1503話 豊穣祭 七日目 総合優勝決定戦
『さあ! いよいよ七日目も本番です! 優勝者たちよ! 覚悟はいいですか!? それでは一人ずつ紹介していきますよ!』
今日もこの姉ちゃんは元気だなぁ。
『一人目! 素手部門の優勝者は! 昨年も素手部門を制しました我らがご領主様! シュナイザー・アラカワ侯爵閣下です! 昨年は惜しくも総合優勝を逃してしまいましたが! 今年こそはと意気込んでおられます!』
素手で武器や魔法に対抗するのは無理があるだろ……
『二人目! 刃物なしの武器部門の優勝者は! アラカワ騎士団の変わり種! 剣ではなく
確かほぼ無傷で優勝を決めてたよな。護手双鈎か……世の中には色んな武器があるもんだよな。
『三人目! 刃物ありの武器部門の優勝者は! アラカワ領の裏の顔! 闇ギルド、ヤチロ
闇ギルドがこんなに大々的に人前に出ちゃっていいんだろうかね。世の中には知られてないことこそが武器って場合もあるだろうに。
『四人目! 魔法のみ部門の優勝者は! ローランドのヘタレ殲滅虐殺魔王こと! カース・マーティン選手! なお! 四日目だけでなく! 五日目の何でもアリ部門でも優勝しております! 誰か魔王を討伐する勇者はいないのでしょうか!?』
上手いこと言ったつもりか!? それにしても虐殺か……エリザベス姉上は元気にしてるんだろうか。兄上一家も人数が増えてるんだろうなぁ……一度様子見にローランドに戻ろうか。でも戻ったらもう旅に出るのも面倒になってしまいそうな気もする。まあいいや。まだ先の話だし。
『五人目! ペット部門の優勝者は! 魔王の牙こと! 白い閃光フェンリル狼のカムイ君! ローランド王国はるか北! 魔物はびこる大森林! ノワールフォレストの森にて禁忌と恐れられる稀少な狼です! 昨日の決勝戦! 紅蓮獅子のライオネル君との戦いは壮絶の一言でした! 本日は飼い主である魔王選手との対戦もあり得ますので! ぜひとも健闘して欲しいものです!』
無理だな。今日のカムイはぼろぼろだ。できれば私と当たって欲しいんだけどな。なるべく傷をつけずに終わらせたいからな。
『それでは! 今から抽選を行います! 係の者が参りますので札をお引きください! あ、カムイ君は引かなくていいですからね!』
領主から引くのね。ふむふむ、あいつは五か。次の奴は一、カドーデラは三。
「どうぞ」
私は……二か。
『対戦が決まりました! 第一試合は! キンカラ・シバタ選手対魔王選手!
第二試合はカドーデラ選手対カムイ君です!』
なるほど。五を引いた領主はシードってわけか。本来なら第三試合まであったんだろうけどな。
『それでは早速第一試合を始めます! 両選手とも位置についてください!』
今日の定位置は昨日までと違っている。まるで土俵で見合う力士のように近い。何でもアリな分、素手や刃物を使わない選手に配慮しているってことか?
「いい試合をしよう」
ほう。イケメンの上に爽やかスマイルで握手を求めてくるとは。
「ああ。だが握手は試合の後でいいだろ。その手に何が隠されてるのか俺には見えないからな。」
「ふっ、いい目をしている。さすがだな」
そう言って手の平を見せてくる。へー、何やら針を握りこんでたのか。まあよくある手段だもんな。もっとも、それが猛毒だとしても私には効かないけどね。
『それでは! 豊穣祭最終日! 総合優勝決定戦! 一回戦第一試合を始めます! 見合って見合って!』
『始め!』
さっと後退し間合いをとった私に対してキンカラは悠然と構えている。積極的に攻めてくるタイプではないもんな。こいつの戦いは二日目の決勝戦しか見てないけど。そして今日の私の戦い方は……
「棍だと? 折れても知らんぞ?」
「折れるもんなら折ってみな。」
イグドラシルの棍『不動』を使うことにした。
『おおーっと! 魔王選手どうしたことか!? こともあろうにキンカラ選手を相手に棍を取り出したぁぁーー! 叩き折られてしまいそうなものですが!』
二日目の決勝戦では確かに相手の棍を折ってたな。
まずは様子見。細かい突きを連発する。なんてったって棍は間合いが有利だもんな。近寄らせてなんかやらないぜ。
「てんで基本がなってない。それでよく棍なんて使っているな」
うるせぇな。正論を言いやがって。この不動は当たれば勝ちだからいいんだよ。
それにしてもこいつの
二刀流、いや二剣流とでもいえばいいのか。両手にそれぞれ握られているため防御が堅い。今のところ防御に徹しており攻めてくる気配はないが……
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