1537話 ピエルの尽きない心配事
悲しい現実を目の当たりにして、アレクに相談をしてみた。
「どうしたらいいんだろ……」
「カースらしくないわね? あの女のせいで弱気になっちゃって……ねぇカース。私はあなたのことが大好きよ。特にどんなところが好きなのか、忘れちゃったの?」
「え? どんなところって……」
アレクが好きな私の……
どんなところだっけな……
うぬぼれだけどたくさんあるよな……?
あ!
「自由なところ……」
「そう。その通りよ。私はどんなカースも好きよ。でも、とりわけ何ものにも縛られない自由なカースが大好きなの。だからカース、自由にやって。やりたいようにやって。邪魔になったら殺せばいいの。飽きたら捨てればいいの。それだけの話よ。」
アレク……酷いこと言ってるけど、なんだかすごく嬉しい……
「それに、慈悲深いところも。あの女たち……本当は助けたいんでしょ? ひと思いに殺してあげた方が救いと言えそうな気もするけど。」
私は……助けたいのか? さっきまで殺す気満々だったのに……
そうなのかな……
それなら……よし!
やってやる……
あいつ以外は楽園に連れてってやる。そうなると一度クタナツに帰るか……そして母上に診てもらうべきだろうな。
でもあいつらって楽園での仕事も……娼婦……
ついでだから男娼もいたら連れてってやるか。私は男女差別などする気はないからな。
すっかり私の自宅が娼館になってしまったな。だが構わん。いくら私がお人好しだからってボランティアをする気はない。ふふふ……楽園でビシバシ働かせてやるぜ! リリスは厳しいぞ?
時刻は昼過ぎだろうか。
「おいピエル。あいつら昼も働きっぱなしなのか?」
「当たり前だろう。奴隷とは日の出から日没まで働くものだ。夜に働く者もいるがな。」
能率が悪いだろ。 これはビレイドに指導しておいてやろう。八時間労働をするなら間に一時間の休憩を挟めってんだ。
「ローランド人を全員集めておけよ。明日には出発するからな。」
「ああ……な、なあ、アーニャはどうなる……?」
「俺が治す。」
「ど、どうやって?」
うるせぇなぁ。お前が心配することじゃないだろ。でもまあ心配だよな。
「迷宮を踏破すれば神から恩寵が貰える。それなら治るだろ。」
「め、迷宮だと? 未だ誰も踏破してないと聞いているが……」
「楽勝だ。神域に行くのは慣れたもんだからな。もっとも、あいつを連れて迷宮に行くのは壊れた奴らを運び終わってからになりそうだがな。」
「運ぶ? ローランドに連れて帰ってくれると言うのか?」
「だいたいその通りだが、少し違う。壊れた奴らは男女問わず俺の領地で働かせる。」
「領地だと? まさかその若さで領主だと言うのか?」
領主かって言われると……やっぱ領主かな。
「まあ、そんなところだ。場所はローランド国内じゃないけどな。」
「は? 国内じゃないって……まさか魔境か!? い、一体どこに……!?」
へー。こいつバカじゃないな。行動と頭脳が合ってないな。意外。
「ノワールフォレストの森とヘルデザ砂漠の間だな。ちなみに先代、そして今代国王陛下からも無税の許可を貰ってるぜ?」
「ま、まさか
「その通り。今は十六代目クレナウッド・ヴァーミリオン・ローランド陛下の御世だぞ。」
「そうか……時は流れているのだな……王太子殿下がついに陛下になられたのか……
グレンウッド陛下のご冥福をお祈りします……」
あ、こいつ勘違いしてる……
「先代陛下は生きて、いや、ご存命だぞ。色々あって魔境の開拓に従事されてる。」
「はぁ!? 魔境!? な、何を言って……」
「それはまあいいだろ。バンダルゴウに帰ったら聞け。伯爵夫人にでも。」
「
「百人までなら問題ない。いいからお前はローランド人をきっちり集めとけ。そうすれば分かる。」
「あ、ああ……」
もはやアラキ島を蔓喰がどう支配するかなんてどうでもよくなってしまった。今、私が気になるのは心が壊れた者たちをどう救済するかってことだ。いくら何でも全員をぞろぞろ引き連れて迷宮行なんて不可能だからな。
悪いが、私が全力で救うのはあいつだけだから……
昼からは農場で働いている者以外の全てを確認した。
掘立て小屋で春を
だいたい分かった。これは
エチゴヤのやることなんてこんなもんだろう……どうやらあいつらは長期的に儲ける気なんてないようだ。今いる人間を使い潰して酒と砂糖で稼げるだけ稼ければいいと考えてるようだ。元々ここは蔓喰ものだしな。奪っただけで丸儲けだもんな。よぉく分かった……
エチゴヤか……絶対に全滅させてやる……
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