1495話 双頭百足ピート VS 紅蓮獅子ライオネル
おお! これは見応えあるなぁ。全長三メイル弱の紅蓮獅子と全長十メイル超えの双頭百足が正面からぶつかり合ってる! が、ムカデの方は力負けしてるな。代わりに鋭い牙、
逆に獅子のひと噛みごとにムカデの足が千切れていく。
「ヒッシャーーーー!」
うおっ、ムカデが何か吐いたぞ? ほう、さすがの獅子もそれは避けるのか。
『おおーっとぉ! 双頭百足のピート君! 早くも切り札の溶解液を浴びせかけたぁぁーー! さすがのライオネル君もこれには避けるしかなぁーい!』
へー、溶解液? ムカデのくせにそんなもので吐けるのか。かなり危険なのかな?
「ガウガウ」
あいつは毛が傷むのを嫌がったって? 確かに真っ赤できれいな毛並みをしてるけどさ。カムイといい紅蓮獅子といい、こだわる奴はこだわるのかねぇ。
「ガウガウ」
戦いの最中にそんなことを気にしてるようじゃ大したことないって? カムイ……その発言はブーメランじゃないのか……?
こうしてカムイと話している間に勝負は決まった。ムカデが獅子の体に巻きついて締め上げようとしたが、獅子ときたら全く意に介さずムカデの頭を丸かじりしやがった。
頭が片方だけになってもムカデは戦おうとしていたが、突如消えた。術者が召喚を解除したのだ。
『勝負あり! 紅蓮獅子ライオネル君、キヨバル・アラカワ組の勝利です! 終わってみれば一方的な勝負となってしまいました! 恐ろしい魔物をペットにしているものですね! さあ! 一回戦が全て終了いたしました! 引き続き二回戦へと参りましょう!』
ふと見ればキヨバルは会場の隅の方で紅蓮獅子にブラッシングしているではないか。勝負の最中に余裕かましてんな。どれ、少し話してみようかな。
「よう。圧勝だったな。やるじゃん。」
「やあ魔王君。君のところのカムイ君だっけ? そっちこそ圧勝だったじゃないか。」
「まあな。それより紅蓮獅子って言ったか。どこから連れてきたんだ?」
「ライオネルは南の大陸生まれさ。こっちに来たのはまだ小さい頃かな。これでもまだ二十三歳でね、僕より二歳下さ。」
なんと……
「南の大陸か……あっちはそんな魔物が多いのか?」
「僕も詳しくは知らないけどさ『獅子』と呼ばれる系統の魔物は種類が多いそうだよ。その中でも紅蓮獅子は『砂漠の王者』とも呼ばれる種族だそうだよ?」
「砂漠の王者か。それは手強そうだな。対戦するのを楽しみにしておくとしよう。」
誰が言い出したのか知らないが、カムイの異名は『魔王の牙』。これはこれで悪くないけど砂漠の王者に比べると少しインパクトに欠けるか……何かないかな?
『ノワールフォレストの森の王者』
『密林の覇者』
『森の白い閃光』
『禁断の白い狼』
『アンタッチャブルフェンリル』
うーん……どれもぴんと来ないな。まあ無理して張り合う必要もないか。異名なんて自然と言われるようでないと違和感ありありだもんな。
「グルルルゥゥ……」
「おっ、何て言ってんだ?」
「威嚇しているようだね。カムイ君を強敵だと認めているようだよ。」
へぇ。カムイの強さが分かるのか。
「ガウガウ」
「グルルルゥゥ!」
「カムイは、お前はドラゴンより強いのか? と聞いたんだが、ライオネルは何て返事したんだ?」
正確にはカムイは挑発したんだけどね。お子ちゃまだなぁ。
「よく分からないなぁ。今すぐやるか!? って感じじゃないかな?」
「あらら、それはいかんな。離れておくわ。まあ当たるのを楽しみにしとこうぜ。」
「そうだね。場外乱闘で勝負が決まってしまうのは興醒めだからね。じゃあお互い頑張ろう。」
「ガウガウ」
分かってるって。お前の白い毛並みの方が美しいよ。間違いない。え? 赤は下品? そんなわけないだろ。赤はアレクに似合う色なんだから。あー、確かに紅蓮獅子は立て髪だけ金で他は全部赤だもんな。全身を赤いドレスで決めたアレクと似たような配色だよな。つまりセンスのいい色あいだ。
「ガウガウ」
自分の毛並みが一番きれい? それは間違いないな。お前の純白の毛皮は手触りもいい上に見た目も素晴らしいぞ。ケイダスコットンや魔境のシルクどころじゃないさ。その上大抵の魔法は弾き返すし……反則だろ! いや魔法どころか刃物だって効かないよな? お前ってマジで無敵だよな。
そんなカムイでも……私がエルフのフェアウェル村で倒れた時には傷だらけになりながら駆けつけてくれたんだよな? あの時のお前って血まみれでドス黒く染まってたらしいじゃん。お前ほどの魔物がどうしたことだったんだ?
「ガウガウ」
あー、山岳地帯の魔物はどいつもこいつも手強いって? 特にトレント系が厄介だったって? 意外だな。お前なら余裕で逃げられるだろうに。
「ガウガウ」
密集してた? マジかよ……普通トレントって隙間を広々ととって生息してるんじゃないのかよ。やはり山岳地帯は怖いな。
で、回り道をするような余裕がなかったから二、三本ほど無理矢理ぶち折って突破したわけか。すごいな……
「ガウガウ」
あー、他にも厄介な魔物だらけだったのね。マジであの時はよく来てくれたよな。お前はいい奴だよ。ありがとな。よし、二回戦を見ながらブラッシングしてやるよ。おーお、さらさらした毛並みだよな。いつもながら手触りもいいし。もふもふ最高。
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