1480話 魔法のみ部門 決勝戦

さてと。いよいよ決勝だ。まさかあいつがここまで来るとはなぁ……


『大変長らくお待たせいたしました! いよいよ豊穣祭四日目も大詰め! 決勝戦を始めます!

一人目は! テンモカの夜を支配する闇ギルド蔓喰つるばみの! 若き幹部候補! ビレイド・ロファ選手! ここまで運に恵まれたとの見方もありますが! 二級闘士を接戦の末に下した手腕は侮れません!

二人目は! 私の誘いに全く乗ってくれないつまらない男! ヘタレ魔王ことカース・マーティン選手! 決勝戦だけあって賭けの方も盛り上がっておりまーす! 賭け率は! 魔王選手一.一倍! ビレイド選手九.六倍となっております!』


うーん、これじゃあ私に賭けても旨みがないだろうに。


『おおーっと! ここでご領主様よりお知らせが入りました! 賭け率をこのまま固定するのでビレイド選手に賭けたいなら好きにしてよい、とのことです! つまり! ご領主様が賭けを飲んでくださるようです! どれだけビレイド選手に賭けが集中しようとも倍率が下がることはありません! さすがはご領主様! 粋な計らいでーす!』


なるほど。領主としては場の盛り上がりが第一なのか。エンターティナーだね。えらい。

まあ、私が絶対勝つと見込んでるんだろうなぁ……ずるい奴だわ。




『それでは! いよいよ本日最後の戦いを始めます! 双方ともデメテーラ様に恥じぬ戦いをされてください! よろしいですね!? 見合って見合って!』




『始め!』


『散弾』


『水盾』


へー。中々反応いいじゃん。さほど大きくもない水の盾で器用に防ぎやがった。


『降水』


へぇー……ますますやるじゃん。一つの魔法が発動した直後にもう一つ唱えるとは。その時間差一秒以内。これってある意味二つ同時に使うより難しかったりするんだよな。私もできなくはないが、好んでやりたくはない。

さて、こちらの円の外を水浸しにしてどうするつもりだ? もっとも何をしようが待つ気なんかないしね。『火球』

一瞬で蒸発した水盾。おまけに視界も真っ白だろ?『烈風球』嵐を閉じ込めたかのようなこの魔法。触れると破裂するぜ? そして、ぶっ飛べ。


ん? 何だ今のは?

烈風球がすり抜けた……のか? まるでそこに何もないかのように……


よし、確かめよう。


『榴弾』

『徹甲弾』


あいつの魔力では防御不可能な無慈悲な攻撃だが……


やはりすり抜けた!?


『風操』


いる……穴を掘ったとか、飛んで逃げたとかではない。先ほどから動いた気配がない。


「お前……いい魔法持ってんな。個人魔法か?」


正体不明な場合って大抵は個人魔法なんだよな。


「ああ、そうだよ。好きなだけ撃ってごらん? 効かないから」


あれ? 口調がえらく違うじゃないか。まさかそっくりさんの別人ってこともあるまいが……


『業火球』


あっ……やべっ。


『魔王選手! それはいけません! 武舞台が消し飛んでしまいました! 弁償ですからね! それよりもビレイド選手は大丈夫なのでしょうか!?』


『看破』


遠見と同じように目に魔力を込める魔法だが便宜上、名前を変えておいた。幻術を見破る用にな。

だが……幻術では……ないだと?

しかもあいつからはきちんと魔力を感じる。幻術とか偽物ではないってことか。


『突然ですが武舞台がなくなったためルールを変更いたします! その場を一歩でも動いた方の負けです! それでは試合再開です!』


「さあさあどうした? もう終わりかい? もっとガンガン撃ってきなよぉ?」


「お前が撃ってこいよ。」


「ふふ、僕としては長引いた方が有利なもんでね。こうしてのんびり待ってるのさ」


「いいだろう。」


『水壁』


奴がいるところを全て水壁で閉じ込めてやった。これでものんびりしてられるかな?


『落雷』


ただの嫌がらせだ。顔色に変化はない。むしろふてぶてしく腕を組んでにやにやしてやがる。水中なのに余裕かましすぎだろ。


よし、何もしてこないってんなら……少し考察タイムだ。あいつは今どんな状態なのか。

単純に考えれば幽霊か何かのように身体が透明になったようなものだろうか。だが実際のゴースト系の魔物なら『魔力放出』これだけで終わりだが……


当然あいつは無傷か。

見た目が透明なのではなく、見た目に変化がないまま体だけ透明になっているとすれば……

私の魔法で効きそうなのは……


ある……

あるじゃん。


『警告しとくぞ! 観客も選手も何か丈夫な物に掴まれ! 隣近所でしっかり支え合えよ! 警告したからな!』


『ま、魔王選手!? 一体何を!?』


「へえ。面白そうだね。ぜひ見せておくれよ?」


言われなくても見せてやるさ……


『水壁解除』


そして私の下半身には『氷壁』


これで準備オッケー。


いくぜ!


奴の真上に底の見えない暗黒の球が出現する。くくく……何もかも吸い込んでやるぞ?


暗黒大穴ブラックホール


これが効かなかったら残り魔力がヤバいことになるけど……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る