1471話 三回戦第四試合

『三回戦第四試合を始めます! 一人目は魔法も使える二級闘士メドラウト・ホンダ選手! 二日目は惜しくも四回戦負け! 今日は雪辱に燃えております!

二人目は! ローランドの女神こと! アレクサンドリーネ・ド・アレクサンドル選手! 一回戦二回戦とも力尽くで勝っている印象が強いですが先ほどは結局放送席に来てくれませんでしたね! ひどい!』


あーそういえば試合後に解説しに来てくれって言ってたな。この大会って司会はいるけど実況とか解説っていないのか? 観客的には解説がいた方が楽しく見物できそうなもんだが。それに対戦の際の音声だって客には聴こえてないよな。それでは面白くないだろうに。うちのおじいちゃんみたいな魔法は使える奴がいないにしても、魔道具でどうにでもなるだろうになあ。サービス精神が足りないな。


「あんた信じらんねーほどきれーな顔してんな。まじで女神なんか?」


「さあ?」


「あんたよりきれーな女はローランドにいるんか?」


「いるに決まってるわ。例えばカースのお母上なんかただ美しいだけじゃなくて気品や艶まで兼ね備えた最高の女性よ?」


おお、アレクったら母上のことをそんな風に思ってたのか。嬉しいなぁもう。


「その息子があんな普通のツラとはどういうことだ?」


うるせぇな……


「カースはあの顔だからいいのよ。カースの魅力が分からないなんてセンスないわね。」


「まあいいや。俺が勝ったら一晩付き合えや。」


「別にいいけど私に指一本でも触れたらカースに殺されるわよ?」


その前に私が殺すけどねって顔してる……


「あんたほどの女と一晩付き合えたら死んでも構やしねーぜ!」


「そう。それは残念だったわね。その話、勝ってから言った方がいいわよ?」


「へっ、当たり前だろ。」


『さあ! 賭けを締め切ります! それでは始めますよ! 見合って見合って!』




『始め!』


『氷弾』

『氷連弾』

『氷散弾』


おお、アレクの先制攻撃!

だが……あの野郎……いい物持ってやがるな。カイトシールドってやつか。盾の性能だけに頼りきってない。見事な取り回しだ。あの重い盾をよくもまあ……


『氷連弾』

『氷散弾』

『氷塊弾』


でもアレクは少しも気にせず撃ちまくってる。アレクも私に似てよくごり押しするんだもんなぁ。

へぇ……あの氷塊弾を受けても姿勢を保ってやがる。二級闘士ってのは伊達じゃないな。


『氷塊連弾』


うっわ! これはえげつない……

体勢をキープさせないほどの連弾かよ。しかも一発一発が重いんだよなぁ……よく耐えてんなぁ。

どうやら相手は魔力を温存してアレクに消耗させる作戦のようだが……

あれ? これって魔法のみ部門のはずだが、防御に盾を使うのはアリなのか? まあこいつがここまで勝ち上がってきたってことはアリなんだろうけどさ。うーん、よく分からんな。ならば私の紫弾もオッケーなのか? 確認する気はないけど。バレなきゃいいだけだもんな。


『うおーっと! 開幕から猛攻が止まらない女神選手! メドラウト選手は防戦一方です!』


『降り注ぐ氷塊』


おおー! アレクの上級魔法! さっきはあれだけ詠唱にこだわってたくせに。今度はあっさりと出しちゃうんだから。まあその分だけ数も少ないし塊も小さいけどさ。

真上から降り注ぐ氷の塊に、カイトシールドを真上に掲げて防御したメドラウト。恐るべき足腰だな。よく耐えたもんだ。だが……


火球ひのたま


正面からのアレクの火球を受け止めた時、当然のように盾にはヒビが入った。あれだけの衝撃を受け続けた上にかなりの冷えきっているはずだ。そこに高熱をぶち当てられては無理もない。かなりいい盾のようだったが残念だね。


『氷塊弾』


うわぁ……容赦ないな。身の丈以上の氷塊を高速で撃ち出して……おおー。ついに盾が砕けたか……


雷矢らいや


なっ!? あの野郎……盾が砕けた瞬間に魔法を撃ちやがった!? なるほどな……ここまで全てがこの瞬間のためだったってことか。やるなぁ……


しかし……


「危なかったわ。油断してたわけじゃないけど、大きい魔法の後はどうしても隙ができるものね。」


「効いてないのかよ……」


「魔法の選択ミスね。最速の魔法ってことでそれを使ったようだけど。戦いの前に『避雷』を使っておくのはローランドでは常識よ?」


おまけに狙いも甘い。顔から上を狙えばいいものを、当たりやすい胴体を狙ったために避雷がなくともアレクは無傷だったことだろう。


「参った。この瞬間に賭けてたんだけどな。あんたすげぇな。で、俺はどうしたらいい? 勝ったら一晩付き合えって言ったんだ。負けました、で済むとは思っちゃいねーよ。」


「なら円から出なさい。話はそれからね。」


「へいへい。分かってるって。」


へー。素直に円から出たじゃないか。てっきり罠かと思ったら。本当に起死回生の一発狙いに賭けてたのか。無理もない。格上のアレクに勝つには有効な手段だもんな。他の方法がそんなにたくさんあるとは思えないし。


『結ちゃーく! メドラウト選手! 万策尽きたのか自ら円の外へ出てしまいました! 女神選手の勝利でーす! 結局最後までごり押ししてしまったぁーー!しかも大した疲労の色も見えません! もしかして魔王選手より強いのでは!? はっ! そういえば! ローランド王国では女性の方が男性より魔力が高いと聞いたことがあります! これは二人の対戦が楽しみになってきましたよぉぉーー!』


へー。意外によく知ってんだな。ただしそれは平均の話だからな? 全ての女性が野郎より魔力が高いってわけではない。

ついでに言えばアレクはかなり疲労している。あれだけ魔法を連発した上に溜めなしで上級魔法までぶちかましたんだからな。


そろそろアレクとの対戦が見えてきたな……

嫌だなぁ……

棄権しようかなぁ……

でもそんなことしたらアレクに嫌われるしなぁ……

手加減しても嫌われるし……


どうしよう……

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