1493話 豊穣祭六日目 ペット部門
うう……ん……頭が痛い……
昨夜は飲み過ぎたか……
外は……まだ薄暗い……ほっ。寝過ごしてはいないようだ。今日はカムイの晴れ舞台だからな。寝坊するわけにはいかない。
ぷぷっ、アレクったらバイオリンを握ったまま畳にうつ伏せで寝ちゃってるよ。これはあれだな。顔に畳の跡がつくパターンだな。少し黙っていよう。きっと可愛らしいに違いない。
「ガウガウ」
おおカムイ起きたか。
「ガウガウ」
散歩に行ってくるって? 朝食までには帰ってこいよ?
さてコーちゃんは……
あらあら。これは艶かしい。アレクの太ももに巻きついてるじゃないか。絹のような肌触りのアレクの太ももに……ごくり。
せっかく目が覚めたことだし、庭で体を動かそうかな。イグドラシルの棍『不動』を振ろう。
ふう。早朝からいい汗かいた。健康的だね。さて、ひとっ風呂あびて朝食にするかね。
うん。全員集合で飯が美味い。今日も元気にがんばろう。カムイ以外は見てるだけなんだけどさ。
うーん、やはりアレクの頬が可愛いらしいことになってる。もうしばらく黙ってよう。どうせすぐ消えるだろうし。
闘技場へ到着。コーちゃんの分の出場取り消しを伝えると後は待つだけ。アレクとコーちゃんは客席に、私とカムイは参加者側に。飼い主や召喚主枠だからね。まあ、例によって武舞台周辺に集まるだけなのだが。つーか武舞台がない。剥き出しの砂地じゃないか。せっかく昨日私が作ったのに。どこへ行った?
「魔王さん、おはようごぜぇやす。」
「おっ、カシラ? おはよ。まさか出場するの?」
蔓喰の若者頭じゃん。
「へへっ。あっしぁこれでも召喚術にぁ覚えがありやしてねぇ。魔王さんとこの狼と対戦するのを楽しみにしてやすぜ?」
「ガウガウ」
「相手してやるってさ。俺は見てるだけだけど、いい勝負をしようぜ。」
「へいっ。そんじゃあっしはこれで。」
ゴッゾより大きくごっつい体で召喚術ときたか。魔法が使える人間なら誰でも召喚はできるけどさぁ。問題は運と魔力なんだよな。普通の召喚獣は
後は運。珍しいケースではあるが魔力だけ全て吸われて喚べないのは幸運な方で、不運なのは実力以上の魔物を喚んでしまって食い殺される場合とかね。他にもレアケースとかあるんだろうね。
その点ゼマティス家の元二女、今は長女のシャルロットお姉ちゃんなんかいいよな。あの猛毒蜘蛛のサイズなら魔力消費はたかが知れてる。それなのに毒はえげつないときたもんだ。たぶんカムイには効かないとは思うけど、やっぱ毒使いって強いよなぁ。
「やあ魔王君。昨日はすごかったね。」
「おう、おはよ。参加するのかい?」
キヨバル・アラカワだ。こいつって魔法のみ部門にだけ参加するって言ってなかったっけ?
「少々思うところがあってね。思い切って参加してみたのさ。」
それは思い切ったもんだね。
「見たところ召喚獣かい? いい勝負をしよう。」
「いや、ペットさ。まだ上屋敷にいるよ。危ない子なもんでね。ギリギリまで運ぶのを待ってるんだ。」
「へー。それは楽しみだな。頑張ろうぜ。」
「ああ。いい勝負をしよう。」
「ガウガウ」
匂いから相手が分かったって? いい鼻してるよなぁ。まあお手柔らかに相手してやんな。
『皆さん! 大変長らくお待たせしました! これより! 豊穣祭六日目! ペット部門を開催いたします! さあ! すでに抽選は済んでおりますのでサクサク行きますよ! とは言いましても参加者数四十五! ペットを飼っている方は多くても愛する家族を参加させようと思う方は少ないようですね!』
確かに少ないな。
『それでは! 改めてルールを説明します! ペット部門に場外負けはありません! どちらかが死ぬか降参するまで戦ってもらいます! もっとも召喚獣であればここで死のうとも問題はありませんけどね! ペットの場合は死ぬのが嫌なら早めに降参の意思を示して逃げることです! そしてもちろんですが! 開始の合図の前に攻撃をした場合は負けとなります! 勝負ありの判定後に攻撃しても同様です! また! 試合開始後に飼い主から魔力供給が認められた場合も反則負けです! 私の目は欺けても! デメテーラ様はまるっとお見通しですからね! どうなっても知りませんよ!』
血が大好きな神にしては真っ当だが……あてにはならんな。
『それでは一回戦第一試合を始めます!
一人目は! ヤスオオズ・オオニシ選手! テンモカに君臨する闇ギルドは
ねずみ? 強いのか弱いのか分からないな、どう戦うのか見ものだね。
『二人目は! ジョナス・ウミネ選手! テンモカギルドのパーティー『赤い
これは酷い……ネズミ対カモメだと? 勝負になんないじゃん……
『さあ! 勝負を始めますよ! ヤスオオズ選手! 召喚してください!』
あ、なるほど。ペットと違って召喚獣は喚んでる間はずっと魔力が減るから開始直前に喚ぶわけか。
げっ……本当にネズミだ。ドブネズミよりは大きい。手の平二つ分ぐらいか。このサイズでも台所に現れたら大事件だが……
一方相手のカモメは……どう見てもカモメだ。普通のカモメとの違いが分からない……
『それでは! 位置について! 見合って見合って!』
飼い主と召喚獣がそれぞれ所定の位置につく。
『始め!』
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