1489話 コーネリアスの意思
カドーデラとの茶飲み話を終えて私は宿に帰ることにした。アレクの身が心配だからな。コーちゃんは酒を飲んでいないためか、まだ帰りたくなさそうだったが私も禁欲するんだしその間ぐらい禁酒してもらおう。
「アレクー。いるー?」
宿に戻り部屋に入る。
「ガウガウ」
おおカムイ。ちょうど風呂から出たところか。待て待て、ここでブルブルするなって。風呂でしてこいよ。『乾燥』
「ガウガウ」
ブラッシングしろって? それはアレクがやる約束だったんじゃないのか?
「ガウガウ」
寝室から出てこないって? ま、まさか体調が!? こうしてはいられない!
「アレク! 大丈夫!?」
「んっ、はぁ……はぁんっ……えっ? か、カース!? だ、だめ! 来ちゃだめ!」
「わ、分かった……行かないよ。でも大丈夫なの? 顔が真っ赤だし、汗だってすごいみたいだけど……」
体はシーツに覆われて見えないけれど、相当汗をかいてるのではないか?
「わ、私何か冷たくて甘いものが飲みたいわ! 作ってくれない!?」
「分かった! ちょっと待っててね!」
前にもこんなことがあったな。今のアレクは魔力が全部回復してないからな。体調を崩してしまったのか……
『氷壁』
氷でシェイカーを作って……
『圧縮』
オラカンの実とレモンの実、それから残り少ない蟠桃を絞って……
『水操』
シェイクする。
『氷球』
部屋にあるタンブラーに丸氷を落として……フルーツカクテルを注ぐ。
うーん、すごく美味しそう。
「お待たせ! できたよ!」
「ありがとう。美味しそうね。」
ほっ。いつものアレクだ。
「さあ飲んで飲んで。」
「いただくわね……はぁ……すごいわ。すごく美味しい。これは……オワダのオラカン、カツラハ村のリモン……そして心まで蕩けるような甘みは蟠桃ね? すごいわカース……私のために貴重な蟠桃を使ってくれるなんて……火照った体に染み入るようよ……」
ほっ。良かった、気に入ってくれて。ごくりごくりと喉を鳴らしてる。
「気分はどう? 体調悪くない?」
「ええ、もう大丈夫よ。すごくすっきりしてるわ。ありがとうカース。」
「それならよかった。心配したよ。あ、そうそうカムイがブラッシングしてくれって。」
「ええ。カムイにはお風呂の後でねって言っておいたの。私の予想より早く出てきたのかしら?」
「どうなんだろうね。でもカムイと仲良くしてくれて嬉しいよ。」
「当然じゃない。コーちゃんもカムイも大事な家族だと思ってるわよ。」
家族か。いいこと言うなあ。この旅が終われば私とアレクは結婚する。名実ともに家族だよなぁ。ふふ、にやけてしまうぜ。
「ピュイピュイ」
あ、コーちゃんどうしたの?
「ピュイピュイ」
え? 明日の参加をやめるって? もちろん構わないけど、どうしたことなの?
「ピュイピュイ」
デメテーラ様に怒られたって? あまり俗世に関わりすぎるなって? うーん……そう言われても俗世で生きてるコーちゃんが俗世に関わって何が悪いんだって話だが。お前は天上から見てるだけなのかも知れないけどさ。まったく……つくづく狭量な神だよ。
まあ、幸運の精霊たるコーちゃんが狙われることを心配してるのかも知れないけどさ。見る奴が見ればただの蛇じゃないって気付くだろうしなぁ……
「ピュイピュイ」
カムイの応援する? うーんコーちゃんは偉いね。一緒に応援しようね。でも応援しなくてもあいつが優勝すると思うんだけどね。
カムイでも勝てそうにない魔物と言えば……
まずはマウントイーターかな。あいつはちょっと反則すぎる。私だって危なかったんだから。
それから……クラーケンだな。デカすぎるし水中戦だとキツいよなあ。いつだったかカムイが倒した巨鳥ルフロックより大きいもんな。
他には……スライムとか? 普通のスライムは厄介だけどカムイなら勝てるだろう。無理そうなのはスティクス湖を覆い尽くした化け物スライムだろうな。
スティクス湖で思い出した。ノヅチだ。いくらカムイでもノヅチには勝てないだろうなぁ。私だって勝てそうにないもん。あいつ元気にしてるのかなぁ……
明日は召喚獣やペットの対戦だが、まさかそんな化け物どもが現れることもあるまい。でもシャルロットお姉ちゃんの召喚獣、猛毒蜘蛛ヤツメファンネルスパイダーのアトレクスって言ったっけ? ああいう小さい奴って地味に手強いんだよな。カムイに毒はそこまで効かないとは思うけどさ。なんせマスタードドラゴンに勝つぐらいだもんな。
まあ何にしても無事に終わって欲しいものだね。
ちなみにブラッシングをしてもらったカムイはコーちゃんと一緒に散歩に出かけてしまった。気分がいいから走り回りたいそうだ。まったく、自由な奴だ。ならば私はアレクと二人っきりの時間をどう過ごすべきか……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます