1529話 西の街道封鎖
おばさんの店は入り口が固く閉ざされていた。そりゃそうだ。なら別に今じゃなくてもいいか。それなら先に西の街道を制圧しておくかな。今なら西に逃げようとしている奴らが何人かいそうな気がするしね。
「アレク、予定変更。西の街道を制圧するよ。後でアラニシとまとめて対処しようと思ってたけど、余計なことはさせないに限るからね。」
「いいわよ。それなら私はここに残ってローランド人への対応をしておくわ。さっきのような男たちに傷でもつけられたら大変だもの。」
うっ、一緒に来てくれないのかよぉ……でもアレクが正しい。
「それでいこうか。じゃあ頼んだね。カムイもアレクを頼むぞ?」
「ガウガウ」
コーちゃんは一緒に行こうねー。
「ピュイピュイ」
では空から西へ。ゴーゴゴー。
カドーデラの話によるとアラナカからアラニシへは早歩きで六時間程度。襲撃と同時に出発したとしてもまだ半分も行ってないだろう。つまり余裕で追いつく。まあ逃げた奴がいればの話だが。
ざっと上空から見たところアラニシとの中間辺りを馬車が走っていた。それもペース早めで……怪しいから『風操』止めよう。
「な、なんだぁ?」
懐かしいな。昔グリードグラス草原に拐われたサンドラちゃんを助けたことを思い出したぞ。あの時も風操で馬車を止めたんだっけな。
『麻痺』
御者に用はないんだよ。気になるのは幌に覆われた中身だ。おっと、私が開けるまでもなく中から男が二人、飛び出してきた。
「てめぇ! 俺らを知らねぇのかよ!」
「アラキ島でエチゴヤに逆らって楽に死ねた奴ぁいねえぞ!」
なるほど。アラナカが襲われた件とは関係なしにアラニシへ向かってただけか。でもエチゴヤだからアウト。
『風斬』
首ちょんぱ。では荷台を改めようかね。
『風操』
ご開帳。ちっ……なるほどな。半裸の女が四人に傷だらけの男が二人。後は食料らしき箱か。
『金操』
手錠に足枷、全てぶち壊した。
「お前らの中にローランド人はいるか?」
「わ、私だけ……」
おっ、一人いたか。よーし。
「ローランドに帰りたいか? 帰りたいなら帰してやるぞ?」
「えっ! ほ、ほんとに!? か、帰りたい! 帰りたいよぉ!」
「いいぞ。とりあえず全員アラナカまで帰ってろ。誰か馬車の運転ぐらいできるだろ?」
私はできないけどね。
「え……そ、そんな……このままアラナカに帰ったら殺され……いや、もっと酷い目に遭わされるよぉ……」
「いいから帰ってろ。アラナカとアラキタはもうエチゴヤの支配下じゃないからよ。明日にはアラニシもそうなる。だから心配いらないさ。」
「あ、あんた一体何者なんだ……」
傷だらけの男が口を開いた。
「言っても知らんだろ。あー、これはサービスだ。二人で半分ずつ飲みな。」
「す、すまない……」
「ありがたく……」
「ちなみにこの御者はエチゴヤの者か?」
「い、いや、私らより待遇はいいけど……奴隷だよ……」
へー。それなら殺さなくてよかったな。麻痺解除。
「なら帰りはそいつに運転してもらいな。アラナカに戻ったらカドーデラって奴かビレイドって奴に相談するといい。悪いようにはならんさ。」
「うおお……こ、このポーションは!」
「す、すごいぞ! なんて効き目だ!」
ローランド製高級ポーションだからね。
「ほら、さっさと行け。」
「あ、ありがとう! 私ローランド王国に帰れるんだね!?」
「ああ、帰れる。大丈夫だ。」
よし。馬車は来た道を引き返していった。では空から後ろを付いていくぜ。エチゴヤの奴がこの光景を見たらきっと不審がるだろうからな。
それから、馬車がアラナカに戻るまでにエチゴヤの者を三人ほど捕まえた。エチゴヤ以外にも真っ当な行商人もいたが、まとめてアラナカに戻ってもらった。まだアラナカが蔓喰の支配下になったって情報が漏れちゃ困るからな。どうせ明日までの辛抱だと快く納得してもらった。
「お前、ローランドのどこ出身だ?」
「わ、私、ドナハマナ伯爵領のテノヌ村。あなたは?」
へー、ドナハマナ伯爵領か。やっぱあの辺の奴らって拐われやすいのかねぇ。アブハイン川流域だと、大勢拐ってもバンダルゴウまで船でまとめて運べるもんなぁ。ムカつくわぁ……
「フランティア領のクタナツだよ。じゃあまた後でな。アラキ島のローランド人が全員集まったら一旦テンモカまで戻るからな。」
「クタナツ!? だからそんなに強いの!?」
「まあ、間違いでもないかな……」
捕まえたエチゴヤの三人をカドーデラに渡しに行こう。それからアレクと合流して夕食だな。さすがに今回は全員に振る舞うなんてつもりはないからな。でもアラニシではやりそうだな。過酷に働かされてそうだもんな。いよいよ明日でアラキ島制圧も終わりだな。カドーデラとドロガーを連れてきて正解だった。だいぶ楽ができてしまったよ。
その分カドーデラとビレイドは忙しそうだね。そこにエチゴヤを三人追加。がんばれー。
さて、アレクの待つ歓楽街へ戻ろう。あっちでもローランド人が集まった頃だろうか。
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