1457話 豊穣祭三回戦、ガオルンVSゴッゾ
またもやゴッゾは勝った。一回戦よりは多少殴られたようだが、それでもたった一撃で決めやがった。生意気な……
『さあ! 二回戦も終了しましたね! 今からお昼休憩でーす! なお、お昼の間には誰が優勝するかを賭けることもできます! 三回戦が始まったらもう買えませんからご注意くださいね!
それから! うすうすお気付きの方もいたかも知れませんが! 素手部門の参加者は九十三人! 一回戦は四十六試合! 二回戦は二十三試合行いました! つまり! 一回戦と二回戦を戦ってない選手が一人存在するのです! ご紹介いたします! テンモカを含むヒイズル南西部をご支配遊ばされている大領主! シュナイザー・アラカワ侯爵閣下です!』
場内の音ががぴたりと止む。私の時と違って敬意を感じるぞ。ムカつくな。
そして放送席から飛び出して、会場の中心に着地した。そりゃあ貴族なら浮身ぐらい使えるよな。
領主が右手を挙げて観客に手を振ると会場が一斉に沸きたった。やるなぁ。だが消音を使うほどではない。ドラゴンで登場して会場を興奮の渦に巻き込んだ先王グレンウッドほどではないんだからな?
そんな領主が手を下げると、観客もたちまち静まった。
『お前達! 待たせたな! 儂が登場しないことでさぞかし気を揉んだのではないか? 今回は参加人数の都合でな。まあ許せ。それにしても今回は近年稀に見る愉快な豊穣祭になりそうではないか。二人の一級闘士ガオルンとソネラプラ。蔓喰からは剛拳ゴッゾに正体を隠した赤兜。そして隣国からは小さな魔王だ!』
なんでそこで失笑が起きるんだよ? 確かに私は領主に比べたら小さい方だがお前らの大半より背は高いからな? こいつら絶対後で覚えておけよ? めちゃくちゃ盛り下がる祭りにしてやるからな?
『できれば全員と対戦したいところだが、デメテーラ様へ捧げる戦いとあってはそうもいかぬ。誰かは分からぬが戦えることを楽しみにしておるぞ! お前達も存分に賭けるがよい! そして豊穣祭を心より楽しみ! また来年の豊穣を祈願するのだ! 良き祭りにしようではないか!』
またもや歓声が起きる。最初より大きいな。うるさいなぁ。
「おう魔王ぉメシぃ行くぜ!」
「おお、どこに行くんだ?」
この闘技場は控え室があまり広くないらしく今回の参加者には開放されてない。だからアレクと待ち合わせがしにくい。よって昼は別々に適当に食べようということになっている。きっとアレクにはナンパ野郎が群がってるんだろうけどさ。くっ……
「そんなもんそこらの屋台に決まってんだろぉ? 昼ぁ屋台で食うのが粋ってもんだぜぇ?」
「へー。悪くないな。適当にお任せで案内してくれよ。」
ふう。腹いっぱい。
味は普通の屋台の串焼きや魚の塩焼きだったが、ゴッゾがいるせいで行列に並ばなくて済んだのはラッキーだったな。こいつったら傍若無人にも列も何も関係ないとばかりに横から「串ぃ五本よこせやぁ」とか「焼きたての旨いやつを三本持ってこい」なんて具合に食べ歩くんだから。
「それよりさ、領主は素手でも強いのか?」
ローランドの国王は素手でも剣でも強いけどな。
「強えに決まってんだろ? 俺ぁ去年準決勝でご領主様に負けたんだからよ?」
「へえ、そりゃあ凄いな。てことは去年はお前って一級闘士にも勝ったってことか?」
「いいや、去年は一級闘士ぁいなかったぜ? あの二人は今年一級に昇格したのさぁ。あいつらも強ぇぜ? まっ、どうせ俺ほどじゃねぇがよ?」
本当かぁ? その言い方だと戦ってないんだろ?
それにあの二人が強いことぐらい分かってるさ。二級ですらまともにやったら勝てないんだからさ。
そうか、領主は素手でゴッゾより強いのか……
『お待たせしましたぁー! それでは豊穣祭初日! 素手部門の三回戦を始めまぁーす! 第一試合、一人目は! テンモカの夜を支配する闇ギルド
対する二人目は! 一級闘士ガオルン! 五級闘士としてデビューしてから苦節十年! 昇格したり落ちたりしながらも! とうとう一級にまで上り詰めたその実力は本物! 磨き上げた腕前で優勝を狙っているぞぉー!』
ガオルンか。ゴッゾより細い上に歳上、四十前じゃないか? それでも素手にこだわってとうとう一級か。がんばるなぁ。
『見合って見合って!』
『始め!』
開始と同時に詰め寄るゴッゾ。当然のように防御などする気もなく、殴りかかっている。それをガオルンは巧みに捌いている。あれは肘か……肘を上手く使ってゴッゾの打撃を逸らしているのか?
防御が固いな……よく見ればガオルンはほぼ無傷だ。つまりここまで勝ち上がるのにあまりダメージをくらってないってことか。
昼前に私も治療してもらおうとしたら勝者は不可ときたもんだ。どんだけ事前の説明しない気なんだこの祭りは? 手持ちのポーションを飲んだからいいけどさ。
「おらぁ! くらえやぁ!」
膠着していてもゴッゾはひたすら殴り続けている。うーん、スタミナの無駄遣いにしか見えないが……
足を止めて殴り続けるゴッゾ。
そんなゴッゾに向けて半身に構え、突き出した右肘で攻撃を逸らし続けるガオルン。
まずい流れだな……
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