありがとうございやす!」
「本当は町長やここのボスがいた方が楽できるんだろうけどな。まあ見つからないものは仕方ない。もうカムイに殺していいって言ったからな。もしあいつらの持つ情報が欲しけりゃカムイより先に見つけるんだな。」
「ふぅむ。確かにこいつらみてぇなザコが持つ情報に比べりゃあ値千金でやしょうねぇ……
よし! ここぁひとつ、カムイの兄貴に挑戦といきやすかい!」
そう言ってカドーデラは元白鎧の奴らを連れて捜索に向かった。あいつ光源や暗視の魔法使えないよな? 大丈夫なのか?
あぁ、普通に
「ん? お前は行かないのか?」
「行くわけねぇぜ。おりゃあ酒飲むんだよぉ!」
もう酔ってやがる。ダメ人間め。アレクを見ろ。覚醒の魔法でアーニャを起こして、食事をさせている。うわぁ……肉を手で掴もうとするたびに微弱な落雷を落としてる。そしてその手にフォークを持たせようと……なんて涙ぐましい……
「ピュイピュイ……」
コーちゃん……ありがとう。その気持ちだけで嬉しいよ……いくらコーちゃんの祝福でも無理なものは無理だよね。体の傷じゃあないんだから……
だからほら、コーちゃんも飲んで飲んで。あいつのことは気にしなくていいから。さあさあ。
「ピュイッ!」
「おっ? おおっ!? 待て待て! 汲んでやるって! 俺のを飲むんじゃねぇぜ!」
ははは、コーちゃんったらもう。わざわざドロガーの酒なんか飲まなくてもいいのに。かわいいなぁもう。
あいつに祝福をあげようとしてくれたけど、いくらあげても全然効かなかったそうだ……それで少し落ち込んでたみたいだけど、酒飲んで元気出しておくれよ。
「カース、アーニャに快眠をかけてくれる?」
「分かった。大変そうだったね。ありがと。」
『快眠』
おまけに『浄化』
「大したことないわ。スープだけでなく固いものも食べないと体は強くならないって聞いたから。だからお肉も食べてもらったの。やっぱりポーションだけでは限界があるものね。」
「そうみたいだね。」
私の時もそうだったらしい。徐々に弱っていく私の体。点滴なんかないもんなぁ……
マリーの起死回生のアイデアによる
他の女たちにも浄化と快眠をかけて、休ませてやろう……今日は長い一日だった……
明日はアラナカ……いや、それともいきなり帰るか? クタナツに……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます