1462話 二日目と三日目の優勝者
それから少しばかり飲んで領主は先に帰った。私達もしばらく飲んでから宿へと帰った。それにしても領主がローランド人の救出に協力してくれるとは思わぬ収穫だったな。自分とこにも買った奴隷が何人もいるんだろうにな。
なお、七日目の表彰式が終わった後は領主邸で舞踏会が開かれるらしい。そこにも誘われてしまった。久しくあのような場でアレクと踊ってないから快諾した。ヒイズルの民にローランド仕込みのステップを見せてやるぜ。
宿に帰ってからは今まで我慢していたとばかりに酔ったアレクに襲われた。うん、いつも通りだね。
二日目は刃物なしの武器部門。優勝者の武器は見たこともないものだった。
決勝の相手は棍使いだった。間合いの不利をものともせず、棍を叩き折って勝負を決めた。やるなぁ。
三日目は刃物ありの武器部門。優勝者の武器は剣。しかもムラサキメタリックだった。つーかあいつってカドーデラじゃん。よく決勝の相手、赤兜に勝てたよな。赤兜の奴、最初から全身ムラサキメタリックで参加してやがったし。カドーデラの防御なんてムラサキメタリックの剣からすれば紙も同然だってのに。やるよなぁ。
表彰式も終わったし、声ぐらいかけてやるかな。
おっ、いたいた。
「ようカドーデラ。元気そうじゃないか。」
「ああこいつぁ魔王さん。あん時ぁお世話になりやした。おかげさんで無事に生きておりやす。」
「それにしても優勝するとはな。腕を上げたんじゃないか? さすがは人斬りカドーデラだな。」
「てめっ魔王! カドーデラさんにでけぇ口ぃきいてんじゃねぇぞ!」
体も大きくごっついゴッゾが、カドーデラの前では小さくなっている。あ、カドーデラに頭を小突かれた。
「お前こそ魔王さんに大口を叩くんじゃない。すいやせん魔王さん。こいつぁアタシの舎弟だったんですが、どうも向こうっ気ばかり強くていけねぇんで。」
「そりゃねぇよカドーデラさぁん……」
傍若無人なゴッゾが借りてきた猫のようだ。これは面白いな。
「それより魔王さん。一杯いかがで? ゴッゾの奢りといきやせんか?」
「ピュイピュイ」
「おお、コーの兄貴。行きやすかい? ようがすか魔王さん?」
「ああ、行こうか。」
そういやカドーデラってコーちゃんとカムイの舎弟だったな。ならゴッゾなんてめっちゃ下っ端じゃん。パン買ってこいってんだ。
酒を飲みながら話を聞いてみると、今回カドーデラが豊穣祭に参加した理由は私のせいもあるらしい。
ヤチロを出る前にカドーデラにおっかぶせた支払いが五千万ナラーほど。それをどうにか払うことは払ったのだが、そのせいで蔓喰の台所がピンチだと。やむを得ず豊穣祭の賭けを利用してあぶく銭を稼ごうとしたわけか。ちなみにすでに三千万ほどは稼いだが、当然まだ足りない。明日私が出場することを伝えたら大喜びで全試合私に賭けると言い出した。さすがに負ける気はないが、アレクだって自分の出番以外は私に賭けるだろうしな。倍率は期待しない方がいいな。
「それでさぁカドーデラさぁん、俺もさぁ、またさぁ、新しい店ぇ開いたんだぜぇ?」
うーん気持ち悪い。ゴッゾがくねくねとカドーデラに甘えている。
「ほぉ。頑張ってるじゃないか。でもな? 知ってるんだぜ。お前がその店を持てたのは魔王さんのおかげだろぉ? 感謝の気持ちを忘れちゃあいけねぇぜ?」
「わ、分かってるさぁ! 俺だって魔王にゃあ感謝してるしさぁ! あいつのおかげでビレイドにゃあ吠え面かかせてやれたしさぁ!」
「すいやせんね魔王さん。もうご存知たぁ思いやすが、こいつバカですから。さぞかしご面倒をおかけしたことと思いやす。」
「まあ、楽しませてもらってるさ。」
ゴッゾはゴッゾで役に立ってなくはないしね。シムの面倒も見てるようだし。最近は外道な遊びもしてないと思うが。あ、そうだ。
「なあカドーデラさあ。ゴッゾなんだけどな。遊び方が酷いんだよな。どうにかならんもんか?」
「そいつぁどういうこってす? 遊び方ってのは?」
「ち、ちち、違う! 違うんだよカドーデラさぁん! もうそんな遊び方なんかしてないさぁ! もう真っ当にしか遊んでないから! 本当だって! 信じてくれよぉ!」
「ゴッゾぁこう言ってやすが……どうなんで?」
今のは本当っぽかったな。それならそれでいいや。だいたい人がどんな遊び方しようが口出しすんなって話だけどね。
「はは、それならそれでいいさ。ゴッゾも真人間になってきてんのかねぇ?」
いやーそれにしても酒が進むな。私の交友関係はどうなってんだ? 闇ギルドばっかりじゃないか。
コーちゃんはカドーデラの舎弟三人に酌をさせてるし、カムイはゴッゾの舎弟にブラッシングをさせている。こんな所でやるなよ……そしてそのブラシは舎弟のか? よく持ってたな……
アレクはシムと話しているようだ。やはり気にかけているんだな。アレクは偉い。
そして明日は魔法のみ部門か……アレクも出るんだよな。嫌だなぁ……対戦したくないなぁ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます