1479話 カース VS 元 赤兜
『大変長らくお待たせしました! いよいよ魔法のみ部門準決勝第一試合を始めます!
一人目は…………』
終わった。
なんとまあ……あいつここまで勝ち残ってたとは。予選と服装が違うから分からなかったよ。三角帽子に黒ローブ、そして長い杖なんて奴は一人もいないと思っていたのに。見た目だけは正統派魔法使いが決勝進出を決めやがったか……
よし。さほど待つこともなかったが私の出番だ。やはりあいつが勝ち上がってきたか……反則だろ……
『準決勝第二試合を始めます!
一人目は! もはや敵なしか!? 顔は普通のくせにやけにいい声! 殲滅の魔王こと! カース・マーティン選手!
二人目は! 今さらだが参加してもいいのか!? 元カゲキョー赤兜騎士団一番隊第五分隊長マカ・ツボノチ選手! 全身をムラサキメタリックで固めた無敵の装備だぁぁーー! 唯一狙えるのは籠手に覆われてない左手のみ! 全く魔法が効かないムラサキメタリックの鎧を相手に魔王選手はどう戦うのかぁー!』
マカ・ツボノチ……何となく覚えてるな。カゲキョー迷宮の地下三十階ぐらいで一緒になった奴だっけ?
「魔王よ。久しいな」
「おお。元気そうだな。」
顔色なんか見えないけどさ。
「お前の忠告に従って生きているぞ。存外良いものだな」
私の忠告? 何だったっけ……
「だから参加してんのか?」
「そうだ。お前は言ったな。『外に出たら自由に生きるといい。もうお前達を縛るものはない』と。今は五番隊も解散し、一人でヒイズル中をあちこち歩いている最中だ」
あー、そんなこと言った気がするな。騎士から浪人になった感じか? 流浪の騎士? かっこいいじゃないか。なのに私以上に反則の装備で参加するなんて。振り切ってやがんなぁ。
どうしよ……
『それでは賭けを締め切ります! 準決勝第二試合を始めます! 用意はいいですね!? 見合って見合って!』
『始め!』
ぶっ飛べ!『徹甲紫弾』
「ふんはあっ!」
うっそ!? はぁ!? あれを防いだ……だと!? そんなバカな……
なんだあのバカみたいな分厚い盾は……あれを換装で取り出しやがったのか!?
だが!
『紫弾』
もう盾はぶっ壊れた! 次はその鎧に穴をぶち空けてやるよ!
「効かぬぅ!」
バカかこいつ! 腹に穴が空いてんだぞ? 痩せ我慢してんじゃねぇよ! だが、穴さえ穿てば……
『狙撃』
「効かん!」
ちっ、さすがに穴狙いはバレバレか。あっさり防御された。さすがに鉄のライフル弾じゃムラサキメタリックには歯が立たないな。だが、姿勢は崩した! そんなふらふらな状態で次が防げるか!?
『徹甲五十連弾』
「ぐうぅぅあぁぁーー……」
よし。闘技場の端までぶっ飛ばしてやった。むしろ壁にめり込んでるな。
『勝負あり! 無敵のムラサキメタリックの盾も鎧も! 魔王選手の手にかかればあっさりと砕けてしまったぁぁーー! 魔王選手の勝利です!』
めちゃくちゃ疲れた……徹甲紫弾は半端なく魔力を食うんだよ……
全然あっさりじゃないんだよ。大変だったんだぞ? こんな会場じゃなければここら一帯を水没させるって方法もあったんだけどなぁ。
一回戦でめっちゃ減ったのに。残り半分か……無駄遣いしすぎた……ふぅ。
だが、決勝では楽ができそうだし。もう少し頑張るとしよう。あー疲れた……
『決勝戦は三十分後です! 皆さん! しっかり賭けてくださいね!』
三十分か……よし。徹甲紫弾を拾ってからアレクのところに行こう。アレクの寝顔を見ながら疲れを癒すんだ。
うん。よく寝てる。あ、さっきの赤兜が運ばれてきたか。腹に穴が一つ、そして全身打撲ってとこかな?
「なんじゃあこの鎧は! どうやって脱がせと言うんじゃあ!」
治癒魔法使いのジジイが困ってるな。
「くうっ! 全く魔力が通らん! なんじゃこれは!」
腹にムラサキメタリックの弾が入ってるから摘出もしないといけないよな。紫弾は貴重だからな。加工するのが相当大変なんだからきっちり回収するぞ?
仕方ない。手伝ってやるか。
「助けはいるか?」
「鎧を脱がせろ! こんなもん着られちゃあどうにもならんわい!」
この鎧の外し方はオワダで少しだけ見たんだよな。こいつらは換装で気軽に着脱してやがるけどさ。まったく、面倒な鎧だな。見殺しにしてやろうか?
よし、兜が外れた。次は……脚……
くっそ面倒だなぁ……
ようやく全ての鎧を脱がせてやったぞ。
『金操』
腹に入ってた紫弾も回収っと。この程度でもどっさりと魔力を消費してしまうんだよなぁ……ほんっとムラサキメタリックってタチの悪い金属だわ。
さて、もういいだろう。後はジジイに任せよう。
「なかなかやるではないか。このムラサキメタリックの鎧の着脱方法を知っておるとはの。ただの魔力バカではなかったか」
「魔力がでかいだけで戦いに勝てれば苦労しないさ。」
実際は私の勝ち方ってほぼ魔力のごり押しなんだけどね。ちょっと見栄はっちゃった。
さあ、今度こそアレクの寝顔を見ながらのんびりと……「そろそろ始まるぞ?」
くっ、ジジイ……
「もう三十分経ったってのか?」
「子供じゃあるまいし! 五分前には行って待機しておかんか!」
うるせぇなぁ……
行くけどさ……
じゃあコーちゃんにカムイ。もうすぐ終わるからね。終わったら美味しいものを食べに行こうぜ!
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます