1481話 魔法のみ部門終了

『ぎゃひぁいぃーー! 何ですかこれは! どうなっているんですかぁぁーー!』


ぶっ壊れた瓦礫がブラックホールに吸い込まれていく。今のところ人間は無事だが……


『魔王選手の仕業ですかぁぁーー! 弁償してもらいますからねぇぇーー!』


ケチケチすんな。払ってやるよ。


「ぐうぅぅっ!? こ、これはっ!?」


なんだ!? ビレイドが二人いる!?

一人は地面にしがみついてるが……もう一人はまるで幽体離脱するかのようにブラックホールへと引き寄せられている!? どうなってんだこれ!?


「お前……ビレイドだよな?」


「う、うるせぇーー!」


あ、体から完全に離れた。これはもうだめだろ。


「くっそぉぉぉぉ! くそがぁぁぁぁーーーー!」


あっ、吸い込まれた。台所のシンクに吸い込まれる最後の排水のように……何だったんだ?


下のビレイドは気を失ってる。そいつまで吸い込まれそうだが……どうしようかな。まあ勘弁してやるか。


『暗黒大穴解除』

『氷壁解除』


はぁ……マジで疲れた。正直甘く見過ぎてたな。魔法のみ部門をさ。まさかここまで魔力を消耗させられるとは……

残り一割ちょいか。明日の何でもあり部門はどうしたものか。節約モードでやるかな。


『えー……何がどうなったのかよく分かりませんが……ビレイド選手が倒れております! もう円は残っておりませんので勝負ありとしましょう! 勝者は魔王選手でーす! よって! 四日目の優勝者は! ローランドのヘタレ殲滅魔王こと! カース・マーティン選手でーす!』


うーん、司会の姉ちゃんがえらく絡んでくるなぁ。既婚者のくせに私と火遊びしようとしてんじゃないぞ?

まあいいや。


『それでは表彰式に移りたいのですが、武舞台とその周辺が使いものになりません! 魔王選手、どうにかしてください!』


無茶言うな。砕けた岩もほとんど吸い込まれてしまったってのにさ……あれだけもの岩がどこに行ったんだろうなぁ……なぜか死汚危神を吸い込んだ時は私の魔力庫に収納されてしまったのに。

あ、いいこと思いついたぞ。


『少し待ってな。』


とりあえずビレイドを隅の方に動かしておこう。後は誰かが医務室に連れて行くだろう。


よぉし。魔力庫から岩をありったけ出して……楽園の城壁に使ったやつが結構残ってるんだよな。いつか百トンメテオとして使うつもりだったから。


水鋸みずのこ


巨大な岩を同じ形になるように切る。

それから地面を均さないとな。


『水斬』


均したら固めて……


『重圧』


さらに……久々登場の二代目ミスリルギロチンを操作して……押し固める。そこらの砂なんかも追加して……均一な平面をつくる。


よし。ここに切った岩を並べて……


全体に『重圧』


まあこんなもんだろ。ヘルデザ砂漠の岩石製武舞台の完成だ。一辺がおよそ二十メイルの正方形。元のやつより高さが足りないし、自家製コンクリも使ってないけど別に構わんだろ。


どうだ?

驚いてもいいんだぞ?

観客は静かだが……


『い、いったい何が起こったのでしょうか……武舞台が元のように……一瞬にして……』


一瞬じゃねーよ。十二、三分ぐらいかかったぞ。残り魔力は一割を切ったか。意外と魔力を食ってしまったな。


『これでいいだろ? 弁償は勘弁してくれよ。』


ここまでやったんだからもう弁償なんぞしないぞ。


『あ、ありがとうございます……

そ、それでは表彰式に移りたいと思います……観客の皆さん! ご起立脱帽をお願いします!』


観客はばらばらに立ち上がり、舞台周辺で見物していた参加者たちは壁際まで下がりビシッと立っている。


『ご領主様、シュナイザー・アラカワ侯爵閣下のご入場です!』


護衛の騎士四人に囲まれた領主が現れ、武舞台に向かって歩いていく。私はどのタイミングで登壇したらいいんだ?


「どうぞお上がりください」


騎士の一人が私を呼ぶ。彼の後ろを歩けばいいか。


「ここでお待ちください」


『お前たち! 本日も豊穣祭を楽しんだか? 儂も大いに楽しんでおるぞ! それにしても大国の魔法使いとはすごいものだな! 儂も知らぬ魔法の数々、興味深いものよな!』


まずは領主の挨拶からか。


『だが本番は明日だ! 明日の勝者こそがテンモカ一の豪傑と讃えられるのはお前たちも知っての通りだ! テンモカの強者どもよ! 他国の者だけに美味しいところを渡すでないぞ! お前たちの奮戦に期待しておる!』


やっぱ一番盛り上がるのは明日か。そうなると明後日のペット部門はおまけの扱いなのか?


『カース・マーティン選手! ご領主様の御前にお進みください!』


挨拶が終わって表彰か。


「魔王カース・マーティンよ。そなたの戦いぶりには驚嘆させられたぞ。本当に驚かされた。明日も参加するのであったな。楽しみにしておるぞ?」


「どうも。」


「さて、本日の優勝おめでとう。これは記念の品だ。」


おお、金メダルじゃないか。純金か?

首にかけられた。どうせならごっついオッさんでなく美女にかけられたかったな。


「ありがとうございます。」


『皆さん! 盛大な拍手をお願いします!』




ちっ、どこが盛大だよ……やる気のない義理の拍手がちらほらと聴こえる程度だ。まあ他国の者が優勝したのは気に入らないだろうしね。仕方ないね。


『ご領主様がご退場されます! 拍手でお見送りください!』


今度は盛大な拍手だよ……くそぅ。

まあいいや。今夜はガンガン飲もう。




まずはアレクを迎えに医務室に行こう。いい子で寝てるかな。ビレイドの事情も気になるな。

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