1505話 第二試合 カドーデラ VS カムイ

『それでは! 第二試合を始めます!

一人目は! 闇ギルド、ヤチロ蔓喰つるばみ若者頭わかものがしら! 人斬りカドーデラこと! カドーデラ・タカマチ選手! 出身は今や廃村になってしまったヒナグマゴ村! 噂ではヒナグマゴ村の再興を夢見て戦い続けているとかいないとか! 三日目の戦いぶり、流血ぶりにデメテーラ様もいたくご満足されていたとのことですので! 新生ヒナグマゴ村には祝福がいただけるかも知れません!』


村ごと皆殺しにされて、闇ギルドに入って、村の復興を狙う。やっぱスパラッシュさんそっくりじゃん。たぶん、こうやって歴史から消えた村っていくらでもあるんだろうなぁ……


『二人目は! 昨日の激闘を見事制した白い狼! 魔王の牙ことフェンリル狼のカムイ君です! ここから見ても分かるほど元気がなさそうですが! 果たして戦えるのでしょうか!?』


まったく……無茶しやがって。


『それでは! 第二試合を始めます! 見合って見合って!』




『始め!』


「ひぃぃやぁぁぁぁぁーーーー!」


カドーデラの奴、いきなりかよ! カムイからの反撃なんか怖くないと言わんばかりに刀を振り上げ、胴体はガラ空きだ。

すっと避けるカムイ。確かにカドーデラよりだいぶ早いが……いつもの目にも止まらぬ動きからすればスローもいいところだ。私の目でも追えるんだから。そうなると、当然カドーデラだって……


「逃しやせんぜ! ひぃやぁーとぉ!」


それでもカムイは距離を取り続けている。反撃の気配を見せないな。いや、あれは距離を取ると言うより……


『おおーっと! カムイ君はどうしたことなのか!? 紅蓮獅子ライオネル君が相手でも前に出続けていたのに! 今日は一合も交えることなく逃げ続けているぅぅーー!』


そう。逃げているようにしか見えない。カムイらしくもない……

らしくないと言えばカドーデラもだ。まるで後がないとでも言わんばかりに、やたらめったら振り回してやがる。いくら今のカムイでもそんだけ大振りばっかしてたらそりゃあ逃げてしまうだろ……


「ふふ……さすがはカムイの兄貴。アタシがこぉんなに隙を見せてるのに、少しも踏み込んできやせんね?」


そう。逃げるのも簡単なら攻めるのも簡単なほど隙だらけだった。どうもカムイは警戒しているようだな。何を……あ、まさか。


「ガウ」


「へっ、何て言ってるのか分かりやせんが、来ねぇならこっちから行くだけでさぁ!」


おっ、飛び道具か? 何か投げたようだが……


『ガウアアアーーーー!』


おっ、わざわざ魔声を使ってまで弾き返しやがった。物理攻撃に魔声で反撃するのってめちゃくちゃ効率悪いくせに。


跳ね返った何かは両者の中央あたりに落ちて、煙をあげた。煙玉? いや違う! ペプレの粉末を混ぜてやがる! さすがにカムイの弱点はバレバレだもんな。

案の定、カムイは会場の端、壁際まで後退している。どうするつもりだ? カドーデラはまだまだ大量に持ってるだろうぜ? 一個あたり百万ナラーは軽くかけた贅沢玉をな。


「ひぃやぁぁぁーー!」


しゃにむに斬り込むカドーデラ。しかし、刀の間合いどころか、槍の間合いにすら近寄らせないほど逃げまわっている。もしかしてカムイの奴……


「参りやしたぜ。そう逃げられたんじゃあ追いつけやせんぜ? そうなりやすと、アタシとしちゃあここで座って待つ他ないんですがねぇ?」


ちっ、カドーデラの野郎。余裕見せやがって。普段のカムイなら一瞬で肉薄できる程度の距離だが、今は無理か……

カドーデラもそれを分かって挑発してるってわけか。


『おおーっと! カドーデラ選手は会場の中央! カムイ君は壁際で動きを止めてしまったぁぁーー! これでは勝負になりません! それならば仕方ありません! 一旦休止です! 十五分ほどお待ちください!』


なんだ? そんなのアリか? 司会の姉ちゃんは審判も兼ねてるから何でもアリなんだろうけどさ。

カムイは動かない。カドーデラはカムイと反対の壁際に寄りかかり、刀を納めた。そして腕を組んで仁王立ちか。




ああ、なるほどね。カムイが逃げまわるせいでこうなってしまったか。

運営側としては当然の処置だろうな。


私が先日造った石畳が並べられ、たちまち武舞台ができあがってしまった。しかも広さは十メイル四方と、だいぶ狭くなってやがる。




『大変お待たせいたしました! それでは両者とも武舞台にお上がりください! 今度は場外負けもあり得ます! 存分にお気をつけて戦ってくださいね! 見合って見合って!』




『始め!』


「ひぃぃああぁぁぁぁーーーー!」


いきなりカドーデラが全開だ。やはり刀を大きく振り上げ、カムイを誘ってやがる……


「ガウッ!」


おおっ! カウンター気味に頭突きが決まった……のに、カドーデラは数メイルほど後退するのみ。吹っ飛びもしない。それどころか……


「もらったぁぁぁーー!」


刀を素早く持ち変え、下向きの串刺しスタイルでカムイの背中を……


危ねぇー! もう少しカムイが退くのが遅かったら……背中のど真ん中に……


「逃がすかぁぁーー!」


素早く距離をとるカムイだが……カドーデラの追撃も負けてない。勝負賭けてんな……

狂ったように刀を振り回すカドーデラ。私と決闘した時を思い出すな。上だろうが下だろうが全部斬ると言わんばかり、さすが人斬りと言われるだけのことはある。だが、魔物と戦った経験はそうそうないだろ? ここはヒイズルだもんな。


『ガウアァァァーーーー!』


あれ? 魔声使うの? ここは違うだろ。距離とって魔声だなんて逃げ腰かよ。


「カァァァーーー!」


ほらぁ! 会場中をビビらせたほどの威力なんか全然出てないじゃないか。その程度の魔声じゃカドーデラは止まらないって! あぁーもう! 魔声の出し終わりを狙われて……

あぶねぇーー! 毛がごっそり切れてる! やっぱムラサキメタリックはやばいって! いや違うか。カドーデラの腕もあるのか。これは手がつけられんな。何とかに刃物状態じゃん……逃げろ! カムイどうにか逃げろ!

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