1496話 二回戦終了

よし。私たちの出番だな。

出場人数が少ないからさくさく出番が来るんだよな。


『二回戦第四試合を始めます!

一人目は! もはや手に負えない! ローランドの悪虐魔王ことカース・マーティン選手と! フェンリル狼の白い閃光カムイ君です! 目にも止まらぬ一瞬の動き! 閃光が走ったようにしか見えませんでした! どうすれば止められると言うのか!?』


おお、白い閃光か。かっこいいじゃん。よかったなカムイ。


「ガウガウ」


『二人目は! 北はオワダの六等星冒険者! エルク・ナラシーカ選手と! ステルスゴーストのスケル君です! 非常に厄介な魔物です! だって見えないだけでなく魔力すら感じないんですから! 一回戦は対戦相手が魔力切れで勝負ありとなってしまいました! さあ二回戦はどんな戦いになるのか!?』


ゴースト系か。悪いが相手にもならないな。私でもカムイでも。


『それではエルク選手! スケル君を召喚してください!』


ほお。最初はちゃんと見えるのね。透明な青い鹿って感じだな。昔、楽園で見たことがある。あの時は対処法を知らなかったから少し慌ててしまったよな。いくら魔法を撃ってもすり抜けるんだからさ。

それにしてもあいつ、エルクって言ったか。六等星冒険者にしては細いな。私もそんなに太い方ではないが、そんな私より細い。むしろガリガリと言っていい。なのに顔は丸々として目もぎょろぎょろとしている。まあ見た目なんかどうでもいいけどさ。


『それでは始めます! 位置についてください! 見合って見合って!』




『始め!』


『ガウウウウウウーーーー!』


カムイの魔声ませいが炸裂した。術者は腰を抜かし、召喚獣は消えた。終わりだ。


『えっ……今のはもしかして……』


『終わりだぞ。ゴースト系の魔物は魔力を直接ぶつけられると弱いからな。』


姉ちゃんが分かってないようだったから教えてやった。やっぱ司会だけでなく解説が必要だよな。


『し、勝負あり! カムイ君、カース・マーティン組の勝ちです!』


当然こうなる。ゴースト系は魔法使いにとってはカモだよな。召喚獣やペット同士の戦いだと勝てないこともありそうだけどさ。


それにしても召喚獣がゴースト系だったら偵察とか調査をするにはかなり便利なんだろうな。どこでも入れてしまうし。冒険者稼業には重宝するよね。


「ガウガウ」


バカ。お前ほど最高の召喚獣なんかいねーって。きっと勇者の召喚獣、金毛白面九尾の狐タマモよりもお前の方が上だぜ。空を飛べない分ぐらいはイタヤの召喚獣、白毛金爪双尾の隼ファルコに一歩譲るだろうけどさ。そうだろカムイ?


「ガウガウ」


当然だって? ふふ、お前は最高の相棒だぜ。




それから。

カシラのネズミもキヨバルの獅子も順当に勝ち残った。あのネズミすごいな……二回戦では馬の魔物ユニコーンに勝ってたし。まあユニコーンにしてみれば標的が小さすぎてどうにもならなかったみたいだけど。そこからカシラを狙おうとしたけどすでに遅く、ネズミに目玉を瞼ごとかじられてたなぁ。

キヨバルの紅蓮獅子は体当たり一発で相手の召喚獣、ブラックオークを飼い主ごとぶっ飛ばしてたな。すごいパワーだった。




そして昼休憩を挟んで三回戦。残り十二組か。


『さあ! 昼からも張り切っていきましょう! 三回戦第一試合を始めます!

一人目は! もうすっかりお馴染み! ローランドの残酷魔王ことカース・マーティン選手と! フェンリル狼の白い閃光カムイ君! 動きだけでなく魔力まで一級品! こんな相手と対戦だなんて可哀想になってきます!』


まあ、カムイは反則だよな。ちょっと無敵すぎる。そりゃあもちろん弱点はあるけどさ。だからってねぇ……


『二人目は! 蔓喰の若者頭! ドスヤスことヤスオオズ・オオニシ選手! 相棒はドス鼠のチュータ君! ここまで堅実な戦い方で勝ち上がって参りましたが! 果たして三回戦はどう戦うのか!?』


カムイには戦い方をアドバイスしてあるが、こいつが私の言うことを聞くかどうか謎なんだよな……


『それでは始めます! 位置についてください! 見合って見合って!』




『始め!』


『ガウウウウウウーーーー!』


おっ、ちゃんと言う通りにしたのかよ。偉いぞカムイ。小さいからって舐めずにきちんと牽制しておくことが大事なんだからな。


カシラには少し効いたようだが、肝心のネズミはどこだ?


あらら、カムイったら。ネズミがいないなら術者を狙うとばかりにカシラに突っ込んで行っちゃったよ。もう少し慎重に戦えばいいのに。

それにしても反撃できないってのは大変だよな。腹にまともにカムイの頭突きをくらってやがる。うわー吹っ飛ぶねぇ。


「ガフンガフン!」


なんだ? カムイが苦しんでるぞ? あっ、まさか……カシラめ。やりやがったな? あれを反撃と言うには少し苦しいか。カシラの知恵が上手だったんだろうな。で、ネズミはどこだ?


『おおーっと! カムイ君が苦しんでいます! チュータ君が見つからないため術者のヤスオオズ選手を狙ったのはいいですが! どうやら偶然! 懐に入っていた胡椒の袋を破いてしまったようです! これはカムイ君も不運でしたね!』


「ヂュヂュウーーーー!」


おっ、これはびっくり。私の足元からネズミが現れたではないか。穴を掘ってここまで来たのか。やるねぇ。

そのまま素早く私の体を登り……首筋に牙を突き立て……たいんだろうけど無理だな。私は体表を自動防御で覆ってるからな。ムラサキメタリックでもない限り突破はできまい。

しかもあまり時間をかけてると……


『グオオオオオォォォォーーーーーー!』


カムイの魔声が炸裂するってわけだ。しかもさっきのと違って周囲全体に作用するバージョンだ。さっきのは目の前を攻撃するだけだったからな。

カムイもムキになってるな。目と鼻が効かなくなったからって全体攻撃かよ。


「チュ、チュウ……」


あーあ。すっかり萎縮しちゃったよ。魔力込めすぎなんだよ。ドラゴンでも脅すつもりかってんだ。

ネズミは文字通り尻尾を巻いてカシラのところへ帰っていき、そして消えた。


『し、勝負あり……カムイ君の勝ちです……

というかやめてくださいよ! 私まで震えが止まらないんですけど……』


司会の姉ちゃんだけでなく、観客まで。それどころか横で見ていたペットや飼い主、参加者達まで震えてやがる。平気そうにしているのは……紅蓮獅子ぐらいか。

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