1491話 禁欲の果て
カースったら。また寝ちゃったのね。この寝顔を見ると、とても魔王だなんて呼ばれてるとは思えないわ。特徴がなくどこにでもいそうな凡庸な顔だなんてよく言われるけれど、私から見れば唯一無二の顔。
それにしても今朝は凄かったわ……頭がおかしくなりそうなほど素敵だった……
まさか開始前に全員を仕留めてしまうなんて。その後だって……闘士たちが全然相手になってない。無敵すぎるし素敵すぎる……
なのにカースったら禁欲だなんて……あんまりだわ……
しかも、禁欲させておいてあんなに私が燃え上がることをしてくれるなんて……カースが欲しすぎて頭がどうにかなるかと思った……
あまりにも我慢できなかったから宿に帰って一人で……たくさんしちゃったけど……
少しはすっきりしたわね。でもカースに抱かれることに比べたら誤差みたいなもの……いつまで私は禁欲しないといけないのかしら……そ、それは確かに私が悪いし、仕方ないけれど……カースのバカ……
「ち、ちっす! そろそろ夕方ですぜ?」
「よ、よくお休みのようで……」
「お、俺らぁお先に失礼しやすんで!」
「ええ。背中に気をつけてお帰りなさい。」
先ほどの冒険者だ。聞けば今日は豊穣祭を見物に行ったのだが、あまりに早く決着が着いたために午後から仕事をすることにしたそう。私を見て良からぬことを考えたみたいだけど、寝ているカースを見たらすぐ黙ってしまったわ。一昨日の私の出番を見てないというのは残念ね。
男ってバカが多いのよね。女と見れば下半身を膨らませて突っ込むことしか考えてない。カースが私以外の女に興味がないように、あいつらも一人の女に愛を捧げることぐらいできないのかしら?
私だってカース以外の男なんか全然眼中にない。浮気なんてこれっぽっちもしたいなんて思えない。当たり前よね。カースよりいい男なんかいるわけな……あ、剣鬼様……
も、もし、今朝みたいに私の体が燃え上がっている時に……剣鬼様に口説かれたら……それどころか無理矢理組み敷かれたら……
だ、大丈夫……私はカース以外の男に興味なんてないんだから!
あ……こんなこと考えてたら……また……んっ……
もう! カースのバカ!
『水球』
「ぶふっ! げほっ! 雨?」
「カース、そろそろ夕方よ。帰るわよ!」
「う、うん。あれ? 晴れてるね……」
「カースのバカ!」
んん? いきなり顔に水がかかったかと思えば、アレクにバカと言われた。
しまった……そうか。せっかくこんな場所で二人きりなのに、私ときたら寝てばかりで……いかんな。これは確かに怒られても仕方ない。せっかくバイオリンだって弾いてくれたのに。
「アレク、今日はありがとね。おかげで元気になったよ。いい一日だったよ。」
と言いつつほっぺにチュッ。唇を奪ってしまうと私も止まらなくなりそうだからな。
「な、何よ……そ、そんなことじゃゴマかされないんだからね! こ、このバカース!」
おお……これはありし日のツンデレアレク! 久々に見たなぁ。やっぱかわいいわ。いかんな……私の方も我慢が……
「怒った顔も抜群にかわいいよ。でもせっかく二人きりだったのに寝てしまってごめんね。だってアレクの膝枕があまりにも暖かくて気持ちよかったからさ。王国一の膝枕だよ。」
「そ、そんなこと、い、言っても……」
おお、頬を膨らませてプイっとあっちを向いた。なんてかわいさだ。
「本当だよ。アレクほど素晴らしい膝枕は王国広しといえど存在しないよ。さすがアレク。僕は大好きだなぁ。」
膝枕か……今思えば……前世の私は膝枕で耳かきをしてもらうのが好きだったな……あいつ、私が死んだ後でも元気に暮らしてくれたんだろうか……両親にも不孝をしてしまったが、あいつにも最悪なことをしてしまったよな……今さらか……
「さあアレク。お腹すいたんじゃない? 帰りはこれに乗ってひとっ飛びしない?」
「すいてる……」
「だよね。僕もだよ。さ、帰ろうよ。乗って乗って。」
そう言いつつ手を握り、引き寄せる。何の抵抗もせずミスリルボードへと乗るアレク。ほっ、少しご機嫌がなおったかな?
おっ、そのまま抱きついてきた。柔らかな髪の香りがふわりと……
「カースのバカ! カムイまで巻き込んで、衆目に肌まで晒したのは悪かったけど……私だってカースに一泡吹かせたいって意地があるんだからね!」
「うん。もちろん分かってるよ。アレクがもうしないってことも分かってる。しっかり反省したね?」
「したわ! もうしない! 実力でカースを驚かせることができるぐらいに……頑張るから!」
「分かったよ。じゃあ禁欲は終わりにしようか。どう?」
「ほ、ホントに!? い、いいの!?」
「反省したんだよね? だったらいいよ。今夜はっうっ……」
言うが早いかアレクに唇を奪われて押し倒されてしまった……とことん肉食獣だなぁ……
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